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Exp.53『力はここに集まりて』

まさかの、1年あいたよ。


 机の下で横たわっているボロボロのレイリックに対して、アンシアは治癒魔法(ヒール)をかけている。


 一方的にボコられていたレイリックを(かば)い、助けることもできたが、見守るだけしかできなかった。


 俺に人の心が無かったわけではない。ただただ、すごかったのだ。


 リトミコが繰り出す攻撃に(すき)は無く、すごかったのだ。


「ギルドの案内人は、強くないとやっていけないからねぇ~」


 リトミコは、得意げな顔をしながら、30㎝のバケットを豪快にかじった。


「美味しいわね~。体を動かしたあとの飯」


 バケットの味が絶品と言っているわけではなさそうだ。


「ギルド案内所にくる人は、変人ばかりだからさぁ~。困っちゃうよ」


 例に()れず、俺も変人の仲間入りかもしれない。


「そう……なのか?」


 そう返して苦笑いをした。


 武闘派のギルド嬢か……。


 今後は冒険者や勇者ギルドに依頼する前に、ギルド嬢が直接助けに行くのはどうだろうか。


「れ、レベルをくれ、キョウ……ヤァ~。防御力がぁ……欲しい」


 レイリックは、右手を伸ばしてくるが、


「キョウヤ、力は貸さなくていいよ」


 リトミコの威圧的(いあつてき)な一言で、恥ずかしながら俺も硬直(こうちょく)してしまった。


 頑張れレイリック。心の中で唱えた。


「覚えてろよ。リトミコぉおお」


 痛々(いたいた)しい声は、レイリック。


「なんだって~」


 嗜虐的(しぎゃくてき)な笑みを浮かべるリトミコ。


「何でもないです」


 レイリックは、子犬のように丸まってしまった。




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 さて、今後どうするか、考えないと。


「ちょっと、ちょっとキョウヤ。また一人で考えてんでしょ」


 皇帝に会うまでの手順を描き始めるところ、リトミコは割り込んできた。


「ああ。どうやって皇帝に会うか……」


 まずは城に忍び込むか、いや誤解されたら終わりだ。いっそのこと、カレン率いるフォーリオス帝国の兵士に捕まって城に侵入するか……。それとも。


「ちょっといいかしらキョウヤ」


「なんだ?」


独断専行(どくだんせんこう)は許さないよ」


 リトミコは、やれやれとため息をつきながら言った。


「え?」


「『え?』じゃないでしょ」


「いや、リトミコやレイリックは、俺たちをここまで連れてくる案内人で……」


「やっぱそうなのね。私たちには内緒にして、一人で解決しようとしていた。そうでしょ」


 ……?


 俺の頭は混乱していた。


 どうして、俺は一人で行動してはいけないのか、どうしてレイリック、リトミコを巻き込まないといけないのか。


「分かってないねキョウヤ」


 さらに、リトミコは溜めてから一言。


「私たちはパーティーなんだから――」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! ちょっと待ってリトミコ! それは俺のセリフだぁああああああああああああああああああああああああああ」


 レイリックは、軽快(けいかい)に体を起こして、バンッっと机を叩いた。


 その衝撃(しょうげき)で――シャン! っと食器から高い音が鳴った。


「ずっと、俺も思ってたんだよ。なんかさ、キョウヤから疎外感(そがいかん)が出てたって言うかさ」


 ――――!


「ずっと色々なパーティーを組んでたから分かる。仲間の考え的な? 俺様も一緒だ。パーティーの仲間として連れてけよ」


 レイリックは、腕を組んで仁王立(におうだ)ち。


「でも、巻き込みたくはない……これ以上は!」


「お前が俺たちをパーティーの仲間だと認めないならそれでもいい。だがしかし、お節介(せっかい)かけさせてくれ」


 レイリックは歯を見せて笑った。ついでにウィンク。


「なんで、そこまで俺に付き合ってくれるんだ?」


「キョウヤはピアノ街を救ってくれた。今度は私たち」


 リトミコは、スッと席を立って熱い眼差(まなざ)しを向けた。


 最後に、隣にいるアンシアを見ると、大きな魔法銃(インフィニティ・ネクサスを大事そうに抱えて、ほほ笑んでいた。


「私はキョウヤさんの力になること、ただそれだけです。ずっとこれからも」


 俺にとって初めての感情が湧いた。


 きっとこれは――――友情。


 そう思うと照れくさかった。


「すまない。みんな力を貸してくれ。フォーリオス帝国の闇を(あば)きたい!」


 俺は、手の甲を前に出した。


「そうこなくっちゃな!」


 するとレイリックが手を乗っけて、


「任せてよ」


リトミコがさらに重ね、


「キョウヤさん。また一緒に」


 アンシアが力強くみんなの手を押し込んだ。


「あんた、私にすら負けたじゃん、キョウヤを守れるの」


「はぁ~何だと。さっきは手加減してやったんだよ。へっ」


 いつもの調子が戻り、気持ちが高まったパーティー。


 二人の言い合いを心地よく感じながら、胸の十字架(ロザリオ)に声をかけた。


 また、始まったよ。旅が……。


「作戦会議をしようか!」




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 予想はしていたが、フォーリオス帝国の情報網は早かった。


「ちょちょ、なんで追いかけてくんだよ~」


 レイリックは、叫んだ。


「仕方がないでしょ、向こう側が私たちに敵意()き出しなんだから」


 リトミコが言葉を返す。


 店を出た瞬間に俺たちは、フォーリオス帝国の兵士に見つかり、追いかけ回され始めた。




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