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Exp.30『宣言』






「みんな、大丈夫か」


 すぐさま安全確認を取ると負傷者は0人。

 スタジアム外に柱や壁が倒壊したそうで、スタジアム全体を見渡せる塔だけが、内に倒れただけだった。

 俺は、ホッとしつつも!


「キョウヤさん、あれ!」


 ――!


 次が待っていたようだ。


 ラテーラ火山から不気味な黒煙がもくもくと上がる。

 さらには、黒煙の内部で雷、稲妻が発生しているといった不自然な現象。


 せ、世紀末。


「せっかく、みんな無事なのに、にゃ!」


「どうしよう、キョウヤさん」


 辺り一面の悲鳴は、自分たちの不幸を嘆いているもであろう。

 大混乱の中、冷たい風は吹き、黒煙は広がり、雲となって空を覆いつくそうとしている。


 そこに、いるのか?

 それとも、運命のいたずらか。



 ――――――ドン!


 凄まじい閃光と轟音!


 ――――――。



 うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。



 民衆の声は、ピアノの鍵盤(けんばん)を全部鳴らした不協和音のようだ。


 どうやら、ここまでが策略? 

 そう思わせるほどのタイミング……。


 俺は、奥歯をぎりぎりと強く嚙み合わせ、空をキュッと強く(にら)みつけた。



 このまま、ごった返した状況が進んでしまっては……。

 国は普通に崩壊する!


 スタジアム内は、煙に巻かれて(あわ)ただしく、ローリエを探すけれども、見当たらない。

 

 どこに行った――!


「キョウヤ殿……あれ」


 ――白のドレススカートを持ち、ゆっくりと歩く姿!


 何をしているのか? と思いきや……俺は、ローリエを追うのをやめた。


「ローリエさん。あんなところに」


 アンシアも、彼女の姿をじっと見守っていた。


「お願いします! みなさん落ち着いてください!」 


 ――――――――!


 ローリエは、積みあがった柱の残骸の上に立ち、声を張って存在を示した。


「みなさんのお気持ち読めました!」


 レースに包まれた手を胸元で合わせ、震えそうになる唇を閉め殺す。


 緊張し獣耳を引くつかせているが、バランスの良い振り子のような息使いが徐々にできるようになっていった。


「私たちにとって、これがきっと最後の試練になる。私も頑張りますだから……」


「だから、どうにかして……ぇっと」





 ――――――しょうがないな。


 経験不足だろうな、ローリエの言葉はここで途絶えて棒立ち。



「だから!」


「戦うことは、俺、いや俺たちに任せろよ!」



「キョウヤ!」


 柄には無いが、俺は叫んでいた。

 衝動的に叫びたいと思ったのだろう。


「ローリエ、一人で何でもすることはない!」


 スタジアム内は、完全に静まり返り、どんなに強風が吹こうと雷鳴が鳴り響こうと……民衆は黙って立っていた。


 そして、読心術へと変更。


 指示をするから、読心術をしてくれ。


 そして俺の考えを了承してくれるなら……。

 後に続けて復唱してくれ。


「分かったわ」


 ローリエは、少々の()を取って頷き、目線を民衆の方へ。



 ――――――――しゃきっと背筋を正した。



「みなさん、考えを聞いてください!」


 ――――――――!


「この状況が恐ろしいのは、私も同じです。ですが、負けてはいけません」


「策略の中に、今もいるのかもしれませんが、きっと大丈夫です」


「そこでですが……。ディレンの張り巡らせた結界の行方が分かりません」


「このままでは、どこにマグマが噴き出すのか……それを第1の危険として考えます」


 ――――――。


「でも、安心してください。結界の親元になっているのは、城内の鏡です」


「鏡が、火山と結界をつなげています」


 ――――――――。


「私はディレンが隠した結界を探します」


「だから、私を信頼して、ここで待っていてください」


「私の帰りを待っていてください。……以上です」


 ローリエは、堂々と言い切った。


 時には、息が上がり、止まりそうにもなった……だがそれ以上に真剣であった。


 王女として正しかった。


 それでいい、それでいいんだ。

 

 最初は、ポカンしていた民衆。


 しかし、第一声が飛び出すまでに時間はかからなかった。


「俺たちも協力するぜ!」


 ――――――民衆は動いた。


「任せろ! 今度は、俺たちが、ローリエ様の力になる番だ!」


 ――――――――!


 ローリエはとても意外そうな顔をしていて、今度はこっちがポカンとしている。


 今さらどうした。

 民衆を信頼していなかったのか?

 焦りを見せるローリエに目配せし、これが現実だと内声した。


「良かったな」


「はいぃ」


 民衆の雰囲気は一変して、行進曲。


 ブラスバンドの音色と化した声色。


 兵士と亜人が手を組んで、肩を組み……厚くて熱い民衆の絆。


「みなさん……」





 ――――――LEVEL SERVICE――――――





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