Exp.42『沈黙の装い』
「誰の命令だ?」
「それは……言えない」
俺の問いに対して警備部隊は、頑なな態度を取っている。
「……なぜここに俺たちがいると分かった?」
「……」
「銅の杖ですか」
アンシアは、警備部隊の男性に、真剣な顔もちで正面きった。
すると、うぅ~と唸って言葉に詰まる警備部隊の2人。
「とにかく、来てもらわないと困る!」
「いつまでかかっている……」
――!
暗闇から見知った声がした。
「すみません。この者たちが……理由を言えと……」
暗闇から出てきたのは、フェローチェだった。
ポーカーフェイスの冷めた男。
暗闇から現れたものだから、いつもの数倍怖い。
俺のことを一瞥すると、ギルド施設を警戒し――。
「こんなところに、呪いの音の被害者がいるとは……」
レイリックに目が留まったようだ。
そして、ギルド施設の中にズカズカと入り込み、ため息である。
「どうして、患者を連れてこなかったのですか……」
「すみません、それは」
リトミコが恐る恐る答えた。
「すみませんでは、すみませんよ……」
――――――――――――。
「気持ちよく眠っていたから特に呪いの音の被害にあっている、とは考えなかったんだ」
――!
「逆によく、この勇者レイリックが、呪いの音の被害を受けていることが分かりましたね。知り合いですか?」
――!
フェローチェの表情が少々引きつったように見えた。
「睡眠中にも、特徴的な効果があるのか?」
「――そうだな……こいつの顔に似ている奴が、病院から逃亡して見間違った……」
畳みかけたのだが、スルリと交わされた。
アンシアは、さらに問い詰めようとしていたが、俺は止めた。
証拠がないので、みっともない水掛け論は避けたい。
「そうなのか。では、他に聞きたいことがあるけどいいか?」
「なんだ……」
「どうして、俺たちがここにいると分かったんだ?」
警備部隊が答えることができないなら、その上司に聞くしかないだろう。
「………………」
「時間がない。こいつら2人を運べ……」
「待って、ください! この旅人2人が何をしたというのですか」
リトミコが、最後の抵抗を見せてくれた。
「あなたには、関係ないです……」
「関係なくないです! これからクエストを請け負ってくれる旅人なんです。客を取らないでくださいよ」
「治安維持が優先ですので……」
「でもですね!」
「いや、このギルドの受付さんとは無関係だ」
リトミコは俺たちを守るために必死だったのだろうが、俺はフェローチェの流れに乗ることにした。
「だから、ここでの戦闘や尋問的なものは避けたい」
「ですよね。治安維持が大切ですよね。ごめんなさい」
そうしてリトミコは、静かになった。
俺にとって好都合の状況になった。
敵の懐に潜り込むチャンスである。
「さて、行きますよ……」
フェローチェの掛け声で、俺とアンシアは、手錠で繋がれた。
手錠に明らかな術式が隠れて!
「転送魔法……」
フェローチェは、静かに唱えた。
――――!
――コロンッ!
地面には、銅の杖が静かに一本転がった。
――――――LEVEL SERVICE――――――




