9 こけしで遊んだ
2本目です。
ストックとか無理でした。
「アリスが今何してるか分かる?」
シャワーを浴びた後、昼食を食べている途中に控えているメイドさんに聞いてみた。
「ええと、すみません。分かりません。」
「そっか、暇な時に私の部屋に来るように言っておいてくれる?」
「かしこまりました。」
とりあえず、専属にするにも旅に同行するにも、アリスの許可が無ければ始まらないだろう。
ご飯を食べ終えたところで、ノックが聞こえてメイドさんが入ってくる。できる秘書系メイドのリーズさんだ。
「アビゲイル様が来ております。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「あ、うん。その人私の付き人だから、次から許可取らなくてもいいよ。」
「はい、存じておりますが、アビゲイル様が入っていいのかどうか分からない、と仰っていましたので。」
「??」
メイドさんが部屋から出て直ぐにアビゲイルさんが入ってきた。
「し、失礼します!」
ああなるほど、どう見ても緊張してるね。
初めて握手会にきたファンみたいな心境なんだろうか。初々しくて可愛い。
「ロイス王国の迷宮都市のリストと、依頼されていた魔道具をお持ちしたです!」
「そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ。」
何が大丈夫かは知らないけどね。
あと魔道具!魔道具って言ったよね!もうできたのか、昨日頼んだばっかりなのに。
「えっと、迷宮都市への行き方についてや、各種手続きは、全て調べておいてありますので、私にお任せ下さいです。」
とても棒読みだし、原稿でも作ったのかな?
「それと、魔道具については、何か不具合等あれば仰ってください。作り直します。との事です。」
「うん、ありがとう。」
まぁそうだよね、できるだけ細かく指定したつもりだけど、ちゃんと出来ているかは分からない。実物を知っているのは私だけだし。
アリスにも試してみようと思ったけど、先に私が安全かどうか含めて確認した方が良さそう。うん。
とりあえず受け取って机に置く。
「アビー、今時間ある?」
「はい、お昼休憩の時間です!ご飯はもう食べましたので、時間あるです。」
「そっか、じゃあ少しお茶でも飲んでいきなよ。ほらそこ座って。」
「えっ、分かったです!」
「リーズさん、2人分お願いしていい?」
「かしこまりました。」
流石に私に会う度こんなに緊張されても困るし、距離を縮める時間が必要だよね。
淹れてもらったお茶を飲む。美味ぁ。
「アビーはなんでそんなに緊張してるの?昨日はそんなに緊張してなかったよね。」
「すみません!昨日は急だったので緊張する暇もなかったのと、今回は付き人としての初仕事なのでミスは出来ないと思ったんです。」
「なるほどね、次からは大丈夫そう?」
「はい!任せてください!」
おお、割と大丈夫そうだ。
自然な喋り方に戻ってる。
元々メンタルが強いタイプなんだろうな。
「じゃあ話が変わるけど、アビーのオススメの場所とかってある?楽しそうなダンジョンとか。」
「ダンジョンが楽しいとかは聞いたことないですけど、リリィちゃんは強いので、簡単なダンジョンだと退屈するかもしれませんし、未攻略のダンジョンの方が良いかもしれないです。ラーゼンとかココミナ辺りがオススメですかね。出現するモンスターの強さで国内最高難易度と言われているダンジョンです。」
「なるほどね、ならやっぱり魔石ギルドじゃなくて探索者ギルドに入る事になるのかな、うーんでも攻略終わったら移動しなきゃ行けないんだよね。」
「いえ、探索者ギルド自体は攻略が終われば街から撤退しますけど、ギルドメンバーは別に留まっても問題ないですよ?」
あっそりゃそうか。出禁になるわけないよね。
「それに、魔石ギルドと掛け持ちもできるので、気に入ればそのままその迷宮都市をホームに活動を続けることもできます。その2つのギルドは結び付きが強いので、探索者ギルドで結果を出せば魔石ギルドでの評価にも繋がります。その逆も然りです。」
「なるほどね、教えてくれてありがとうアビー。参考になるよ。」
「いえいえ!付き人として当然のことです!これからもどんどん頼ってください!!」
それからしばらくお話をして、時間になったのでアビーが退席した。引き継ぎが終わればずっと一緒に居られるのにと愚痴っていた。頑張れ。
貰った資料を読んでいく。
そういえば私が話せる言語や読み書きができる言語は、召喚者のエドワードさんを基準にインプットされるらしい。初日に教えてもらった。
紙に書いてある文字が日本語じゃないのに普通に読めるのは不思議な感覚だ。
うーん、ラーゼンは最近魔物が溢れて復興中だけど、そのおかげか探索者ギルドに所属している戦闘員がかなり優遇されるような制度があるらしい。数を増やして再発防止をしているんだね。
お金の心配は基本しなくていいんだろうけど、お得と聞くと気になるのは私が日本の一般的な庶民だったからだろうかね。
ああ、アリスに行きたいところを聞くのもいいかもしれない。あれ?アリス来てくれるよね?
