Exp.10『汚染』
俺たちはコウゴウ草原を抜け出して、太陽が傾き始めたころ、アルフェ村で状況を理解した。
老人はスラムという名であり、コウゴウ草原近くのティレンテ市街の住人であること。
ティレンテ市街がゴブリンによって脅かされていて、助けを求めるために走っていると、コウゴウ草原でゴブリンに襲われたこと。
全てを踏まえた俺たちは、スラムに案内されてティレンテ市街に到着。
ティレンテ市街の建物は、ところどころ緑色に汚れており、地面もべちゃべちゃしている。
「おい、なんだこの生臭い獣臭は!」
俺は、袖で鼻と口を覆い、アンシアも同じような行動をとった。。
「ゴブリンですよ。わしは、もう慣れましたよ」
「す、すごいな」
……まずは空気を清浄しないと。
レベル30。俺は空気結界で一時的に空気を澄ませた。
街を歩くと糞や吐しゃ物が鎮座し、静まり返り、2、3人程しかすれ違わなかった。
スラムを含めて、住人の皮膚色は悪く、貧弱である。
ゴブリンの撒き散らす感染症ぽいな……。
顎に手を当て推測する俺の様子を見て、アンシアはひらめいた顔で期待の目を向けてきた……。
しかしやっぱりきつい臭いであり、すぐに顔をうずめた。
アンシアの艶やかな金茶髪が、濁って変色して見えるのは、気のせいか?
「ここが、街の役所じゃ」
……なるほどな。
役所も他と変わらず、汚れて崩れかけている。
アンシアは、力が抜けてみたいで横でクターとしている。
絶対に地べたに座るなよ! 頼むぞアンシア。
すると、スラムはゆっくりと口を開いた。
「ダメそうでしょ。帰ってもいいですよ……ありがとうな」
錆びれた顔は、疲れきり、途方に暮れていた。
「……いや、話を聞こうか」
小さくつぶやいた。
――――――LEVEL SERVICE――――――
俺たちは、役所の5階。
応接間に招待され、四角いテーブルを囲い、椅子に腰かけた。
ここは、とても奇麗な部屋であり、街の様子を窓から眺めることができる。
建物の影には、ゴブリンが数匹うろちょろし、遊んでいるようにも警備しているようにも見える。
「管轄している国には相談したのか?」
「トリアトン帝国が、今は……無理だと。2か月は放置されておる」
「ギルドのクエスト依頼は?」
「どの冒険者も街に入った途端に汚れ仕事は嫌だと……」
……そうか。
「異変はいつから、ですか?」
「そうじゃの。ラテーラ火山の地殻変動……じゃろうか。あ~」
「それが起きてから、街は狂ってしまってなぁ。確か水が濁り始めてしまったあたりですな、ゴブリンが姿を現したのは……あ~」
「地殻変動……か」
「なにか、分かりますですか、キョウヤさん」
「さらには、ティレンテ市街では地震が……多くて、昨日だって一日に10回ほどで」
――地震!
……だったら、アルフェ村だって揺れを感じるはずの距離だろう……。
「……地下、水路が怪しいな」
もしかすると、地震の影響は、自然的ではなく、なにかが……?
「キョウヤさん、私は、住人に回復魔法をするといいですか?」
「そうだな……。だけど一時的な解決方法に過ぎないから」
「重傷者は何人だ」
「把握できていません……」
「そうか……」
回復魔法をするよりも、根本をどうにかしないとな。
多分、この街の水路とゴブリンの生息域が、地殻変動によってつながってしまった。
そして、この街は、食料が安定しているので、ゴブリンは市街に流れ、住人を襲ってこの地域をぶん捕ろうとしている。
「少しばかりだが、分かったよ」
「本当ですか」
「ああ」
「とにかく、時間がない」
――――――LEVEL SERVICE――――――




