表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/57

Exp.13『来襲』



 荒地を越えた先が、目的地のトリアトン帝国とラテーラ火山。

 この地には火山灰が多く堆積(たいせき)していて、黒っぽい土.

 太陽の照り返しで、足元がいつも以上に高温であることは気のせいではないはず。


 スラムの意志を引き継いで、ここまで来ているわけだが。

 暑さで、思考が溶けだしそうだ。


 モンスターと軽く戦闘をしながら着実に近づいているのだが。

 遠い! 蜃気楼にやられているのか?


「アンシア、しっかり水分補給しろよ」


「はいです。キョウヤさん」


 アンシアもぐっしょりと服を濡らし、それでも乱さずきれいに着こなしている。


「女の子ですから」


「急になんだよ……」


 景色が変わり映えしないと……道に迷った気になる。

 俺は、(ひたい)の汗をクッと(ぬぐ)った。


 昨日は、野宿(のじゅく)であり、体力的な回復は認められなかった。

 回復術士の出番?

 残念ながらアンシアは、治療的な術式は使えても、補給的な術式は習得できていない。

 

 日差しが通常の何倍もきつく感じる。



「おい、()まれ!」


 ……最悪が始まる予感がした。


 そこには、銀色の(よろい)を着た騎士の姿。

 馬から降りて、目の前で仁王立ちしている。


 四角い顔で眉間の堀は深い、筋肉質な男。

 騎士の手にはビッグランスが(にぎ)られ……ギリリと、金属を強く握りしめる音が聞こえる。


 ――鋭い殺意……。


「これって、新手(あらて)のモンスターですか? はぁはぁ」


「違うぞ、アンシア」


 アンシアをじりじりと隠した。


 ――!


 がっちりとした鎧を装着していない他は、部下であろう。

 兵士6人はロングソードを(かま)えて、剣先をこちらに向けている。


「お前らは、盗賊(とうぞく)か?」


「奴隷だよな? 指名手配犯だよな?……やっと見つけた」


 男は、ニタリと笑い、猛禽類(もうきんるい)の眼力を向けてきた。

 なんとも、暑苦しい。


「質問に答えて欲しいのだが」


「レベル『1』がここを通るのは(めずら)しくてさ……声かけてしまった」


 取り巻きの兵士らは、まるで、俺の不運をあざけ笑っているようだ。


 おおよそ検討はついた。

 俺が復讐(ふくしゅう)したことを根に持っている残党らしい。


 アンシアは、俺の後ろでひくひくしている。


 こんなところで、襲われることになるとは。

 手っ取り早く、片づけることができればいいのだが……。


 俺は短剣に手を掛けた体制で警戒。


 「余裕な顔しているな、レベル1。お前の状況を今から痛みで分からせてやる!」


 絶対に戦闘は避けたい。


 しかし、じりじりと詰め寄る兵士ら。


 目元は金属帽の陰で隠れている。

 ……どこを今見ているのやら。


 俺は、息を殺し、様子を(うかが)うだけで、安全な立ち回りを選ぶ。

 ゆっくり、ゆっくり後退り……。



 ――――――――――。



 ――来るのか!


 ――こいつ速い!


「レベル1のお前が」


 ――ズン!


「よっぽど卑劣(ひれつ)卑怯(ひきょう)な作戦を立てて!」

 

 ――ズン!


「ドゥゲールを滅ぼしたんだろうが!」


 ギュンッ! ランスが突き付けられるが、テンポよく回避。


「お前と戦う理由はない」


 俺は、アンシアを抱えて、距離を取った。


「うるせえええええ」


 六人の兵士も襲い掛かってくる!


「―――――――――キャッ!」


「アンシア!」


 俺は、右手にそよ風を感じた。


 ……しょうがない、これも手段だ。


 ――!


「レベル10を風に!」


 片手を兵士に向け、風を射出!


 ―――――――――――――――ビュン!


 散り散りになって落下した兵士。


「アンシアに触るな!」


 俺は、低く冷たい声で威嚇した。


 ――!


「お前の相手は、このユグルド様だあああああ!」


 ――――――ギュン!


 馬鹿デカい巨体のリーダーの名前はユグルドと言うのか……知らん!


 ランスを避けて、風圧を利用し、ユグルドに風をぶつける。


 後ろに数メートル、ユグルドは滑るが、途中で止まった。


「とある指名手配犯に似てるな、その風の力!」


 ――!


