Exp.12『新しい朝』
第1.5章は、これで終了です。
この死体はどうするか……。
俺は、愛想笑いするしかなかった。
ずんだれた、だらしないオークの死体が、手つかずの汚い状態であるからだ。
このままでは、死体から疫病が生まれる。
スラムと相談かな。
俺はとりあえず、大穴にレベル80の空気結界を詰め込むことで応急処置を施した。
―――――――――――――――。
俺が、地下水道から抜け出す頃には、あたりはもう真っ暗。
さっきまでアンシアのランプ魔法のおかげで、明るい内部にいたために、水路から出ての暗闇には、目が慣れていない。
――どぅわ!
突撃の衝撃!
「キョウヤさん。生きてるです! 生きますです」
アンシアに抱き着つかれたらしい。
「生きてるよ。当たり前だ」
俺は、アンシアのにょんと伸びたサイドアップテールで、本物かどうか確認。
それが、なければ、投げ捨てる予定。
「大丈夫だ」
その後、目をつぶったり、開いたりを繰り返して、暗闇に慣れてきたところ。
スラムも含め、街の住民も10人ほどが、こちらに近づいてきた。
「冒険者〜」
「ありがとうございました」
「いえいえ、思ったより速く駆逐できました」
俺が水路で戦ってる間、地上でも戦闘を頑張っていたようで、ゴブリンが倒れている。
「これで、ゴブリンの直接による感染症は徐々に消えていく……と思うが。ここの水を5か月は飲まない方がいいな」
「まだ水路の源泉が汚染されているし、オークを燃やさないと解決しない」
「そ、そうなのか」
俺の報告を受け取り、スラムは少々困った顔をした。
――――――――。
「水は、セレーネの街やアルフェ村から輸入するといい」
「同盟村として報告しておくよ」
「セレーネ街? セレーネ街……と言うのは」
「あの!」
今日一番の大声のスラムだった。
「はい、そうです」
アンシアは、静かにほほ笑んだ。
「実在……したんじゃな、天使様によって革命が起きて、平和な王国が取り戻せたと」
……天使様? 話が広がり過ぎだ。
するとアンシアは、にっこりと笑う。
「とにかく、水路の件は伝えたから、早めに清掃と建設した方がいいから……」
……。
「まぁ~明日から、空気の清浄と水路の壁の修復とか、手伝いに行くから安心してくれ」
「任せてくださいです」
そういって、俺たちはアルフェ村へと、帰路についた。
――――――LEVEL SERVICES――――――
帰り道。
「回復魔法、届いた」
俺は、ボッと言った。
俺からアンシアに話をふるのは初めてだったので、今さらだが緊張。
正直、いつ言おうか、タイミングに迷っていた。
だから、別に聞こえてなくてもいい。
「良かったです」
アンシアは、聞いていた。
横に並んで歩くアンシアは、満面の笑みを浮かべ、俺を見上げた。
「レベルが22から24になったのです」
「そうだな、オークがレベル40以上だったから、経験値がたくさんだったな」
「キョウヤさんは?」
「俺は、レベル1からレベル9になるほどの経験値を貰ったよ」
レベルが上がって、すごいと実感した今夜。
成長していることが目に見えるって大事なのかもしれないな。
俺は、レベルのことを怪訝していたのだが、嬉しくなることもあるのか……。
ふと、心の変化に気づいたのだった。
アンシア、ありがとうな。
助かったよ。
「アルフェ村に戻ったら、水を浴びないとな」
「なんで?」
「多分、俺たちゴブリンの臭いをまとっている」
「それでは、一緒に入るですか!」
「……ダメだ」
「えぇええええええええええ」
夜の草原。
レベル24の雄叫びに、ガサゴソ音を立て、モンスター達は、逃げたのだった。
ティレンテ市街復興の協力をし、ある程度のめどが立った頃、次の目標が決まった。
俺は十字架に手を合わせた。
「セレーネ。俺は、長旅にでるよ」
「ティレンテ市街のような場所が他にもあるから、助けにいきたい」
……。
「まだまだ未熟な私ですが、頑張ります」
アンシアも手を合わせていた。
「なんだ、アンシアまで」
「いいじゃないですか」
――――――――――――。
その後俺たちは、セレーネの街に顔を出し、
「結婚か」
と、からかいを受けたが、あいさつ周りを済ませた。
そしてティレンテ市街を統治するトリアトン帝国にゆっくりと向かうのであった。
――――――LEVEL SERVICE――――――
ご覧いただき、ありがとうございました。
第1.5章は、これで終了です。
第2章で、またお会いしましょう。ありがとうございました。




