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レベル1の落第生が異世界でレベル上げ代行サービス  作者: りっきー局長
第4章 フォーリオス帝国(ピアノ街)編
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Exp.47『フィーネ Fine』


 別に戦闘狂というわけではないが、笑みがこぼれた。


 3日以上の固定状態の体に自由が()み渡る。


 ――風を切って走り出した俺!


 アンシアは後方で待機してくれている。

 

「後方支援は任せたよ」


 アンシアは、力強く(うなづ)いた。


 植物のツタを切りながら進む。


「おりゃりゃりゃりゃりゃ」


 上空では、レイリックがツタの処理をしてくれている。


打撃魔法(ナックル)


 フェローチェは魔法を(とな)え繰り出す。


 半透明の拳が俺をめざして飛んでくる。


 ドドンっと落下する魔法を短剣で切り裂きながら、猛スピードでフェローチェに接近する俺。


「無駄打ち厳禁!」


 ――スッ!


 フェローチェの腰を短剣で薙ぎ払った。


 術式者は、接近戦術に弱いはず!


 ――――――キャキン!


 感触が硬い!


 一撃離脱のつもりが、バックルっで防がれた。


「全身に、魔道具か」


 ――――――バサッ!


(かい)殴打魔法(ナックル)!」


 ――ドンォオオオオオオオオオオオオオオオン!


 地面が盛り上がり、半透明の拳が突き出た。


「うっ」


 吹き飛ばされる。


 植物のツタが俺を目掛けて飛んでくるが、


 ――――――パスバサッ。


 レイリックが食い止める。


「ツタに意思があるか知らねーが、俺様が相手だぜ、ベイベー」



 俺は、地面に短剣を突き立て、着地に力を込めた。


 接近戦が苦手で俺を遠ざけている。

 でも、対策はしっかりしている……か。 さすがだフェローチェ。


 砂が舞って、視界が(さえぎ)られる。


打撃魔法(ナックル)


 地面から剣を引っこ抜き――拳を切る!


「アイアン・メイデン!」


 一撃必殺の魔法は、遅い。


「レベル3空気、踏み台」


 ――両側から挟み込む魔法を、ジャンプで回避。


 ――――――。


「っ……」


 フェローチェは、上を向くも不安な表情。


「どこにいったぁ!」


「目の届く範囲に、俺はいないよ」


 ――(かす)み斬り!


 砂に紛れ、高速の剣で、フェローチェの横腹に傷を入れた。


 俺を見下ろすフェローチェは、じわじわと苦笑い。


「ここまで醜態(しゅうたい)をさらせば、ばれましたかね……」


 服は乱れて、髪も抜け落ちている。

 その姿は、落ち武者。


「だったらどうするつもり」

 

 ――スピンッ。

 短剣を(さや)(おさ)めた。



「決まっていますよ。全て終わりにするんですよ」


「終わりにすっ……!」


 ……フェローチェ目は充血して、手は震えて――!


 でも、どこか寂しそうな表情を浮かべていた。


「僕の最後の技で、街を壊滅へ……ぐふぁっ……」


 フェローチェ、本当は、何者なんだ。


「レベル1、殺したい!」


 ――邪悪な執念(しゅうねん)はいったい!



「もう止めてください! フェローチェ学長!」



 ――――――!



 声のする方向に顔を向けると、術式学校の生徒が大声をあげていた。


 それも数人。


「フェローチェ学長。どうしたって言うんですか。優しい先生は……どこにいったのですか」


「呪いの音の犯人は、学長だと……私たちも分かりました。信じたくはないですけど、分かりました」


 ――!


