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6 戦術指導をした

 

「リリィ殿、よくぞいらっしゃいました。狭苦しい所で申し訳ありませんが、歓迎します。」


「私は狭い部屋の方が落ち着きますし、この部屋は広いですよ、アキーレさん。」


 日本人的な感覚では大広間だ、20畳はある。


 私は訓練場に着いてすぐに訓練中の兵士に見つかって、高級隊舎?のような建物に連行された。


 兵士達の目がやたらとギラギラしていて怖かった。護衛も付けずに普通に歩いてきたけど、軍隊って女性が1人で訪ねるような所じゃないよな、普通。考えなしだったかもしれない。


「心配せずとも大丈夫ですよ、彼らは緊張していただけなので。」


「緊張ですか?」


 というかナチュラルに心読まれた気がする。


「ええ、リリィ殿は既に王国軍や王都騎士団の人間であれば、知らない人は居ませんからね。」


「あーそうなんですね。あと、その節は大変迷惑をかけました、申し訳ありません。」


 まぁあれだけやらかせば有名にもなるだろう。


「謝らないでください、御前試合の一件は私の力が至らなかっただけです。」


「そうだとしても、あそこまで有利なルールで、しかもそれを黙ったまま不意打ちを仕掛けたのは私ですし…」


「戦いに不意打ちをしてはいけないなんて決まりはありませんし、ルールを用意したのはこちらです。それにルールを変えたところで私に勝機があったとは思えません。むしろ力量不足をこちらが謝らなくてはいけないぐらいです。申し訳ありません。」


「あ、謝らないでください。」


 申し訳なくていたたまれない。


「ではその件はお互い様という事で、この話は終わりにしましょう。それよりも聞きたい事が沢山あるのです。よろしいでしょうか?」


 この人は心までイケメンなのだろうか。


「はい、分かりました。私が分かることであればなんでもお答えしますよ。」


「ではあの時使ったリリィ殿の技についてなのですが、お恥ずかしながら、自分では何が起きたのかあまり理解出来なかったのです。詳しく解説して頂けますか?」


「良いですよ、あー外に出て実践しながらの方がやりやすいですね。移動しましょうか。」


「教えてくれるんですね…」


 ん?なんかダメだったのだろうか?


「どうかしたんですか?」


「いえ…普通は教えませんよ。いや、リリィ殿なら種が割れても負けるようなことは無いと思いますが。」


 あーなるほど、秘伝の技とかだと思われてるのかな。

 向こうではリプレイ機能とかで何やってもすぐに解析されるから、隠すとか考えてもいなかった。


「完全に私用に考えて出来た技なので他の人が使ってもあまり強くないですし、完全な対策をされた事も無いので問題ありません。」


「なるほど、流石ですね。他の兵士達に見せても構いませんか?」


「大丈夫ですよ。」


「ありがとうございます。ではこちらに着いてきてください。」


 隊舎から出て少し歩くと広めの修練場に辿り着いた。アキーレさんがすれ違った兵士達になにか指示を出していたのは多分、人を集めているのだろう。ついでに訓練用の大剣と的になるものを持ってきてもらうよう頼んでおいた。講習みたいになってしまったな。


 しばらくして人が集まってきて、修練場の中央に的が置かれた。


 えーと、確か集団戦に使う魔法に声を大きくするものがあったはず。こうだっけ?


「あーあー、よし、出来てますね。これから御前試合での私の動きについて、説明したいと思います。」


「まず、遠隔魔法(リモートマジック)と呼ばれる技ですね。体から離れた位置から魔法を打ちます。特に魔法の発動方法自体に工夫がある訳ではありませんし、魔法職の人は少しなら無意識にやってます。」


「ただ大きく離して発動するのは結構難しいので、やりたい人は頑張って練習してください。私は一歩踏み込んで剣が届く間合いに居る相手を、後ろから攻撃できる距離まで。大体8m程までは離して発動できるようになるまで練習しました。」


 分かりやすいように的に向かって手をかざし、魔法を発動する。

 的である木製の人形の真上から土の矢が出現し、刺さる。


「こんな感じです。これを使って至近距離で擬似的に挟み撃ちをします。」


 的に向かって走りながら、説明通りに土矢(クレイアロー)と合わせて同時に攻撃する。

 因みにこの技、というか間合いは私の職業である処刑人と併せて処刑場とか呼ばれてる。恥ずかしいから秘密だ。

 海外では私の二つ名はギロチンとかだったりするのも、それが嫌で自分で剣姫と名乗ってたりするのも秘密だ。


「やってる事はこれだけですね。アキーレさんとの試合では、非殺傷で避けられづらい空気弾(ウインドバレット)を使いました。では、なにか質問はありますか?」


 何人かの兵士が手を挙げる、けどアキーレさんも手を挙げてるのでそっちにしよう。


「アキーレさん、どうぞ。」


「好きな位置から攻撃できるなら、防ぎようが無い、という事でしょうか?」


「そうですね、基本的には射程内なら防がれたことはありません。大体の人は近づかなけれないように遠くから魔法を打ってきます。間合いに入ったら、私が相手を倒すより先に私を倒すように、自爆気味に攻撃されたりもします。」