うーん、断られたらどうしよう。
彼氏面しないでくださいとか言われたら立ち直れないかもしれない。
いや、アリスがそんな事言うわけないか。
ただアリスに会わない事には決められないのは事実だし、資料読むのはもういっか。
気分転換じゃないけどせっかくだしこけし君の試運転でもしよう。
いや、試運転じゃなくてがっつり使うつもりだけど。
というか今までずっと楽しみにしてるわけだけど。
昨日私から襲うような形だったせいか、アリスは結構受け寄りだったし、実は私は1回も満足してなかったりする。アリスが何をしても反応が良かったのもあって興が乗り過ぎたせいでもある。ベッドの惨状はほとんどアリスのせいだ。
そもそも異世界に来てまでこんなものをお偉い立場の老人に作らせるとこからも分かると思うけど、私は結構性欲が強いのだ。ほとんど毎日する派だったし。
なんでこんなに言い訳になってないような言い訳を続けてるんだろうな、私。
あれだ、リリィの体だから背徳感がやばいせいだろう。
とりあえず人払いをしないとな。なんて言おうか。
そう思っているとノックの音がしてメイドさんが入ってきた。アリスだ。
ナイスなタイミングだね。って思ったけど呼んだんだから当たり前か。
とりあえず抱きついた。そのままソファの方に誘導して座らせる。
「あ、リリィ様、その、すみません。」
「ん?なんで謝るの?」
もしかして朝チュンができなくて寂しいと思ってたのがバレたんだろうか。
「あの、会いには来れたんですけど、休憩時間があと20分ぐらいしかなくて。出来ません。」
「え?20分もあればお話ぐらいできるよ?」
「え?」
「ん?」
なんかデジャビュだね?
昨日も暇な時に部屋に来てって言ったから、
それで誤解したのかな?
「なんか誤解してるでしょ?お話するために呼んだんだよ?アリス。」
顔を近づけながらソファに押し付けるように詰め寄る。
今更だけど、昨日の夜、アリスに呼び捨てで呼んで欲しいと言われたのだった。
「あっ…」
「昨日もだけど、アリスって結構、いやかなりむっつりだよね。」
「そんな事は…ないです。」
「そう?まぁいいけど、アリスって誰かの専属メイドだったりする?」
モミモミ
「んっ、いえ、お城付きの下級メイドなので専属にはついていません。」
「そっか、私の専属になるつもりはある?多分私が頼めば通るんだけど。」
スカートの裾に手を入れて膝から内ももを撫でる。
スリスリ
「ぅんっ、リリィ様の専属になりたいですっ。」
「嬉しい。セレモニーが終わったら旅に出るつもりなんだけど、着いてくる気はある?」
カリカリクニクニ
ああもう凄い事になってるね。
「んっあっ!着いていきます!あっ、リリィ様!」
可愛過ぎてついイジワルしたくなってしまう。という訳でイタズラをやめる。
「えっ?」
「うん、分かった。侍女長さんには話しておくね?」
「はい…」
見るからにシュンとしている。
ああもう、可愛いなチューしたろ。
「あ!んっちゅ…ん…」
しばらくして離れるとアリスは完全にトロンとして目が座っていた。
「そろそろ休憩終わるよ。続きは今日の夜にね?ご飯食べて準備できたらすぐ来て。夜遅くなければ夜警は居ないから、遅くなるようだったらキッチンに迎えに行くね?」
「はぃ。」
フラフラとした足取りで外に歩いていった。
今晩が楽しみだな。
さっきまで断られるんじゃないかと心配してたけど、思ったよりもアリスは私の事が好きっぽくて安心した。
よし、アリスのためにもこけし君の試運転をしなくては。
部屋の外に居たメイドさんに、お昼寝をするからしばらく部屋に誰も近づけないように頼む。
ふふふ…さあやるぞ!
結論、凄かった。エドワードさんあなた天才ですよ。
気づいたらそろそろ夕食を食べる時間だ。時間を忘れて没頭してしまったらしい。前の世界のよりも良いかもしれない。
いや、強さを調節するだけの単純なものだから、私とリリィの体の違いかもしれないね。
まぁ何も問題は無かったし、今日はこれをアリスにも試してみよう。
今朝やったように簡単にお片付けする。と言ってもそんなに汚してないけど。タオル敷いたし。
それから夕食を食べて、お風呂に入って少し待つ。
しばらくするとノックの音が聞こえてアリスが入ってきた。
うん、最後に別れた時と全く同じで、完全に目が座っている。もしかしてずっと?
同僚にバレてないか心配になるんだけど。
その夜はまだ2回目だけど、アリスが記録を更新したとだけ明記しておこう。後から怒られてこけし君は使用禁止になってしまったけど。
今はまんじゅうよりもノクタ(の運営)が怖い。