表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/57

Exp.33『脱出』



 俺の空気結界は、少しずつ溶けて溶けて……。


 ――ピキッ。


 ヒビが入る。


 次の手段を!

 俺は、暑苦しいのを紛らわせながら思考をフル回転!


 俺に、攻撃魔法はない。


「アンシア、花火魔法を巨人にぶっ叩け、内部爆発」



「はい! 花火魔法」



 ――――――!



 残念ながら、巨人の前で破裂。


「ふえっ」


 ……アンシアと巨人には距離があって、俺の想像は不発。


 仕方がない。


 ――――マグマは、さらなる上昇、そしてゆったりと波打つ。


 フィールドは、マグマに四方を囲まれ歪な円形になった。

 マグマの沸き上がりのせいで、地面はゆるくなり、簡単に足を取られてしまう。


 泥の上を歩いていると言っても過言ではない。時間がない。


「アンシア、しっかり捕まっとけ」


 これが最後だ。


 俺は、アンシアを迎えに行き、強引に抱えた。


 そして壁を蹴って、大きくジャンプ。


 アンシアは、左腕を俺の首に回し、正面を向いた。





 そして――――――。





「もう、このままは嫌ですわ」


「私が、強くなって、みんなを幸せにしたい。お引き受けします」


「だから、王女になりますわ!」


「私を承認してください!」


 ローリエは叫んだ!

 紛れもなくローリエの意志であった。 


「いいでしょう」


「へ?」


 鏡が答えてくれた――!

 眩しい!

 すると鏡は発光、ローリエの体を包み込んだ。


 グワーン。グワーン。


 トリアトン帝国の城の鐘は、深く重く鳴り響き、数千年の歴史をリスタートさせる。



 ――――とたんに、ローリエの頭の中には、場所が映し出された。



 場所は街全体の上空、1000m。


「ディレンは、街の焼土を狙っていた……のですね」




 ――――――――――――――――――!




 そして、俺たちは、巨人のきっちり直角上、50m


 グポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。


 巨人の雄叫び。


 重いのだろう、巨人の腕は上がらない。


「もう、何も怖くはないよな」


「はい! キョウヤさん」


「よし、今だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


「花火魔法!放ちます」


 俺の胸元で、アンシアの体は、鮮やかに光る。


 そして――目を閉じて、力強く詠唱。


 そして、溜めて……手をピンッっと張り、



「はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 見開く。



グポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!。





 ――――――――――――ヒュルルルルル……。




 ――――――バァァァァンッ!




 ――――――色彩豊かに炸裂!


 グポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。


 崩れ落ちる。


 巨人の上半身は、バラバラに――――粉砕された。


 グポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 


 ガッツポーズのアンシアと、威力を俯瞰(ふかん)する俺!


 ――――――――――――!


「うぐっ」


 胸の奥深(おくふか)くに埋めるように、アンシアを抱きしめた。


 花火魔法の反動で、壁に叩きつけられ……るが、バランスを取り、崖の部分にアンシアを安置。


「ありがとな」


 ――!


 そして、俺はまたもや、巨人に突っ込んだ。


 コア(心臓部分)


 ――――――。


「うおりゃああああああ」


 ガタリッと崩れ落ちる巨人。


 巨人の足元は、すでにマグマに浸かっている。


 ――――――俺は、コアを貫いた――――――




 ――――――――――――討伐完了!




「ぐはっ」



「空気、レベル42」



 踏み台が贅沢。

 マグマのダメージを受けて、溶けない工夫だった。


 そして俺は、アンシアのところに、とんぼ返り、肩から滑りこんで不時着。


「回復魔法……できないよ」


「アンシア、大丈夫だ……俺は」


「それよりも急がなければ、だろ」


 ここからは、アンシアを抱えて、自力で登らなければ……!


「キョウヤ、聞こえる聞こえるかしら」


 ――――――!


 場所の転移をするところまで、来たというわけか……ナイスタイミング。


 火山内部にローリエの声がこだました。


「ローリェ……」


 俺は、咳き込んだ。


 喉は焼けこげたのか、上手く使えなくなった。


 言葉を頭の中で並べ……。


「通常通りの火山として上に吐き出すマグマ……」


「ティレンテ市街とゴブリン生息地を塞ぐマグマ、に分ければいいのかしら」


 二つの役割。


 そうそれだ!


 俺は、グーサイン。


「了解したわ」


 ローリエには、こちらの様子が見えているようだった。


 ん? ……何かしら騒がしい。


「キョウヤ殿!」


 ケーシーの声はもちろん、だが、



 ――――――!



 スタジアムで、聞こえた声援!


「あ……ああ」


 だんだんと力が湧いてきた。


「キョウヤさん!」


 もう一度、グッっと高く右手を挙げた。


 俺は、腕と足に力を入れて、火山を上り、


 ギリギリまで、この腕で(しの)いでやる。


 ――ゴポッ、ゴポッ。


 量が減少……。


 マグマの引きが止まってからが勝負である。


「先に、穴塞ぎのために、結界を移動させましたわ」


「うん!」


 俺の代わりに、アンシアが答えた。


 上出来だ……。


 そして、俺はグングンと登りを再開させた。




 ――――――――――――――――――――――――。




「あと、少し!」


 火口に手を駆けて、両手で掴み、足を駆けて、


 ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。


 街からの声援がダイレクトに、鼓膜へ伝わる。


 力強く踏みしめた。


 そして!


 ――――斜面を、(すべ)る格好で火山から離脱。


 ――――――ガタン。


 地面の奥底から、揺れが起こり、


 ――――――ぐっ!


 俺は、アンシアを背中にもう一度、強くしがみ付かせた。


「キョウヤさん」




 ――――――バーン! ――――――――――――――――――ドーン……。




 火山は真っすぐに、大噴火。


 俺たちは、ラテーラ火山の(ふもと)を通過――――と、同時に、後ろが空間転移。



 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!



 マグマや火砕流(かさいりゅう)に巻き込まれず、無事である。


「ローリエのおかげでだ。ありがとな」


 離脱完了!





 ――――――LEVEL SERVICE――――――





 (くろ)(おお)われた空に、変わりなし。


 しかし、空いっぱいに、星座(せいざ)(よみがえ)った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