「なるほど。」


「他に質問はありますか?ではそちらの方。」


「は!リリィ殿は何歳の頃から訓練を始めたのでしょうか?」


「うーん、5年くらい前からですね、年齢は秘密です。」


 おお?凄いざわつき始めたな。


 そういえば自己紹介とかしてないんだよな。名前以外何も分からない人だったのか私。

 その後もしばらく質疑応答が続いたけど、戦闘に関係ない事を聞かれることの方が多い。私の恋人(白いこけし)は向こうに置いてきたから居ないよ。こっちには多分無いし。





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 講習?が終わって最初の部屋に戻ってきた。

 今一緒にいるのはアキーレさんだけだ。

 紙とペンを貰ってステータスを書き込んでいく。


「そういえばまともに自己紹介もしてなかったんですよね。とりあえずこれが私のステータスです。向こうでの経歴とかは内緒ってことでいいですか?」


「…ええ、分かりました。ただ流石にこちらを信用し過ぎでは無いですか?」


「アキーレさんの事は信用してますよ。」


 とりあえず微笑んでおこう。


「…信用を裏切らないように微力を尽くします。これ、キックス卿には見せても構いませんか?」


 キックス卿?ああエドワードさんの事か。


「良いですよ、というか見せると思って紙に書きましたし。公表してもいいですよ。」


「それは流石に出来ません。…随分特徴的なステータスですね。」


 リリィ 処刑人 Lv.100

 HP:1100 MP:1100

 STR:310

 AGI:210

 VIT:110

 MAG:110

 POW:310


 「よく言われます。」


 「レベル100の処刑人…POWが300越えなのにMAGがかなり低い。VITも…完全に短期決戦に絞ってるんですね。」


 「SoS」ではステータスはレベル0の時点でオール10だ。

 そこから1レベル上がる事に全ステータスが1ずつ上がるため、レベル100ではオール110になる。

 私の職業、処刑人はSTR(物理攻撃力)POW(魔法攻撃力)が1レベル上がる事に追加で1上がる。

 更に自由に振れるボーナスポイントが100レベル分で300、1つのステータスに振れる上限は100なので、STR、AGI、POWに全部つぎ込めばこのステータスになる。

 脳筋の極みみたいな振り方だ。

 HPはVITを、MPはMAGを10倍にした数値になる。


 アキーレさんが数値110のMAGとVITを、最低値ではなくかなり低いと言ったのは多分、この世界の人はレベルゼロの時のステータスに個人差があるんじゃないだろうか。


 「………………。」


 アキーレさん、紙とにらめっこしたまま帰ってこなくなってしまった。


 「あのー聞きたいことが沢山あるとの事でしたが、他に何かありますか?」


 「…いえ、実はどんな環境であればリリィ殿のような戦士が育つのか興味があったのですが、過去のことは聞かれたくないようでしたので、もう特に聞けることは無いんです。」


 あーなるほど、別に過去を隠したい訳じゃないんだよね。ただゲームとかリリィと私の関係とか、説明するのがめんどくさい事が多いからってだけで。うーん。


 「そうですね、その辺は説明できると思います。ちょっとややこしいですが。私の居た世界では幻覚魔法のようなものを発生させる装置があって、それを使えば世界中の人と好きな時に戦うことが出来るんです。幻覚なので実際に戦ってる訳ではなく、お互いに怪我をしたりすることもありません。」


 「それは凄いですね。つまり、絶対に死ぬ事が無い環境で好きなだけ実践訓練ができる、という事ですか?」


 「はい、そうやって競い合う環境で育ちました。」


 「なるほど、納得しました。…競い合うという事は、やはり明確な序列もあったという事ですよね?リリィ殿はやはり世界最強だったのですか?」


 「いえ、国の中では多分1番でしたが、世界では大体10番目辺りでしょうか?」


 「リリィ殿より強い人がそんなに居るんですね…恐ろしい世界です。」


 実際には全く恐ろしくないんだけどね。

 素手で岩を割れる上に銃で撃たれても死なないこの世界の人が向こうに行けば、余裕で無双できる。


 「その装置のアイデアも、キックス卿に伝えても問題ありませんか?訓練に使えればかなりの効果を見込めそうです。」


 「ええ、勿論良いですよ。」


 国を跨いだ通信はまだ難しいだろうけど、シュミレーション的に使うだけなら作れないこともないのかな?

 うーんファミ〇ンができてからVRが出来るまでの歴史を考えたら半世紀はかかりそうだけど。

 …もしかしなくてもエドワードさんに頼めば玩具(白いこけし)ぐらい作ってくれそうだな。


 なんでも頼っていいって言ってたし、今度言うだけ言ってみよう。



エドワードさんの仕事が増えることが確定しました。

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