17 付き人を美味しく頂いた
昨日投稿しようと思ってた分です…
お嬢様言葉が思ったより難しくて、何回もチェックしていたら完成する前に睡魔に襲われました。ごめんなさい。
魔物の死体は私が燃やした。解体できる人が居ないし、1番近い街まで馬車で半日だ、さすがに運べない。
一応目撃証言として報告する為に羽毛のようなトサカの部分を1つずつ切り取っている。領主貴族のご息女が居るから必要ないかもしれないが、念の為だ。
天幕を張った広場まで戻る途中、私は着替えながらアリスと話をしていた。アビーは御者をしている。
「それにしてもよく馬が言うこと聞いたね?臆病なんじゃなかったっけ?」
ドンパチやってる所に馬を走らせるなんて普通は無理だ。草食動物は基本臆病でビニール袋を見ただけで逃げると聞いた事がある。
「なにか魔法を使っていたようです。草の匂いを嗅がせながら馬の頭に手を当てていました。」
「ああ、幻覚魔法かな?それか狂化の系統か。」
「申し訳ありません、魔法には詳しくなくて…」
「いや気になっただけだから。それに私もそんなに詳しいわけじゃないし。」
ゲームで使える魔法は網羅してるけど、こっちの魔法はもっと種類が多くて私にはほとんど分からない。
そもそも水を出すだけの魔法とか、火をつけるだけの魔法なんて対戦ゲームで使わないし実装されてない。
一応RPGゲームだけど、どちらにせよだね。
それにしても本当に沢山魔法が使えるんだね。あのエドワードさんが有能って言うわけだ。
広場に到着したので馬車から降りる。
後ろの馬車を見ると、そちらもちょうど停まった所らしい。
セバスさんが御者台から降り、流れるようなスピードで馬の馬具を外し餌をやり、天幕と机の用意までしている。机どこから出したんだろう?いつの間にか持ってたんだけど?ていうかなんで机?
机について考察していたらあっという間に火起こしまで終えてしまった。ご丁寧にケトルが火にかけられている。ここまで10分ほどしか経っていない。
アリスが私に着いてきたせいで焦がしてしまった鍋をこそぎながら、悔しそうな顔でセバスさんを見ていた。本職から見ても凄いらしい。
アリスに顔を向けた一瞬で椅子も出てきた。ここまで来るとそういうものなのだと思うしかない。もはや家が出てきても驚かないぞ。
「お嬢様、準備が整いました。」
セバスさんが馬車に戻って中に声をかけている。
扉を開け、中からお人形のように可愛らしい女の子が出てきた。12歳くらいだろうか?腰の当たりまで伸びたシルバーブロンドの髪とあどけない顔が、ロリータチックなドレスとよく合っている。
セバスさんに導かれながら私の前まで歩いてくる。
「はじめてお目にかかります、リリィさま。わたくしはポルドー子爵家が長女、マリアンヌ・ド・ポルドーともうしますの。お会いできてうれしいですわ。このたびは、危ないところを助けていただき、本当にありがたく存じます。」
なるほど、これが可愛さ。いや、可愛らしさか。
少し思考が停止するレベルだ。お姉ちゃんって呼ばれたい。
はっいかん。返事をしなきゃ。
「初めまして、マリアンヌ様、リリィです。今回はたまたま通りがかっただけですので、お礼は不要ですよ。」
やばい、敬語のレベルが女児に負けてる。
「リリィ様は謙虚でいらっしゃるのですね。」
「いえ、そんな…」
「今この場ではたいしたお礼をすることはできませんが、お茶を用意しましたので、どうかごいっしょしてはいただけませんか?こちらですの。」
なんだろう、すごい負けてる気がするよ。
今も返事とか考える間もなく席に誘導されてしまっている。
「どうぞおすわり下さい。」
「はい…すみません、礼儀作法にはどうも疎くて。」
「わたくしは気にしませんのよ。セバス。」
「はい。」
いつの間にか用意されていたティーポットからカップにお茶が注がれている。
この人、動作は普通なのに物を取り出す瞬間だけが分からない…え?いま何処からそのケーキスタンド出したの??後ろ向いただけで出てきたよね?
