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レベル1の落第生が異世界でレベル上げ代行サービス  作者: りっきー局長
第4章 フォーリオス帝国(ピアノ街)編
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Exp.36『呪いの音』




 役所での用事は、簡単に切り上げることができた。

 宿屋(やどや)に荷物を下ろし、早めに休息を取った……のだが。


 ――――――。


「休憩でなくて、がっつり寝てしまったな」


「寝てしまいましたね。キョウヤさん……」


 ぼそりと(つぶや)くと、アンシアは、目を擦りながら返事した。


「今日は夜勤ですか、キョウヤさん」


「そんな予定はない」


 お昼に寝て、夕方に目が覚めるといった、昼夜逆転コースへの突入。

 嫌だぜ、そんなの。


 ……。


 アンシアはよだれを(ぬぐ)い、洗面所へと向かった。


「まぁ、夕食でも食べに行くか」


「外食ですか!」


 髪を()っている途中のアンシアは、顔だけ出して笑みをこぼした。


 準備を済ませ、軽装で街に出てみるか。




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 軽装とはいっても、短剣は持って行くし、アンシアだって、護身用のナイフは仕込んでいる。

 ただ、ラフな格好である。防具ありだと重いからな。


 夕日が照って、レモネード色の街は、陽気で穏やかであった。

 

 街並みによく馴染むのは、ジャズ系の曲。

 中でもトランペットやサックスの速弾きが心地よかった。


「食べたいものはあるか、アンシア?」


「そうですね。パスタ系とか食べたいかもです」


「了解した」


 周辺にいた人に尋ね、3つほど場所を教えてもらった。

 その中で、アンシアは、アコースティックギターが鳴る店を選んだ。


「昔、ギターを弾いてくれた近所のおばさんがいたんです」


「そうだったのか」


 席につくや、アンシアは、音に聞き入っていた。

 ポロポロと流れる旋律(せんりつ)、確かに落ち着く。


 運ばれてきたものは、パスタとピザ、どこかの天然水。

 木の(うつわ)に盛られたり、(そそ)がれていたり、のんびりな雰囲気。

 つけれるものなら、星5つ!


 食事を済ませ、アンシアとの会話は、新鮮そのものだった。

 お互いが一緒に旅することにはなったが、ゆっくり話す時間は取れていなかったからだ。


 自分の村は、山に近いこと。

 秋の収穫祭(しゅうかくさい)のこと。

 両親を早くになくし、それからは地域に育ててもらったこと。

 そして、奴隷商人によって村ごと買収されたこと……。


 ときに激しく、ときに温かく。

 アンシアは、表情いっぱいに話してくれた。


(つら)いこともありましたが、キョウヤさんと会えて、楽しいのでした」


 手を合わせ、にこやかに笑うアンシア。


 俺だって、アンシアに会わなかったら、とっくに自害していた。――だから。


「こっちこそ、ありがとな」


「いえいえいえ、とんでもないです。そんな……」




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 ――外が騒がしい。


「祭りですかね。ロックフェスティバル的な?」


「そんなことは、無いだろう、さすがに」


 ――!


「よっしゃー、今日こそ仕留めようぜ! このレイリックギルドで!」


 夜の討伐隊だろうな。


「ちょっと、見てみるか」


「そうですね」


 俺たちは、声の集まる6人の集団へと近づいた。


「すごく元気だな。なにか始まるのか?」


「お、よく聞いてくれたな」


 反応してくれたのは、金髪を青のバンダナでくくった、活気ある男。

 背中には、フレイルと言う名前の武器が装備されていた。


 木製(もくせい)の持ち手から伸びている(くさり)の武器で、鎖の先端には、鉄玉がギラリ光っていた。

 (むち)のように振り回すのだ。


「俺は、レイリック! このギルドの(おさ)である」


「今から、夜に出現する、呪いの音の正体であるヒト型モンスターを討伐するんだ」


「呪いの音?」


「なんだ、ここの住民じゃないのか。まっ俺たちも旅人だけど」


「そんでさ、夜になったら、笛の音が、街中に小さく響くんだって。そんで、その音をじっと聞くと、いつの間にか、意識がなくなるんだってさ」


「子守り歌のようなものじゃないのか?」


「いやいや、俺たちも、そう思ったんだが、朝起きたら、自分が誰なのか一瞬、分からなくなるらしいぜ」


「そ、そうなのか……?」


 あまり(たい)したこと、なさそうでもあるが……?


「でもさ、ここ毎日、夜中に音が鳴っているもんだから、何度も何度も聞いてしまい、深夜徘徊が多くなっているんだぜ」


 積み重ねが、大きくなり、自己認識に影響しているってわけか。


「私は誰ですかって聞いて周るのだってさ」


「なんか、怖いです」


「そうだろ、そうだろ、かわい子ちゃん」


 レイリックは、ビビらせるつもりはないのだろうが、妙に怖く話すもんだから、寒気がする。


「って、お前たちは2人か……弱そうだな。早く宿屋に帰って、ぐっすり寝た方が身のためだぜ」


「あー、忠告ありがとう」


「いいってもんよ。じゃっ行ってきますぜ」


 そういって、レイリック(ひき)いるギルドは、闇の中に消えていった。


「戻りますか。アンシア」


「そうですね」


 その夜、アンシアを先に寝かせ、興味本位で笛の音を待っていたのだが、全く聞こえない。


 レイリックたちは、戦っているのだろうか。


 夜中2時ごろ俺も目を閉じた。






「私の名前は、アンシア、回復術士(ヒーラー)(認定)(にんてい)

「好きな食べ物は、パンとケーキ。よってパンケーキは最高食材」

「嫌いなものは、毒へび、とにかく毒のあるもの」

「最近のマイブームは、薬の調合、早く作って試してみたい」


「私は、アルフェ村のアンシア、こっちは、相棒のキョウヤさん」


「何してるの?」


「ひゃう……」


「サ、サ〇シは、マ〇ラタ〇ンで、相棒はピ……」


「……あの、いや、あの、なんと言うか。キョウヤさん」


「大丈夫でした! えへへへ」


「異常がなくて、良かったな」


 俺は、キョウヤ、レベル上げ代行サービスのキョウヤだ。

 隣にいるのは、相棒のアンシアで、こいつの自分点検の声で目が覚めた。


 当たり前だが、俺もしっかりと自分を覚えていた。



 朝食は、ギルド施設で取ることになった。

 アンシアが、ギルド施設に入ってみたい、とのことである。


 朝のピアノには、ケルト系の音楽が流れ、アコーディオンやバグパイプ、野生の音色が最高だった。


 ――!


「あれは!」


 レイリック率いるギルドが前方からこちらに向かってくる。

 金髪と青色のバンダナですぐに分かった。


 昨晩(さくばん)は音が聞こえなかったから、きっと討伐に成功したのであろう!


「昨日はお疲れ様だったな」


 ……。


「……あ、ああ」


 レイリックは、ゆっくりと振り向いた。


 元気がないようだ。


 目にはくまができており、寝不足が深刻……。


 ――そして、立ち止まることなく、集団は、真っすぐ歩いていった。


 ギルドで終了の受付をして、宿に戻るのだろう。



 ――――――――。



 ギルド施設に入ると、クエスト受付嬢が忙しそうに応対をしていた。

 俺たちはその姿を横目にしながら、2階の朝食スペースへと入るのだった。





 ――――――LEVEL SERVICE――――――





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