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レベル1の落第生が異世界でレベル上げ代行サービス  作者: りっきー局長
第1.5章 トリアトン帝国(ティレンテ市街)編
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Exp.9『こいつは、怪物』



 アルフェ村を経由(けいゆ)して、木々が散らばるコウゴウ草原で模擬実践(もぎじっせん)を開始した。

 簡単に説明すると、回復魔法を当てる確率を上げる訓練である。


 草原に立った俺と大股で20歩ほど離れたところに立ったアンシア。


「よし、頑張りますね」


 アンシアは、ふんっと全身を(りき)ませた。


 コウゴウ草原は、低級モンスターのスライムやキュウリの形をした2足歩行(にそくほこう)のモンスターばかりが出現。


 レベル22あれば、安全である。


 ――しばらくすると、級モンスターたちが現れた。


 レベル1の俺に誘われたのだろう。


 俺達でもレベル1は倒せる、と言わんばかりの(うれ)しさを浮かべて、ノソノソと出現したのだ。


 シュバッ――――――――――――――!


 俺は短剣を抜刀(ばっとう)し斬りにかかった。


「アンシア! 俺たちはギルドメンバーではない。だから俺の位置を予測しながら回復魔法を撃てよ」


「そうでないと、当たらないから!」


「はい。キョウヤさん!」


 アンシアは金茶(きんちゃ)色の前髪を揺らし、一呼吸の後に術式を唱えた始めた。


 ギルドメンバー同士だと、誰に回復魔法(ヒール)を与えるのかを自動で追跡(ついせき)することができる。


 しかし、ギルドを組んでないとそうはいかない。


 作戦として回復(ヒール)ポイントを作り、そこだけに回復魔法(ヒール)を撃つ、といったものもあるが……。諸刃(もろは)(つるぎ)


 臨機応変(りんきおうへん)さに()けるのだ。


 俺は、敵を()わし、斬って、横に飛び、ジグザグに動いて見せた。


 うじゃうじゃ現れるモンスターを前に、体力を(いちじる)しく消耗(しょうもう)させる悪い戦い方である。


 しかし、アンシアの的に俺はならなければならない。


 ――!


 地を這うような魔法の軌道。

 アンシアの一発目は遠くに()れた……。


「あっごめんなさい!」


「大丈夫。もっと力を抜いて、(あせ)らなくていいから」


 きっと俺の足元の動作に合わせようとしたのだろう。


 ――おっとっ!


 二発目はクリア。


「アンシア! タイミングは悪くない。しかし俺の足元ではなくて、心臓部を把握してみてくれ」


「分かりました。キョウヤさん」




 ――――――LEVEL SERVICE――――――




 その後も訓練は続き、約50%の確率で魔法を届けることができるようになったアンシア。

 初めての模擬実践にしては、なかなかである。


「お疲れ様だ!」


「ありがとうございます! キョウヤさん」


 汗を輝かせ、笑顔のアンシア。そよそよと手を振りながら、こっちに走ってくる。


 俺も片手を挙げて答えようとするが……。


 この臭いは……。空気感が変わっ⁉



 ――!



「アンシア! 地面に()せろ!」


 全力で声を上げた。


 草原にいた黒い鳥はバサバサと慌てて飛び出し、驚いたアンシアは「ふがっ」と声を上げてその場に倒れた。


 ――俺はアンシアのいる方向に、短剣をまっすぐ投げつけた。


 ――――――グシャリ!


 ――クリーンヒット。


 そして、アンシアの元へダッシュ。



「アンシア、まだ伏せとけよ!」



 キィエエエエエエエエエエ!

 ゴブリンは、舌を出して(わめ)いた。


 ドゴッ!


 俺は地面に突き刺さった短剣を抜き、ゴブリンに蹴りを一発、そして斬首(ざんしゅ)


 ゴブリン2体を瞬殺(しゅんさつ)した。



「アンシア! 大丈夫か!」


「大丈夫です。キョウヤさん」


 アンシアは柔らかく微笑んだ。


 引き続き警戒するも、ゴブリンは……もういなさそうか……。


 冷たい風が異常なほど(ほほ)に染みる。


「なぜ、こんなところにゴブリンが……」


 ――ゴソッ!


 スッと(しげ)みに剣先を向けてアンシアを左手で()き寄せた。

 

 アンシアは「ふぎゃ」と反応。


「たす……けて……」


 ボロになった服を着た老人が肩から血を流して倒れた……。


 俺は、間違っても斬ってはいない。


 ――! 老人には、ひっかき傷がありゴブリンの被害であると推測(すいそく)した。


「アンシア、回復魔法(ヒール)


 アンシアにとってこの状況は、衝撃(しょうげき)的だったのだろう。

 ブルブルと震えていた。


 よって、俺の腰に張り付いたまま、指先だけでちょいちょいと回復魔法(ヒール)をかけた。



 キィエエエエエエエエエエ! キィエエエエエエエエエエ!



「レベル30!」


 俺は空気結界(けっかい)を張った。


 キュウィイイイン!


 すると、ゴブリンたちは、衝突(しょうとつ)し逃げていった。


 どうなっているんだ、いったい!

 本来ここにゴブリンは生息してはいけないはず……。


「どうしますか。キョウヤさん?」


「村に戻って事情を聞くか」


 俺は老人を背負った。




――――――LEVEL SERVICE――――――




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