流石におかしい…魔法かな?
「? どうかなさいましたか?リリィさま。」
「いえ、なんでもありません…」
「そうですの、それならいいのですが。どうぞご賞味くださいまし。」
「はい、ありがとうございます。…とても美味しいです。」
「お口に合って良かったですわ。私のおきにいりの茶葉ですの。」
そう言って紅茶を一口飲む。動作まで洗練されてるのね。
「実を言うと、リリィさまとは1度おはなししてみたいと思っておりましたの。」
「そうなんですか?」
「はい。御前試合ではじめてそのお姿を拝見してから、ずっと気になっておりましたの。強くて、美して、高貴で。わたくしの理想の女性像そのものでいらっしゃるわ。」
「それは…褒めすぎです。でもありがとうございます。マリアンヌ様。」
つまりまた新たなファンを手に入れてしまった感じかな?
「今回魔物におそわれた時には、自身の不幸を呪いましたが、リリィさまに助けていただき、お話をする機会が貰えた事を思うと、今では幸運だったとすら思えるかもしれません。」
それは流石に…いやお世辞か。
護衛の人を助けられなかった事に気づいてるとしても、それに責任を感じないようにっていう配慮だろうか?
「それなら良かったです。もう少し早く助けに行けたなら良かったのですが。」
「いえ、リリィさまがお気になさることではありません。つきましては、追って正式にお礼をしたいのですが、何かわたくしどもにできることがありませんでしょうか?できる限りの事はさせていただきます。」
ふむ…実はひとつあるんだよね、要望が。
いやでも怒られるかな?いや、言うだけ言ってみよう。
「それでしたら…お姉様と呼んでくれませんか?」
「お姉様、ですか?」
「ずっと妹が欲しかったんです。あと出来ればお互いもう少し砕けた口調で話をしませんか?」
ごめんなさい100%下心です。
「それは…構いません、いえ、分かりましたわ。リリィお姉様。わたくしの事は…マリアンヌとお呼びくださって。敬語も、妹になら必要ないですわ。」
「おおお…」
素晴らしい。顔を赤くして照れながらお姉様と呼ばせてしまった。
日本でやったら確実に通報される。異世界万歳!
「ありがとうマリアンヌ。凄く嬉しいよ…でもまだ少し硬いかな。」
「…慣れていませんの。それに、姉に敬語を使うのは、そこまでおかしくはないのではなくって?」
そうなのかな?まぁ山の手言葉も可愛いから良しとしよう。
「そうだね、無理に砕けた口調になる必要もないかな。」
「ありがたく存じますわ。リリィお姉様。それと、流石にお礼がこれだけでは受けた恩に到底足りませんわ。他になにかできることはありませんの?」
他か、うーん。
お金は要らないんだよね、なんか悪い気がするし。
「実は私達はポルドー領に向かう途中で、マリアンヌさえ良ければ一緒に行かない?」
「!それは…願ってもない事ですわ。ですが、それはお礼になっているのでしょうか?」
「妹と一緒に居られるなら、十分にお礼になってるよ。」
「…分かりましたわ。ではそのように。」
よし、妹確保。
アリス達にも説明しないとね。
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「またなのですか?」
「また?」
「また浮気するおつもりですか?」
「え?!違うよ!!マリアンヌは…妹みたいなものだし。」
あれ?浮気の常套句にこんなのあった気がするぞ?
