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レベル1の落第生が異世界でレベル上げ代行サービス  作者: りっきー局長
第4章 フォーリオス帝国(ピアノ街)編
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Exp.48『武器選び』


「ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」


 戦いが終わって数日。


 俺たちは、学長室に通された。


 もちろん顔を出した理由は、初めて来校したときと1ミリも変わらない。


 アンシアの魔法が発動しない原因調査と回復魔法学科(修士)の受験である。


 ……扉を開けるまでは、そう思っていたのだが。


「本当に、本当に、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」


 どこぞの謝罪会見だった。

 低く透明感のある声。勢いよく頭を下げてきた人物。


 学長のフェローチェである。


「頭をあげてくれ、フェローチェ学長」


 予想外の展開で俺は少々(あわ)て気味に手を前に出し、アンシアも隣でビクついている。


「俺は大丈夫だから、それより体の調子は?」


「えぇ、だいぶ整いました」


 フェローチェ学長の青色の瞳からは、今にも涙がこぼれ出そうであった。


 さすが一流の回復術士ということか。自己治癒力も高い。


「……あんな魔物に、どうして心を支配されたのか……私の落ち度。すみません」


「そ、そっか。それより頭を上げてくれ。気まずいからさ」


 そうして、三者面談のような形で、俺たちはソファーに寄りかかった。


 ――以前と変わらず、白を基調とした清潔な部屋と美しい魔道具の数々。

 たった今、気づいたのだが、ソファーも弾力性のある良いものである。


「アンシアさんには、魔道具が必要でしたね」


 フェローチェは、机に資料を出しページをめくった。


「装備に希望はありますか? 杖が良かったり、ブレスレッドが良かったり、はたまた帽子や服が良かったり? どうでしょうか?」


 アンシアは小首を(かし)げた。


「フェローチェ学長、試験はやらないのか?」


 俺は、率直(そっちょく)に聞いた。


「とんでもないですよ。アンシアさんは、あの戦いと街の復興に貢献(こうけん)し、十分な成績と実践を見せてくれましたから。それに他の者と協議した結果も同様でしたから」


 そういうものだろうか……。


 俺は、アンシアに確認しようと隣を向いたのだが、


「私的には、ちょっと困り……ます」


 アンシアは、俺に答えを(ゆだ)ねることなく、丁寧に答え、その場に立った。


「フェローチェ学長、気持ちは嬉しい……ですが、試験をお願いしたいです」


 ……アンシアの言葉にフェローチェは、目くばせ。


「えっと、私は、自分の力で、実践できていないですよ。キョウヤさん、リトミコさん、レイリックさん、そして、友達が一緒にいてくれたから、私は乗り越えることができたんです」


「私、勉強もしましたし、実践の練習もしました。私の頑張りを成績に残したい……というのは、おこがましいかもしれません。ですけど……私は自分の力の証明をしてみたいです」


「それに、キョウヤさんには、このアンシアが一人でも大丈夫だってところを見てもらって、これからも一緒に旅をしてほしい」

「だから全ての試験を頑張りたいです。受験させてください」


「そうみたいだ。フェローチェ学長」


「アンシアさんは、優秀ですね。では、試験を受けてもらいましょうか」


 アンシアはニコッと笑い、こっちも思わず(ほほ)(ゆる)んだ。


「ぜひそうさせてください!」




 そして――


 アンシアは、銅の杖(ブロンドスケール)を使って魔法を繰り出し、スラスラと問題を解いたそうだ。


「簡単でした」


 フゥと息を吹き、おでこの汗を(ぬぐ)っているアンシア。


 自信に満ち(あふ)れている。


「そうか、頑張ったな」


 俺は、飲み物を渡したのだった。




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 試験の合格通知が渡されて、アンシアの魔道具選びが始まったことは、言うまでもないだろう。


 グラウンドを貸し切って、魔道具を吟味(ぎんみ)しているアンシアの姿があった。非常に活き活きとしている。


 回復魔法専門の工具職人とソムリエが次々に魔道具を出して、アンシアに試演(しえん)させるという流れ。


 俺は、詳細な知識を持っていないので「いいじゃないか」「合ってる合ってる」とエールすることしかやることがなく、暇になっては雲を(かぞ)えた。


 遠くの標的へ魔法を放つたびに100発100中のアンシア。

 命中するごとに、俺に向かって手を振ってくる。


「アンシアさんは、命中率が高いですね」


 フェローチェは、腕組みをして俺の隣にスッと現れた。


「何か、秘訣(ひけつ)でもあるんですか」


「そうだな。パーティーを組んでいないと、回復魔法が届かないだろ。だから練習を重ねたってところだな」


「なるほどですね」


「キョウヤ君の話しを聞いてもいいかな」


「話せることなら、何でも答えるけど」


 するとフェローチェは、フッと笑った。


「では、キョウヤ君は、この世界にあるレベルっていう概念、何だと思いますか?」


「かなり、哲学的で難しい問題が飛んできたな」


「私も、気になってまして、キョウヤ君の推測はどのようなものかと」


「レベル……ただただ人を分けるための、くだらない指標……といったところか」


「……キョウヤ君ならそう答えると思いました。私も同感ですよ」


「本当にやりたいこと……それを数字で決められたり、数字に見合った能力や武器しか与えてることができなかったり……人が数字に支配されているみたいだ」


「まったくですね」


 俺は、久しぶりに昔を思い出し、言葉にした気がした――。


 …………そうだ!


「でも、成長を感じることは、嫌いじゃない」


 アンシアを指さして(つぶ)いた。


 フェローチェは、目を丸くしたが、その後深く(うなづ)いてくれた。




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




「ちょっと、来てくれ!」


 工具職人が俺たちを呼んだ。


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