 俺は、もう一度アンシアを()きかかえて、横に大きく飛んだ。

 体勢を整えたい――が!


「ビッグランス!」


 ――グッ!


 ガードした左腕に、ランスの側面がぶち当たる。


「キョウヤさん!」


「大丈夫だ」


 俺は、左腕を抑えて、歯を食いしばった。


「ちなみに処刑執行(しっこう)人は、俺、ユグルド様だ。お前を、地獄にご招待(しょうたい)!」


 ――!


「なにも、聞かないんだな」


 俺は、短剣をいつでも抜ける状態で、ユグルドと間を取って警戒。


「犯罪者は殺すようにと……同盟だからなドゥゲールは」


 ――!


「……キョウヤさん」


「大丈夫だ」


 俺は、小バカにした表情、そして歯を食いしばった。


「はいです」


 自信を持って俺を信頼してくれる。

 アンシアのために、早く終わらせる!


 俺は、短剣を抜いた。

 短剣は、ユグルドの首元を映す。


「突っ込め、お前たち!」


 すると、また兵士が同時に襲ってきた。

 1人当たりのレベルは20か。


 空気踏み台。

 後ろに素早(すばや)く宙返りで下がった。


「もう一度、吹き飛ばされろ!」


 短剣を素振りし、人工的に風を起こす。


「風、レベル23!」


 兵士を、空中に巻き上げて、地面に(たた)きつけた。


「横に人影!」


「フッ! 首、もらう!」


 ――――ギャアーン!


 ユグルドのランスを、短剣で防い……だが、弾き飛ばされ、地面に、アンバランスな形で不時着(ふじちゃく)


「もらった、死ねええええ」


 ユグルドはレベル43!


 ユグルドは、ランスを振り下ろし俺を潰しにかかる!


 ――ガチャリ。


 俺は、ユグルドの攻撃を短剣で踏みとどまらせて……押し……返した。


 手にしびれが残る……。 

 気にしている場合ではない!


 俺は、ユグルドとの間合いを詰めて、攻撃!


「そんな、短剣で、俺も舐められたもんだなぁあああ」


 鎧を装着しながら、ここまで速いとは。


「キョウヤさん!」


 アンシアの必死さが、俺の瞳に残る。

 

 任せろ。瞬殺で終わらせるから。


 ビュン!


 俺は、勢い良く地面を蹴った。


「邪魔だぁ」


 ユグルドへの攻撃を邪魔する兵士6人を一振(ひとふり)りで、斬り乱し、バタバタと倒す。


「きさま! レベル1のぶんざいで!」


 鬼のような形相(ぎょうそう)を浮かべ突き刺さしにかかるユグルド!


 しかし俺は、タイミングを見計らい、ランスを滑るように、シュィーンと受け流し、そのまま後方に回る。


 金属と金属がぶつかることで、火花が散り、短剣の一部は焦げた。


 そして――――斬りにかかる。


 ユグルドも体勢を整えて反撃するが……。


 俺の本気を知らないらしいな。

 ――まったく。


 斬る動作は、フェイントとして処理。


 俺は、金属音を(うな)らせながらユグルドの攻撃を再び受け流し、暇を持て(あま)している左手で、ユグルドの顔面を思いっきり殴った! 



 ―――――――――――――――!



 「ぐはぁっ!」


 ユグルドはよろよろと(つまづ)(ころ)がった。


 ……。


「もう()れ! 二度と俺たちに関わるな!」




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 ユルグドの集団は引いていった。


 俺は、すぐさまアンシアの元に、戻った。


「アンシア、大丈夫だったか」


 するとコクリと(うなず)き瞳を(こす)っている。


「ごめん、怖い思いをさせたな、どうやら俺はまだまだ犯罪人らしいな」


 アンシアは首を振って否定している。


「そんなこと、無いです」


 俺はあの頃のフードをスッと(かぶ)った。


「歩き始めようか……」


「ちょっとケガしてるです。キョウヤさん」


「これぐらいなんとも」


回復魔法(ヒール)


 俺の右腕が光り輝き、痛みが()えていく。

 それは、すごく優しかった。



 ……。



「ありがとうな、アンシア」





「ちょっと、ちょっと、そこの君ら! 大丈夫にゃ?」


「誰だ!」


 二人の前に現れたのは獣耳(けものみみ)の女性だった。


「もしかしてだけど、トリアトン帝国に行きたいならば、こっち来るべしにゃ」






――――――LEVEL SERVICE――――――








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