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第103話 不穏な朝


 ショナから過去の話を聞いた日から2週間ほどが経った。

 今日もまたなんてことない平穏な朝を迎える。


「今日もギルドかぁ~」


 最近同じことの繰り返して少し退屈している。あれからエキナが帝都へ向かってまだ帰ってこないので適当に依頼をこなしながら過ごしていた。

 ショナの話を聞いた後でも私達は今まで通り……いやむしろそれ以上に連携を強めたと思ってる。

 それはやっぱりショナの事を理解できるようになったからじゃないかな。

 

 人の死について敏感なショナの戦い方は圧倒的な速度で移動して、仲間を()()事を真の目的にしているみたい。思い返してみればそういうことは多かった。

 フーリアが突っ込んでそれをいち早く助けに行っていた。

 それだとショナの負担が大きいし終始フーリアも危険だ。だから戦い方を変える事にした。

 初手はフーリアに突撃させるんじゃなくて、ショナが様子を見る。

 

 それだけで私達のパーティはより安定するように戦えるようになる、と言っても狂暴な害獣を相手にしかしていないので、基準はそこまでだけど。

 フーリアは毎度最初に突っ込んで行くのを辞めさせることなんだけど、それは意外にもあっさり分かってくれたんだよね。

 ショナの話を聞いてさすがに何も想わずにはいられないだろう。

 

 私の意見なんて聞いてくれないと思ったんだけど、少しは昔のように戻れたかな。

 

「ルークはもう少し、フーリアの事を分かってあげてね」


 そういえば何の変哲もない日常だけど、少しだけ変化があった。

 それはショナが前よりもさらに積極的に近づいてくるようになったこと。

 今日も何故か私の起きたタイミングで部屋に入ってくる。

 

「あ……ショナ、おはよう!」

「ん、おはよー!」


 ショナが朝早くに私の部屋に入ってきて挨拶してくるようになったのは距離が近づいた証拠じゃないかな?嬉しい反面少し照れくさいようなムズムズする感覚を覚えてしまう。

 秘密を話した事で心を許してくれたのかな?

 今までも十分距離は近かったんだけど、さらに縮まったのは感じている。


「今日もギルドいくよー!!」

「うん、ショナは元気だね」

「当然っ!」


 辛い事があったのにも関わらず、カンナから言われたことをずっと守り続けているのには素直に尊敬する。


 さて、じゃあいつも通り起きてルミナと一緒に部屋を出る――。

 しかし、部屋にルミナが居ない事に気づく、気配を探ると部屋のすぐ外にいるっぽい。私はショナを通り過ぎて部屋の扉を開ける。

 

 するとルミナが私に飛びついてきた。


「ワンワンッ!」


 なんで部屋の外に居たのか知らないけど、いつも通り元気そうだ……。この子はたまに犬みたいな鳴き声を上げるんだけど、その時はもう凄いハイテンションなんだ。


「たまにその子、犬みたいな鳴き声するよね」

「狐はイヌ科だからね」

「イヌ……?狐でしょ?」

「あーそういう……ん?」


 ショナに説明しようと思ったんだけど、ルミナが何かの紙を咥えていた。

 

 よく見てみると手紙みたい……?

 

 宛名を読んでみるとそこにはアナの名前が書いてあった。

 それを見たショナは首を傾げる。

 

「あれ?住所教えてないよね?」

「学校再開の手紙かな?確かギルドへ直接手紙が来るんだよね?どうしてルミナが……」


 ルミナの足は少しだけ汚れている。外へ行っていた……?

 まさかギルドまで……?

 よく見てみるとルミナは元気にはしゃいでいるんじゃなくて焦った様子が見られる。何かあった……?

 同じことの繰り返しで退屈だとは言ったけど、アナが危険な目に合うのは嫌なんだけど……。

 恐る恐る手紙を広げて内容を読んでみる。

 それにしてもハーベスト帝国へ来てからというもの、アナからの手紙はこれが初めてだ。


【お嬢様!いくら手紙の返しが面倒くさいからと言って、2週間も無視をしないでください!!】


「2週間……?手紙はこれが初だと思うんだけど……」

 

 ちょうどレオを倒して怪しい森の安全を確保した頃。

 その頃になると馬車はいつも通り運行していたからもう少し早く届いてもおかしくないはず。


【まあいいです。これは反応がないお嬢様へ向けて何通も送っています】


 ……だんだんおかしなことになってきた、不穏な空気が手紙を読んでいる私とショナの間に漂う。


【学校がそろそろ始まります。そろそろ帰ってきてください】


 もうそんなに経ったっけ?夏休み明けに校長先生が暗殺されて、休校になって約2ヶ月くらい。ようやく学校が始まるみたい。

 それくらいなら急ぐものでも無いはず。


 手紙はまだ続いている。


【後、これは私の予想なのですが……最近、奥様の様子がおかしく、嫌な予感がします】


 やっぱり私が勝手に外国へ行ったことを怒ってるみたいね。こうなってくるとアナが心配になる。

 そんな手紙を隣で呼んでいたショナの表情は苦虫を嚙み潰したようなモノだった。

 

「うげっ!あのおばさんが?アナさん大丈夫かな?」

「それを確かめたいんだけど……」

「それもそうだね。学校も始まるならそろそろルエリアへ戻らないと!!」


 ショナはルエリアへ戻ることに賛成してくれる。

 故郷のハーベスト帝国が恋しくなって離れたくない……とはならないのかな?

 これでも一応仲間の精神面の心配はしているつもりだ。

 しかしせっかくの行為を無下にする必要はないよね。


「あとはフーリアとショナだけど」


 そんな話をしていると半開きになった扉が全部開く、そこには話を聞いていたフーリアとユウリが立っていた。

 

「ようやく学校が始まるのねいいわよ」

「私はハーベストにずっと居ると親に顔を出せって言われるから早くルエリアへ戻りたい!」


 フーリアとユウリが突然部屋に入ってくる。

 どうやら降りてくるのが遅くて向こうから来てしまったみたい。


「……出来れば早く戻りたいんだけど」

「今日中でもいいよー!」

「大変なスケジュールになっちゃうけど?」

「アナさんが危ないかもしれないんでしょ?気にしないで!」


 どうやら余計な気遣いだったみたい。

 私達は1度ギルドへ顔を出してからルエリアへ戻ることになった。


 しかし、少し気になることがある……それはルミナの焦り具合。

 この子は文字なんて読めないはず、じゃあ1体どうやって危険を予知したの……?

 

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