「………」
うぅ、アリスの目付きが怖い。でもしょうがないじゃないか!初めてできた妹とすぐ別れるとかできないよ。
「ほら、マリアンヌ達は護衛もいないし、しょうがないよ。もちろんアリスたちの方をちゃんと優先するからさ…許して?ね。」
「はぁ…まぁ確かに護衛も居ないご令嬢を放置する訳にも行きませんか。でも浮気したらダメですよ?」
「しないよ!もちろん。アビーもそれでいい?」
「…はい、リリィちゃんの決めたことなら良いですよ。」
良かった、許可は降りたようだ。
しかし私に対するアリスの信頼低くないだろうか。
うーん前科があるからなぁ。少しずつ信頼を取り戻していくしかないかな。一気に挽回出来ればそれが一番いいんだけど。
今日の寝ずの番は私が1番目だ、正直日本にいた頃は普通に起きていた時間なので、私にとってはほとんど苦ではない。2回寝る必要がある2番目の時は辛いんだけどね。
セバスさんも交代すると言ってきたのだけど、今日は大変だったろうということで休んでもらい、明日からお願いする事にした。
火を消さないように見張りながら、することも無いのでお茶を淹れていると、馬車からアビーが出てきた。
焚き火に当たっていた私の横に座る。トイレじゃないのか。
「どうしたの?今日は確か2番目だよね?早めに寝ておかないと辛いよ?」
「眠たくないので今日はこのままアリスさんとの交代まで起きてることにするです。一緒に居てもいいですか?」
「そっか、もちろんいいよ。はい、お茶。」
「ありがとうです。」
初夏とはいえ夜はかなり冷える。寒いのかアビーも私にピッタリとくっついてきた。うーん可愛い、というか少しまずい。
実を言うと、旅に出てからアリスとエッチをしていない。暇さえあれば3人でイチャイチャしてはいるけど、つまりそれは常に3人が一緒に居るという訳で、当然アリスとは出来ない。
つまりかなりムラムラしていた。常にイチャついてる分余計に。
夜も寝ずの番をしている時は外に居るし、逆に馬車の中でアリスと2人きりでも、アビーは確実に起きてすぐ傍に居るのだ。性欲を解消するタイミングが無い。
アビーいい匂いする…ここ3日は体を拭いてるだけなはずなのに。
「アリスちゃんとは話は既に着いてるです、先程寝入ったのも確認したです。体も出来るだけ綺麗にしてきたです。」
「?」
「私もそろそろ、リリィちゃんとそういう事したいんです…」
私の腕に体を擦り付けながら甘えてきた。
アビーがこうも露骨にアピールしてくるのは珍しい。
はっきり物を言うタイプではあるけど、結構初心な所もあるのだ。おっぱいは揉むけど。
もしかして、ゆっくり関係を進めようと思ったせいでかなり待たせてしまった感じかな。
「やっぱり私とじゃ嫌ですか?体も…2人と比べると子供っぽいですし。」
私が考え込んで無言でいるとアビーが下を向いてしまった。
「いやそうじゃないよ。アビーからそういう事言うのが意外でびっくりしただけだから。」
「私にだって性欲はありますし、好きな人としたいと思うのは普通です!」
今そんな事言われたら止まれないよ?
「うん、そうだね。私もアビーとエッチしたいよ。ううん、するね?でも外だし、火の番もしなきゃいけないから、程々にね?」
これはほとんど自分に言い聞かせてるんだけど。ちゃんと自制できるかしら。
「はい、その、よろしくお願いしますです。」
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まぁ自制なんて出来るわけなかったよね。
アビーとの行為が終わって、今は胡座をかいたわたしがアビーをお姫様だっこする様な体勢で休んでいた。
アビーの腰が抜けてしまったのだ。
完全にやり過ぎたし、お茶も冷めきっていた。
「リリィちゃん、私今すごい幸せです。」
何か可愛い事を言っていらっしゃる。2回戦始めちゃうよ?…いやダメだよ。これ以上は明日に障るだろうし。
「見られてるのは少し恥ずかしかったですけど…」
ん?見られてる?…アリスは寝てるんじゃ?
「?気づいてなかったですか?マリアンヌさんが覗いてますよ。」
「え?!」
ばっともう片方の馬車の方を見ると、窓から顔の上半分を出していたマリアンヌとしっかり目が合った。すぐ引っ込んだけど。
「気づいてなかったんですね…ごめんなさい。もっと早く言えばよかったです?」
「いや…うん。出来れば早く教えて欲しかったかも。」
いや、マリアンヌは今日魔物に襲われたばかりだし、子供だ。すぐに寝付けない可能性は普通にあるだろう。ちょっと私に余裕が無さ過ぎたのだ、普通に考えれば分かる。明日から気まずいかもしれない…
それはそうと、アビーは初めてなのに屋外で見られながらあんなに…もしかしてそっちの気もあるんだろうか。
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