Exp.43『二面性』
転送魔法にかけられて……それから。
――!
「アンシア!」
――――――ガチャリ!
――!
俺の両手、両足は、鎖で繋がれていた!
ガチャガチャと外そうとするが、金属音が響くだけ。
鍵は、二重ロックされており、アンシアと繋がれたはずの手錠は床に落ちていた。
「アンシア!」
もう一度呼ぶが返事はない。
どこにもいない!
独房の空間には、1人ということを理解した。
……。
さらには、声がよく通ることから、広い空間の一部に閉じ込められていると分かった。
しかもその空間は、よりにもよって地下であろう。
ひんやりとしていた。
――――ガチャリ、ガチャ。
――――――――――――――ガチャガチャン!
「外れろ!」
「動揺しているようですね……」
――!
「アンシアさんはいませんよ……」
のそりと姿を現したのは、薄だいだい色の長髪に、白肌、青い目。
そして、ポーカーフェイス。
――フェローチェ!
「アンシアはどこだ!」
「……」
「答えろ!」
俺が眼光を尖らせたところで、何の効果もなかった。
フェローチェは、すまし顔をしているだけ。
いつものことか。
「大丈夫ですよ。アンシアさんは、我がリーリー・ピアノ術式学校で、ご丁寧に取り扱っていますから……」
「信用できるわけなっ!」
――!
「キョウヤ、君は一体何者なんだ……」
フェローチェは、独房の鉄格子をすり抜けて上から脅すように問いかけた。
――――――ガチャリ!
反撃をしたいのだが、両手足の鎖で動けない。
「――さぁ、なんだろな。まったく。でもさ、お前は。いつでも無感情」
―――――――!
「お前こそ何者で、目的はっ!」
――ぐふぁっっ……!
フェローチェの蹴りを腹部に食らった!
久々にもらった物理攻撃はじわじわと効いてくる。
「今日はやけに感情的なんだな……」
――ぐふぁっっ……!
「――チッ! 話しにならない!」
フェローチェは、怒りの表情を見事に表したのだった。
「ッ! ところで、本当にフェローチェなの――か?」
「……」
――ぐふぁっっ……! ゴホゴホ、ゴホ……。
ついには吐血した……。
「――君は危険人物として噂になっているんだよ。我々の間でな……」
「われわれ……だと?」
――ぐふぁっっ……!
「君を殺したい集団だよ……」
「君は、レベル1。とっくに死んでいるはずなのに、なぜ!」
――ぐふぁっっ……!
「それどころか君は、深淵を覗こうとまでしている。それは許されない!」
――ごふぁっっ……!
――!
次は顔面の殴打。
「ドゥゲール王国の出身とか……なにかか?」
フェローチェの目は汚らしいものを見るように引きつって!
「殴打魔法!」
―――――――ガシャリ! ――バン!
見えない鉄拳とでもいえようか? 魔法攻撃で俺は、鎖に繋がれたまま吹き飛び壁に激突。
「超殴打魔法!」
―――――――ドガンッ!
――Exp Set Up Level Cover REVIVE ON――
―――――――くっっぅ!
「なぜ、君は死なないんだ!」
俺の体の中では、経験値がうごめき、再びレベル1に戻す。
あの時のように……。
「――チッ。まぁいい。ここで殺すことはしない」
「だから、それまで眠れ! サイコ・シンフォニー!」
「……レベッ」
それは、狂気としか感じない旋律!
――うっっ!
紫色のオーラが、真っ先に俺の口元を塞いできた。
息が吸えない……!
――――――――――――――。
戦意喪失というのは……意識が朦朧として……。
もう、苦しすぎて、もがき苦し……抵抗さえも……。
「サイコ・シンフォニー!」
「回復まほ……の発どうおと……これ……か――」
……――――――。
――――――LEVEL SERVICE――――――
そして、俺の目は覚めるのだった。
4日後……。




