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Exp.23『肉声』



 ポスターを描き。握手会。写真撮影会、ファンクラブ?


 知名度もアップしてきた。

 いや、アップし過ぎるんだよな……。


 一人、演説内容を暗記するローリエを横目にそう思った。

 一生懸命なところ、嫌いじゃない。


「いよいよ明日だな」


「そうですね」


 俺たちは、城の中で演説の準備をしていた。

 

 言葉を繰り返し読み、当日の流れの確認、衣装の最終チェックと大忙しである。

 街人から、メイドを募集し城の一斉掃除も行われて、アンシアも参加。

 今頃、どこを掃除しているのやら?


 一方、街は、祭りの準備で騒がしい。

 ティレンテ市街からも集まってきてくれて、スラムとも久々に面会をしたところだ。


「こんなに、楽しいのは、生まれて初めてかもしれないわ」


「良かったな」


「キョウヤのおかげね」


「ローリエ、いや、ローリエ様のお力でしょう」


「急に何? ローリエでいいのよ」


 ――ガチャ。


「ローリエ様、昼食にゃ」


 タキシード姿のケーシーがそこにはいた。


 「似合ってるわ」


「そうですにゃ?」


 満更でもなさそうだ。

 それにしても、蝶ネクタイが良く似合う。

 悪くないな


「キョウヤ殿は?」


「……いいと、思うぞ」


「はいにゃ!」


 白い八重歯が見えるほどの笑み。


 ケーシーがここまで(まぶ)しいとは……。


「私も昼食後は、ドレスに着替えるのよ。キョウヤ、感想を待ってるわ」


 妖艶(ようえん)なローリアの表情には、なんかこうグッとくるものがあるが……。


「何かしら、キョウヤ」


「いいや、外回りに行ってくる」

 

 俺は、部屋を後にした。

 アンシアを、誘っとくか。






 ――――――LEVEL SERVICE――――――






 街は(いろど)られ、タペストリーやランプがぶら下がっている。

 この街には、たくさんの店があったのだとビックリだ。


 武器屋、防具屋、パン屋、カフェ、食料屋、美容系、旅行屋。


 アンシアは隣をルンルンでスキップしている。


「楽しいか?」


「はい、とってもです」


 アンシアも街の人気者で、多くの出店から味見を頼まれたり、看板の文字のフォントやら、アイデアを求められていた。


 とても素直に、全てを真剣に考えている姿は微笑(ほほえ)ましい。


「アンシアちゃん、ちょっとこっち来てぇ~」


「行ってきますね。キョウヤさん」


「行ってこい」


 俺は、その間、空を見たり、近くをブラブラするのだが……。


「おーい、おーい、大変だ!」


「キョウヤ様、キョウヤ様」


 息を切らした1人の兵士が俺の(もと)へ走ってきたのだ。


「どうした?」


「スタジアムに来てもらえませんか、助けてください」


 ――――――!


「分かった行こうか」







 ――――――LEVEL SERVICE――――――






「これは……ゴブリンか」


 キュエェエエエエエエエエエエエエエエエエエ


 ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 スタジアムにはゴブリンが大量発生!


「いつから」


「昨日とかは、数体で……」


「とにかく、退治するための人手が足りなくて! 助けてください」


「――――――そうか」


「え?」


 ガタッ!


 ズドーン!


 スタジアムの外壁が崩れた。


 うわああああああああああああ。


 兵士もゴブリンもあたふたしていた。


「大変だな」


「はい、だから早くお願いします」


「スタジアムの安全設備も間に合っていないのか」


「すみません。石材とか塗料とかが足りなくて……」


 ここだけでも、旧帝国の維持を見せたいということで、俺はノータッチだったのだ……。


「なかなか、ボロボロだな……」


「はい……。って! なぜ、笑っているんですか? キョウヤ様、緊急事態ですよ」


「すまん、すまん。やっとレベル上げ代行サービスができそうでな」


 ――――――?


