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Exp.20『足音が響いた』



「空気結界レベル、はちじゅう(80)!」


 腕を大きく一回転させ、空気を物理的につかみ取り、



 ――! 



 鏡を囲うように、結界を張った。


 吹き出すマグマと激突!


 ぐっぐぐぐぐぐぐぐ!


 鏡から炎、マグマが吹き出している。

 火山の噴火そのものだ!


 風船が膨らむように、結界はどんどん外に押し出される。


 熱い鉄球を抱え込んでいるようだっ!




 ぐわわわわああああああうううううううううう!




 俺は、歯を食いしばる! 口から血が垂れる。



 ぐっぐぐぐぐぐぐぐ!



 (おさ)()むために、レベルを徐々(じょじょ)に80、81、82とあげて……いる。


 吹き飛ばされる――。


 しかし、俺がここで、諦めたら……。



「負けるかぁああああああああああああああああああああああああああああああ」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっと音を立てる炎。


 パキリ! ピシリ、ピシリ!


 炎がプシュッーーっと結界の穴から吹き出した。


 ――!


 限界が近い!



 ぐわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。



 ――――――――――――。



 バリリリリリリリリッンッ!



「キョウヤ!」


「キョウヤさーーーーん」



「くっそ! はっああああああああああああああああああああああああ」



 ――――――――!


「ラストだぁあああああああああああ!」


  

 ――――――――――――――! 




 シャーン!




 ――――――――――――。



 散り散り(ちりぢり)に割れる結界。


 不規則な破片が飛び散り、キラキラと輝いていて、


 一方で、出されたマグマは押し返すことに成功したのだった。


 俺は、反動で吹っ飛んだ。


回復魔法(ヒール)


 アンシアは、ダメージを軽減させるために、俺が壁に激突する直前、タイミングよく放った。


 ――――――。


 ハー、ハー、ハー、ハー。


「大丈夫ですか?」


「ああ、お陰さまでな」


 走ってきたアンシアとローリエが寄り添てくれた。


 しかし、目眩(めまい)倦怠(けんたい)感には(あらが)えない。


 そのため、一度、立ち上がったが、フラついてしまい、その場でもう一度、座った。


 マグマのレベル? 


「自然の驚異は計り知れないな」


 そんな独り言を(つぶや)いた。






 ――――――LEVEL SERVICE――――――





 城内に被害はでていない……みたいだな。


 それにしても、この鏡は……いったい。


「キョウヤ、鏡を割るか?」


 ギブロスは、拳を握りしめている。


「いや、待ってくれ」


「お、おう」


「この鏡……」


 俺はもう一度、鏡に触れる。……個体である。


 ……。


「もしかすると、この鏡から、ラテーラ火山へと入山しているのではないかしら」


 俺も同じ考えだ。


 ローリエは、ゆっくりと歩き、鏡に触れた。


 この火山の中で、どれだけの多くの者が……。


「強制的に、鏡に放り込まれて、奴隷労働をさせられていたということか……」


 ギブロスも唖然(あぜん)としていた。


 たぶん、ちょうどマグマが満ちるのは、この時間帯。


 夕方から翌昼までの命ということになる。






 ――――――LEVEL SERVICE――――――






 その後、アンシアとローリエを亜人居住区へ。

 途中まで一緒に帰り、俺はラテーラ火山に向かった。


 ラテーラ火山には、何か見えないバリアのようなものが張ってあり、どうやら、陸地ルートからは入れないらしい。


 バリアがあることで、奴隷が抜け出せないってことか。


「鏡ルートのみということか」



 ――――鈴音!


 誰かが俺を。


 十字架……。



 首にさげ、胸に当たるセレーネの十字架。



 反応はそれ以上なかった。





――――――LEVEL SERVICE――――――





「今さら信用できるか」


「このまま、兵士どもをぶちのめす!」


「落ち着いて、皆さん、落ち着いてください」


 俺が、亜人居住区に帰ると不穏(ふおん)な空気が流れていた。


「どうした!」


「キョウヤ」


 ローリエが、困った様子で駆け寄ってきた。


「キョウヤお前、兵士たちにお金でつられたわけじゃないだろうな」


「なにを言っている」


「今日も、このありさまだ!」


「ディレンか!」


「違う、めちゃくちゃにされたんだ。兵士どもの腹いせか」


「ケガは無いか……」


「それは、アンシアが手当してくれた」


 ……。


「そうか……すまない。俺の読みが甘かった」


「キョウヤを責めないで、私に、この私に責任が」


「ローリエ、そんなことはない」


「おいおい、やり返しに行こうぜ」


「もう一回、ビビらせないと、亜人の底力、分からないらしいな!」


 ここで、全てが壊れるのは、もったいない。


 だから、奥の手というか、ここで言うべきだろう!

 

「みんな、聞いてくれ」


 ――!


