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Exp.15『夜襲を迎え撃て!』



 (はりつけ)にされていた、亜人男性(あじんだんせい)は助かった。


 地面に叩きつけられるところを素早くキャッチすることで激突は阻止。


 しかし、亜人男性の体は、血管に沿って蚯蚓腫(ミミズばれ)れを起こしていた。

 血管の沸騰……だったか。


「応急処置(しょち)。レベル8を与える」


 俺は亜人男性の心臓に手を当て、レベルを分け与え耐久値をプラスした。


 あとは、アンシアの回復魔法を受ければ助かる。


「キョウヤさん!」


「キョウヤ殿、大丈夫ですかにゃ!」


 ――!


 アンシアはもちろん、(あせ)った様子でケーシーも近づいてきた。


「俺は、一応(いちおう)なんとかな」


「だが、4人は、すでに……」


 ……俺の責任は重い。ディレンは、きっと俺を待っていたからだ。


 俺がここに現れるまで、どれだけの人数が殺されたのだろうか……。


「ありがとう、ごほっごほっ」


 亜人男性は、力を出してお礼を言ってきた。


「まだ……しゃべるな」


「アンシア、頼む」


「はい」


 今度は、アンシアが回復魔法で治療。

 男性亜人の顔色は良くなり呼吸が整った。


「す、すごい、すごいにゃ」


「うおおおおおおおおおおおおおおお、力がみなぎる」


 ケーシーを始めとして歓声(かんせい)()き起こった。


「それにしても、キョウヤと言ったか? どういう力なのだ?」


 ――! ……。


 亜人男性は、(ひげ)を呼吸で()らしながら(たず)ねてきた。


「……経験値を、分け与える力」


 もっと早くこの街についていれば。


「キョウヤさん。やはりあなたは、そうでしたのね」


 ――!


 ローリエは、妖精のように(ささや)いた。

 

「革命の天使なのではないでしょうか?」


 ――――。


「それは、昔のことだ。俺は到着が遅かった……」


 今さら来ても、意味がないじゃないか。


 すると、ローリエはフフッと笑った。


「そんなことはないですよ。自分を責めてはいけません。あなたは今、確かに、この土地に来てくれたのですからね」


「私は、ずっと待っておりました」


 ――――――!


「ローリエ様は、読心術が使えるにゃ」


 ローリエはすっと手を伸ばし、俺の手を取ってきた。


 白肌は、とてもひんやりと(つや)やかであった。


「さて、そうと決まりましたら、サクセンカイギ? ですわ!」


「まずは、キョウヤ……の話を聞かせてください」


「分かった」


 ……!


「ローリエ様、動かれるのですか?」


「もう怖いものはないです。キョウヤ、あなたが、来てくれたからですね」





――――――LEVEL SERVICE――――――





 準備を始めたのは、その日。急ピッチで備えなければいけない件があるのだ。


「作戦がある、みんな聞いて欲しい」


 聞き耳を立てられないように、だけどはっきりと声を出した。


 日が傾き始めたが、まだまだ間に合う!


 俺たちは、亜人収容所(あじんしゅうようじょ)1に集まるが、全員ではない。

 あまりに派手に集まると、作戦がばれてしまう。それだと本末転倒。


 俺が1から6部屋まで、ローリエを連れて話しに向かう。

 

 情報戦(じょうほうせん)が怖いということは、俺が1番分かっている。

 レベルで誤魔化(ごまか)して、不意をつくことを、普通にやってのけた過去がある。

 って……今もか。


「さて、今からしたいことは1つ。夜襲(やしゅう)に備えることだ」


「今夜でも、とにかく早く、騒ぎを聞きつけて、ユグルドは攻撃を仕掛けにくるかもしれない」


「ディレンとユグルドを相手して分かった……奴らは強い」


「ケーシーに、聞いたところユグルドの方が来襲する回数が多く、確率的にもそう思われる」


「だから、みんなと共有したいことは、ユグルドへの対策だ」


 部屋は、最初、ざわつきを見せたが、ローリエの今までにない真剣な姿を見た亜人たちは、素直に話を聞いてくれた。


「1から6全ての部屋を空気結界でバリアする。ユグルドは俺が引き付けて戦う、力に自身のある亜人たちは、残党(ざんとう)と戦ってほしい」


「了解だ、任せとけ」


 主に、男性亜人が声をあげてくれた。


「ありがとう」


「俺が、ユグルド目掛(めが)けて先陣を行く」


「みんなは、後に続いてくれ」


「怖いだろが、大丈夫だ」


「一応、兵士の平均レベルは取ってある。これは、俺が戦った6人のサンプルだが」


「これによると、平均は20レベル」


「ぜんぜん俺たちより強いじゃんか」


 不安で、士気(しき)()がりそうになるが、士気をあげるのは手慣(てな)れたものだ。


「空気結界を提供(ていきょう)するし、レベルを見合(みあ)った分だけ、分け与える」


「レベルアップ強くなるってことか?」


「そうだな」


「しかし自惚(うぬぼ)れて、油断はするな。結局は自分の技術と知恵が勝負のかけ引きとなる」


「よし、了解した。分かった、任せろい」


「私はどうしますですか?」


 アンシアは、冷静に手をあげた。


「そうだな、アンシアはまずは、フラッシュ魔法を(たた)きこんでやれ」


「うん、叩きこむです」


「それで、です?」


救護(きゅうご)係だ」


「アンシアの他に、回復系の魔法を使える者はいるか?」


 すると、ぱらぱらと手が上がった。


「よし、()りる」


「でも、兵士の方が多くて、回復が、間に合うかにゃ」


「そう来ると思った。ケーシー」


「戦いは2段式で行う」


「?」


「例えば、30人の兵がいると、仮定しよう。そうするとまずは15人で攻める。その間、残りの兵は待機(たいき)。グループに分けて、時間制を採用(さいよう)する」


「兵士15人と15人を交代する合図は、アンシアのフラッシュ魔法で伝える」


「フラッシュ魔法が炸裂(さくれつ)したら、戦線(せんせん)から離脱する15人は全力で下がり、やる気に()(あふ)れている待機(たいき)グループ15人は、全力で戦線に突っ込め」


「なるほどにゃ」


「待機中に、栄養補給、治療ということにゃ。ローテーションにゃ」


「そして、情報戦……」


「それは、ローリエ、あなたに任せます」


「はい!」


「城にローリエ様を(もぐ)()ませるんですかにゃ?」


「違うぞ」


「分かりましたわキョウヤ! 油断している相手兵士の心の中を読んだらいいのでしょう」


 ローリエは、読心術で、説明の時間を(はぶ)いてくれた。

 言葉にしなくても伝わることは、意外と便利だな。


「戦闘中に油断するものがいたら、即座(そくざ)にそいつの心を読んでくれ」


承知(しょうち)いたしましたわ」


 よし、作戦決行だ。


「そして、俺は空気結界を()(めぐ)らせた」





――――――LEVEL SERVICE――――――





 集まった兵士は50人。


 今回は、25人の先攻と20人の後攻。5人は予備部隊。


 後方には、救護と食事部隊。


 ローリエ、ケーシーの配置は屋根上。


 アンシアは、上からのフラッシュ魔法と救護。




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