「みんな、下がってろ!」


「キョウヤ様だ。キョウヤ様!」


 すると、兵士達たちは(すき)を見つけては、スタジアムの外側に散らばり、中心はゴブリンが占拠(せんきょ)している状態。


 ――――――!


「キョウヤ様!」


 俺は、ゴブリンの集団へと突っ込んだ。


 短剣を抜き出して、思いっきり素振り!

 弱風を起こす。


「レベル5! 風」


 ゴブリン、すみません。

 風が一回転して、ゴブリンを吹き飛ばす!



 ――――――。



 キュエェエエエエエエエエエエエエエエエエエ。



 ――――――。



 砂をつかみ取り、ピッチャーの投球。


「レベル6! 土砂」


 

 ズダダダダダダダッダダダダダダッダ。



 マシンガンのように、放つ。



「悪いけど、お前たちを追い帰させてもらう」



 ――後ろ!



 ギュエキュエェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!



「アンシアを置いていかないでください。不安になりました!」



「芸術魔法! 花火」



  ――――――。



  ――――――パーン!



 俺と数体のゴブリンの間で破裂!


「アンシア!」


「はい!」


回復魔法(ヒール)、届けぇ~ええええええ」



 ――――――――――受け取った!



 追い打ちを仕掛けるゴブリンは飛び上がり、俺は地面にしゃがむ。


()ぎ払う!」


 これも空振り?


「風、レベル10」


 竜巻の発生!


 ゴブリンたちは、巻き上げられて、大空に捨てられた。

 あとは……重力に従って、ボトボトと落下。


 そして、スタジアムの外に逃げ帰っていったのだった。



 ――――――――――――――。



 うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


「すげー」


「やるな」


「キョウヤ様は違う!」


 アンシアは、ホッとした様子でいる。


「ゴブリンを殺さなかった……だと」


 周りの兵士が驚きながら近づいてきた。


「ゴブリンがここに来たことに関しては、正当な理由がはっきりしていて、そこまで緊急ではない」


殲滅(せんめつ)させるなんて野蛮(やばん)なことはできない」


「そうだよな、アンシア!」


「その通りです。キョウヤさん!」


 大きく手を振るアンシア。


 遠くにいたとしてもコミュニケーション。

 俺は、それが一番嬉しかった。


「しかし、どうされましょうか」


スタジアムの姿はボロボロのまま変わらないのだ。



 ――――――――――――。



「大丈夫ですかにゃ、スタジアムですごい音がしたにゃ」


「どしたかぁ~」


 ギブロス、ルポール、ケーシー、そしてローリエもやってきた。


「スタジアムが……にゃ」


「あら、あら、どうしましょうかしら」


「キョウヤさんにいい考えがあるんだって。ねっ」


「あ~そうだ」


 しゃがんでいる俺は、目をつぶり、大きく息を吸う。


 アンシアの手から光。


体力魔法(スタミナ・オーブ)


 そして、その光は――――――俺の力になる。


「スタジアムに……レベル77(なな なな)を与える」


 静かに唱えた。


 すると、スタジアム全体は、神秘的な泡で包まれる。


 スタジアムは元の形には戻らない。

 しかしきれいに浄化し、現状態を、長持ちさせることはできる。


 ――――――。


「す、すごいわ」


「本当にゃ」


「偉大だ」


「これは、記事にしないと」



 ――――――。



 ――――――ピンッ。



 泡がはじけて、レベル上げ代行は終了。


 フラッ――。

 俺はアンシアを抱えた。


「どうですか……」


「すごいぞ、アンシア」


「なんだ、この力の使い方は!」


 うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。


 復興だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ。


 スタジアムに、肉声が帰って来た瞬間だった。


 きっと明日も、国民の力強い、肉声に包まれるだろうな。

 俺は、すごく楽しみになった。




――――――LEVEL SERVICE――――――



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