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作者: みももも

 俺は確かに、オンラインRPG『オルト・バース』にログインしていたはずだ。

 このゲームは、高い自由度と壮大な世界観を売りにした新感覚フルダイブ型のゲームで、現実世界に絶望した者たちの移住先として検討されるほどに注目されているゲームでもあった。


 俺がこの世界に来てから、大体半年が経つ。

 基本的に、朝は8時頃に起床して、9時から13時ぐらいまで、システム開発の仕事をする。

 もちろんそれは、この世界の中でのことだ。

 仮想世界で目覚めて、仮想世界で朝食をとり、仮想世界で仕事をする。

 それで、午後の時間はアイテムを作ったりそれを売ったり、あるいは素材を集めるために街の外に出たりする。

 そして、夜になったら眠りにつく。そしてまた、次の朝が訪れる。

 ここまで行くと、俺にとってもはや世界は逆転していて、こちらがリアルといっても過言ではない。


 この半年で、現実世界(むこう)に戻ったのは、お盆休みで実家に帰らなくてはいけないとなったときだけだ。

 両親に「いやもう、二人が仮想世界(こっち)に来てよ」と言っても、さすがにそれは許されなかったので、重い体に鞭打って、久々に不便な世界を体感したものだ。

 街を移動していても魔物が現れない代わりに、魔法も使えないし、空を飛べないから地面を歩くしかない。

 確かにたまには良いかもしれないが、これが毎日となると、さすがによく生きていられるなとも思う。


 ちなみに、俺がこっちの世界にいる間、現実世界の体はコールドスリープされていたらしい。

 再会した両親が発した「あんたは変わらないね」の言葉が、重く突き刺さった気もしたが、よく考えたらその期間はまだ半年に満たなかった。

 つまり俺の見た目のことを言っていたのではなく、性格とか、そういう話をしていたんだろう。

 だけどいつか、年老い朽ち果てていく両親を、年に数日しか年をとらない俺が看取る……なんてこともあるのかもしれないな。


 閑話休題


 この世界には、当然だが、俺以外の多くの人が暮らしている。

 仕事仲間や、狩り仲間など。

 彼ら彼女らと、協力しながら少しずつこの世界を攻略しているはずだった。


 だというのに、目覚めたこの世界には、人の気配が一つも感じられなかった。


 俺の体も管理しているはずの、外界への連絡手段である、古めかしい固定電話は、色あせ、使い物にならなくなっていた。

「どういう……ことだ……?」

 こうして俺の意識が保たれている以上、向こうで俺が死んだというわけではなさそうだ。

 死後の世界が、たまたま俺の知っている世界と酷似していた……などという、ファンタジーなことを語るつもりもない。

「たまたま全員がログアウトしている……? いやまさか、そんなわけは……」

 念のために、ポケットから取り出したスマホ型のアイテムで『チャットボード』を確認することにした。


 もしかしたら、仲間から何か連絡が来ているか……

 あるいは、この世界を管理している会社から、通知でも届いているかもしれないのだが……


 藁にもすがるような気持ちで見たその画面には、ただ一言、記されていた。


『インターネットに接続されていません』

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