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第104話 不安と期待


 2週間ほど遅れて届いたアナからの手紙を受け取り急遽ルエリアへ戻る事になった私達はギルドへ向かう。

 急だけどせめて挨拶はしておくべきだし、それに相当お世話になった。ルエリアのギルドの手紙があったとはいえ、見ず知らずの私達を迎え入れてくれた。

 

 花園の前ではユリカがギルド前の小さな花壇の世話をしている。


「ユリカ!」

「あ!スイレンのお姉ちゃん達!」

「急ぎの用なんだけど、マスターいる?」

「マスターは居ないけど、リリィさんなら居るよー!」


 リリィはマスタージャスミンが居ない時のマスター代理だから、彼女に伝えればいいだろう。

 ユリカに軽く別れの挨拶をするとなんだか少し寂しそうな表情をしていた。だけどそれを伝えることはせず、強がって我慢する子供のようなしかめっ面を見せる。

 寂しいと思ってくれているのは同時にとっても嬉しいモノね。


 ギルドの中へ入ってリリィを探す。

 カフェスペースの中、白く美しい髪を持つ女性が存在感を露わにしている。

 ギルドマスター代理だから忙しいのかと思ったんだけど、件の女性は優雅に紅茶を嗜んでいた。


「リリィさん!!」

「チームスイレンの皆さん、今日も依頼をこなすんですか?」

「いえ!ルエリアに戻るので最後の挨拶をしに来ました」

「そうですか今日も頑張っ……………………え?今なんて?」


 先ほどまで優雅に紅茶を嗜んでいたリリィは焦った顔をしている。

 突然別れの挨拶なんてされたら驚くのは仕方ないけど完全に会えなくなるわけじゃない。

 私達はルエリアの学校に戻るだけだから、また卒業後くらいには顔を出せるだろう。

 だから今生の別れでもないので大人であるリリィなさ分かってくれると思ったんだけど、ユリカ以上に面食らっているようだ。

 

「どうしたのリリィさん?」

「……ルエリアへ帰るんですか!?」

「学校が始まるので今朝、ルミナがギルドに届いた手紙を渡しに来て、それが2週間前くらいの奴だったので」

「そういえばルミナちゃんがギルドへ来たからついでにと思って手紙を渡したような……ん?2週間前?」

「どうしたんですか?」

「あの手紙は二週間前に書かれた物なんですか?ルエリアとの距離を考えても3日程で届くはずですが……」

「それは私達も思いました」

「奇妙な声は鳴き止んだのですぐに届いてもおかしくないのに……」

「リリィさんは何か知りませんか?」


 ショナのそんな問いに口元へ持ってきた紅茶をテーブルに置く。

 先程までの焦った表情を隠してリリィは真剣な話をする。まだ朝から感じている嫌な予感は拭いきれていない。

 何事も無ければいいんだけど……。


「実はルエリア王国の状況はあまり良くないという噂を耳にしています」

「ルエリアが……?」

「ええ、ちょうど2週間前。ルエリアではどこかの貴族の娘さんが反乱を起こしたとか。その貴族の街は大パニックに陥っていると……そしてそれを引き起こす元凶が……」

「まさか魔王教団ですか?」


 ショナのその問いにリリィは頷いた。

 最近……というか学校が襲われてからというもの、魔王教団の名前ばかり聞く。

 レオの事は調べる事ができなかったけど、何かしらの研究をしていて、それが人に魔法と剣を使えるようにするものみたいなのは分かっている。


 それを私達は目の当たりにした。リゼルがそんな薬を服用していたからおそらく魔王教団の手のモノだろう。


「そうね。

 今はマスターも不在だし、このギルドで一番強いエキナさんも居ない……だからあなた達が居なくなるのは少し不安なのよね」

「そんなに私達の事を買ってくれていたんですね」

「当たり前でしょ、あなた達は最初の頃とは見違えるほどに強いチームになったわ。

 今やこの花園に必要な仲間よ」

「えへへ……それほどでも」


 おそらく社交辞令だろうけど……。そんなことも知らずショナは褒められてとっても嬉しそうなので言わないでおく。

 

「だからこそ、出て行くと聞いて驚いたの」

「な、なるほど……でもさすがに学校が始まるので……」

「そうね……引き留めるのも申し訳ないわ」


 ここまで高く評価されると帰りにくい……。

 だけどアナのこともあるからできれば早く戻りたい。

 ここは心を鬼にしないと!!

 

「それじゃあ、ここまでのお礼をしなきゃね」

「何かくれるんですか?」

「ええ、正式な所で言おうと思っていたんだけど、スイレンの冒険者4人はB級に昇進とします」

「えぇ!?いいんですか!?」

「それ以上に実力はあると思います。

 それにB級ならルエリアでも多少依頼を受けられるでしょ?」


 私達がハーベスト帝国へ来た理由の1つは依頼を受けるため。まだ実力のない冒険者だった私達は依頼を受けさせてもらえなかった。

 でもこれで多少大変な依頼でも認めてくれるはずだ。

 それにこんな短期間に実績を残せたとなるとフーリアも相当嬉しいはず。案の定、いつも通りの無表情を決めているが内心喜んでいるのが分かる。

 こういう所は昔と変わらないかなこの子。

 

「あ、そういえば……ルエリアのどこで騒ぎが起こってるんですか?」

「えぇっと確か……バレンタイン領だったかしら。

 そこの娘さんが街を……あら?そういえばルークさんの家名って、偶然?」


 バレンタイン領……その言葉を聞いて私はどんな顔をしていたのか……。多分相当不安にしていると思われたんだろう。

 実際にそうだ……。まさか私の実家?娘は私だけど、血のつながっていない姉妹が2人居る。

 

 その内のどちらかが街をパニックに陥れた……!?


「後、その隣の街……ホワイト領も被害を受けているみたい」


 それを聞いたフーリアは驚いていた。

 

 私だけじゃなくてフーリアの実家まで!?


 どうして立て続けにそんなことが……!!やっぱり嫌な予感と言うのはただしかったみたい。


 これが女の勘と言う奴なのかな?できれば外れて欲しかった……。

 まさかよりによって私達の実家で何か起きているなんて!!


「どうやら学校どころじゃないみたいだね……」

 


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