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レベル1の落第生が異世界でレベル上げ代行サービス  作者: りっきー局長
第4章 フォーリオス帝国(ピアノ街)編
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Exp.46『形勢逆転』


「一体どうしましたぞ。フェローチェ学長」


 ――どわっ!


「黙れ!」


 司会者を跳ね飛ばし、ズンズンと俺の方にやってくるフェローチェ。

 額には血管が浮き出ている。


「つまらない。レベル1の化け物が!」


 フェローチェの薄橙色(うすだいだいいろ)の髪はひどく乱れ、青い瞳を潰すような怪訝(けげん)な表情。


 感情を滅多に出さないフェローチェ。クールな印象は消えていた。

 

 リーリ―・ピアノ術式学校の生徒は特に動揺しており、全員がその場に尻もちをついていた。


 ――! 


 強い殺意……俺は分かった。

 しかもその殺気はディレンと非常に似ている。


 俺の前に立ったフェローチェは、今にも鈍器を振り下ろす勢い。

 

 ――鎖から脱出しなければ……。


 ――!

 

 アンシアは俺をかばうように、両手を広げて立ちふさがった。


「そこをどけ!」


「どきません! あなたが呪いの音の正体ですね」


「証拠なんて、どこにもないだろうが!」


 アンシアの小さな体に、フェローチェの影がかかる。

 普通の女の子なら恐れてしまうだろう。

 しかし――アンシアは、涙を(こら)え、奥歯を噛みしめ、震えながら立っている。


「アンシア……そこをどいてくれても、大丈夫だ」


「でも!」


「いいから、いいから」


 俺は、アンシアをなだめた。


「――よぉし」


 フェローチェは、低い声を出し、ギリリッ――と鎖を乱暴に握り、俺を持ち上げた。

 ポーカーフェイスが消えて……凸凹になっている顔。


「今ならば、ポーカーで勝てそうだ、フェローチェ」


 俺はヘラヘラと笑った。


「ふっ、危機的状態でもへらず口を叩けるのか」


 フェローチェは冷たく笑止すると、


「危機的状況だからかもな」


 俺は余裕の笑み。


 あいつらの……足音が聞こえる。

 ――ギルド。


「がら空きだぜ、フェローチェ」


 俺は(つぶや)いた。


「何がだ!」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――!

 

「食らえぇ! 俺の愛武器(マナ・ウェポン)! フレイル! ――ふんっ」



 とある男が叫ぶと――!



 ――ぐるぐると回る武器が、観客席の最上段から思いっきり投げ込まれた!




「フェローチェぇええええええええええええええええ! 見苦しいたらありゃしないぜ! 真のイケメンである、このレイリック様が成敗してやるぜ」


 青いバンダナと汗が輝いた。


 ――!


「証拠はたっぷりありますよーー」



「レイリックさん! リトミコさん!」



 アンシアは指さして歓喜の声をあげた。



 ――! フェローチェは、フレイルを簡単に()わす。



「ちぇ! 緯度と経度が数ミリズレたか!」



 しかし、レイリックは、ガッツポーズ!



 ――パキン! ――パキン! ――パキン! ――パキン!



 ―――――――!




 俺の両手足を繋いでいた鎖は――切断されたのだ!



 そして、持ち主のもとに戻るフレイル!

 レイリックは手に取り、持ち手にキスをした。


「おっと、キョウヤ、アンシアちゃん 恩を返しに来たぜ」


 レイリックは、金髪を光らせ、「覚えているか」っと言わんばかりの勢い。

 頭に巻いてある青色のヘアバンドを親指で指さした!


「覚えている! レイリック!」


 ――!


 ――俺は、フェローチェの隙をついて、高く大ジャンプ。

 フェローチェと距離を取った。


「身体が少々(なま)ってる気がしたが、問題ない」


 レベルは無くても、経験値は確かに胸の中にある。

 短剣を引き抜いた。


「アンシアさん、忘れ物で~す」


「はい、リトミコさん!」


 ――今度は、銅の杖(ブロンドスケール)が空中に飛んだ!


 パシッ――!

 アンシアはそれを受け取り、俺の後ろについた。



 ―――――――!



「な、何が起きている!」


 状況が追いついていない観客。


「これは、なんですぞ。公開処刑ですぞ! どへぇええええええええ⁉」

 

 司会者にも、事態の収拾は難しくなっていた。

 

「フェローチェ! お前が呪いの音の犯人だ!」


 観客にも分かるように、短剣でフェローチェを指した!


「何を言う!」


「俺たちが呪いの音について知ったのは、レイリックがお前を討伐しに行く夜のことだ!」


「そうだぜ、証拠人(しょうこにん)は、このレイリック様と俺様のギルドメンバー全員だ!」


 ――うっ!


 フェローチェは言葉に詰まった。


「あっ、さらに証拠なんですがぁ~。来店した連れの警備部隊の2人を賄賂(わいろ)で口止めしたそうですねぇ~」


 リトミコは、元気よく手を振って、気持ちよさそうに言う。



 ――ググッ!



 フェローチェの顔は、さらに引きつった……。


「さて、形勢逆転ってところか!」


「くっくっく。そうですか……全てぇ~知っていそうですね……」


「ならば、お前らの息の音と記憶、全部消してやる!」


 ――!


 ポーカーフェイスは、きれいさっぱり消えて、悪魔の形相(ぎょうそう)だった!


 「植物怪物魔法(ドレインクリーチャー)!」


 植物がぎゅにゅにゅにゅ、と地面から生えた。


「行くぞ! アンシア」


「はい、キョウヤさん!」





 ――――――LEVEL SERVICE――――――

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