 俺は、手を挙げた。


「俺は、ここにいらっしゃる、ローリエをこの国の女王にして見せる」


 ど、どうだ……。


「俺は、本気だ」


「急に何を言っている。そんなことが叶うわけないじゃないか」


「まさか、兵や帝国の中心と、今さら仲良くしろっていうんじゃないだろうな」


「レベルを上げてくれ、そうしたら仕返しができる」


 やはり、俺はまだまだ、亜人の集団には溶け切れていない。

 よそ者であろうか。


 やーやーと抗議の声が激しい!


 レベル……。


「黙るにゃ!」


 ケーシー!


「私たちが、ローリエ様やキョウヤ殿を信じなくてどうするにゃ」


「みんなの気持ちは十分に分かるにゃ。だけど、このままじゃダメにゃ」


「だから、私もローリエ様を推薦するにゃ」



 ――――――。



「ケーシー。ありがとう」


「ちょっと、待ってよ、キョウヤ」


 ローリエにとっては、突然のことで、俺の顔をみて、目を大きく開いた。


 動揺しドキッとしている。


 急に悪いな……。


「ええ……」


 ローリエは、女王になる(うつわ)を持っている。

 俺は信じている。

 きっとケーシーも。


 だから……。


「ちょっと考えさせてくださいわ」


「そうだよな」





 ――――――LEVEL SERVICE――――――





「私、あのとき、はいって言いたかった」


「だけど、言えなかった」


「また、私は宙ぶらりん状態」


 ローリエは、体育座りをして、足首からをスッと太ももにかけて、指でなぞった。

 寂しげな様子は、どこを見ているだろうか。

 目がうつむき疲れている。


「どうしました、です」


「アンシア……」


「何でも話すといいですよ」


「奴隷からの成り上がりの、私が何でも聞きますです」


 二人は、建物近く、木の下に座った。


「実は、亜人、猫又族の女王って、生まれた時から呼ばれてきたの」


「それで、最初は良かったのチヤホヤされて、楽できて」


「でも、違ったわ。ただ担ぎ上げられているだけで」


「見られたり、ときに睨まれたり……」


「私は珍しい生き物。誰とも結局、分かりあえることはできないの、やっぱり」


「だから、リーダーとか分からない」


「なるほどです。いきなり押し付けられたり、あいつは楽しているって思われるの、ムカつくですよね」


「そうなのよ、まったくだわ。……でもさ」


「だからといって、私は、自分のことが分からない。道を定めてもらわないと分からない」


「どうすれば、いいかしら」


 ――――――。


 キョウヤさんだったら、どう返しますかな……。


「アンシア?」


「ちょっと待ってです、データの参照中です……」


「アンシっ」


「よし、決まったです!」


「一言で、ローリエさんの答えを返せます」


「え?」


「キョウヤさんが来た時、嬉しかった、会いたかった、って言ってたですよね」


「そうですわ」


「ローリエさんは、どうしてそんな気持ちになったのです?」


「……革命に、憧れて、私もああなりたいって。何かと反対の立場に立って、不条理をひっくり返したいって思ったのですわ」


「それに……これ以上、亜人のみなさんが辛い思いして欲しくないとか、思ったから……」


「うんうん、いいじゃないですか! それって、ローリエさんが、女王でなければ、湧いてこなかった感情ですか?」


「そんなことないわ!」


「私は一人の亜人として、この状況を変えたくて」


「素晴らしいです」


「キョウヤさんは、きっとそういうローリエさんを見抜いたんです」


「でも、私、リーダーとか、女王でなくても、今の情勢を変えることができますわ」


「――! 出ましたね」


「なにがです?」


「自分の道、今、敷きましたです。ローリエさんが、やりたいことです」


「女王でなくてもできるってところです」


「……はい」


「だったら、女王になってもできるです」


「でも、私が王女をやらなくても」


「結構、自分の道、定まっているですな」


「ずばり、亜人のみなさんは、あなたが良いのだと思います」


「あなたの、行動や言葉、王女だからやるべきこと……ではないのが、ローリエさんの素晴らしい才能です。女王でなくても、信頼できる、後ろをついていっても安心する」


「だったら、女王にローリエさんがなってくれたら、民衆はどれだけ心強いことか、です」


「さて、さて、何か言い残したことはあるです?」


「無いわ、アンシア……」


「元気と勇気が出たわ」


「それは、良かったです」


「ところで、アンシアは、キョウヤから何を学んだのですの?」


「そうですね、回復術、戦闘技術、体力基礎、言語術、モンスターの弱点、食べれる草、食べられない……」


「たくさんあるのね、アンシア」


「あ、でも強いて言うならですね。『弱い者の味方』です」


「キョウヤさんは、いつだって、自分の身を(かえり)みず、闘うんです。立場の弱い人のところに現れて、かっこよく闘うんです。そして一人で疲れてしまうんです」


「だから、私はキョウヤさんの隣で、回復や癒しを与える義務があるです」


「ローリエさん、アンシアの仕事を取ったら困りますです」


「あ、ああああ、それは、無理ね」


「はい?」


「だって、私だってキョウヤさんを離したくないですわ」


 その後、2人はケーシーを誘い、深夜のトークで盛り上がった。


 そして、作戦を一つだけ、練るのであった。




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