「だから、争いなんてやめて、罪を認めてください」


「うるさい! 学生の分際で何が分かる!」

 

 再び俺は短剣を構えた。


「お願いです」


「……どうした」


 術式学校の生徒の一人が俺に向けて訴えた。


「アンシアちゃんから……話は聞いていました」


「あなたが行方不明の間、アンシアちゃんは。私たちの仲間。リーリ―・ピアノ術式学校の生徒でした」


「いえ、今も仲間です!」


「いっつも、アンシアちゃんはあなたの話をしていました」


「すごく優しい方だって」


「それなのに、先ほどは……」


「ごめんなさい」


 ――そっか。


「君たちが……アンシアの心の支えになってくれていたのか」


 俺はゆっくりと笑った。


 どうしたら、フェローチェを安全に攻略できるだろうか……。


「それで、あの、フェローチェ学長を殺さないでください」


「「「「「「お願いします」」」」」」


 術式学校の生徒が頭を下げてきた。


 そして、アンシアもそれを希望しているようだった……。


 どれだけフェローチェが(した)われているのか、ということだな。


 ……。


「ぐわぁあぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



「私は、どうすれば……ぐふぁぁっ!」


 フェローチェは吐血した。

 そして見る見るうちに倒れ掛かる。


 ――――――様子がおかしい。


「やれ、フェローチェ!」


 どこからともなく、怪しげな深い声。

 フェローチェのものではない。


「ぐわぁあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 倒れ掛かったと思ったら、すぐさま叫びをあげたフェローチェ。


「俺は、俺は、お前を殺す」


「ぐわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 体が割けるくらいの叫び!

 フェローチェは、歯を食いしばり何かに耐えていた。


「生徒たちを、私の生徒たちを……」


 俺は、不安そうな面持ちの生徒を横目に(うなず)いた。


 何もかもが分かった。


「安心しろ、フェローチェ学長。俺が必ず救う」


 すると、アンシアからの回復魔法(ヒール)


 力を込めた。


 ――――――瞬発(しゅんぱつ)



「ぐわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ死んでしまえ!」


 叫び狂うフェローチェ!


「サ・イ・コ!」



「今!」



 ――――――俺は加速した。



「シンフォニー!」


 ――発動音!


 ――グッ。


()りついている魔物に教えてやる。知っていたか、回復魔法の発動音ってやつを……」


 フェローチェの体に肘を叩きつけた。


「もっと、鍛錬しろよ」


 ――――――黒幕は驚き、フェローチェの体から逃げようとする。


 それを一突(ひとつ)き!


「逃げるなんて虫が良すぎる」


 いったんもめん、のような奴。

 黒い体に目と口は赤く、ニッタリ(うら)めしそうな表情だった。


「――グハッ!」


()りつかれていた……か」


 ――フェローチェを蹴たぐり、強引に黒幕と引き離した。


 フェローチェはぐるぐると地面でバウンド。ズズズズと滑り込んだ。


「「「「「「「フェローチェ学長!」」」」」」」


 術式学校の生徒が駆け出した。と同時にアンシアは回復魔法(ヒール)を飛ばした。


「なんですか? これは?」


 頭を押さえて、ふらふらしているフェローチェ学長。

 どうやら記憶がないらしい。


「フェローチェ学長!」


「誰です⁉」


「そんなのは後だ。こいつを封印(ふういん)したい! 最大限の魔力を使ってくれ、急いで」


「どうなっているのですか……⁉」


「話しは後で、生徒から聞けばいいから!」


「フェローチェ学長、急いで、早く!」


「君たちもですか。……わ、分かりました」


 生徒たちのひと押しもあり、フェローチェは了承した。


 ――――――。


 フェローチェは清流のような呼吸をした。

 その雰囲気から聞こえてくる音と魔法。



「永遠の眠りにつきなさい。メシア・シンフォニー!」



「ぐふぁあああああああああああああああああああああああああ」



 突き刺された状態で黒幕は浄化されていく。


 どんどん縮む――――……。


「ぐふぁああああああああああああああああああああああぐふぁああああああああああああああああああああああああああああ」


 不協和音のような叫びが響く。


「レベル1の分際で……」


 黒幕は、五線譜に飲み込まれて音符の泡に包まれた。


 心地よい眠りへと(いざな)い、安らぎを与える最強の回復魔法! 

 メシア・シンフォニー。


 最強の回復術士フェローチェから放たれた魔法は本物であった。


「ぐふぁああああああああああああああああああああああぐふぁああああああああああああああああああああああああああああ……」



 ――――――――――――――――――。

 ――――――――――――――パンッ!

 ――――――――。



 一つの巻物(まきもの)が地面に落ちた。

 

 黒幕は、封印の形として魔道具に変化したのだった。





 ――――――LEVEL SERVICE――――――

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