四:畑作り
「けっこう広い畑も借りたんだね」
新しく建てる家の横。ここは以前の住人が畑として使っていたそうだが、今は誰も耕作していない荒地になっている。
「ああ、うちは家族全員畑仕事も好きだからな。あれこれ植えて、食べる分が収穫できるのも悪かないと思ってな」
もうすぐ、漆喰の家をお願いした職人さん達が仕事にかかる日になる。それまでに畑に手を入れ、家が建つまでの間に混ぜものと元の土が混ざって畑の土に適した物になるのを待つ期間になるようにしたのだ。
「まだあまり広まってないやり方だけど、今までのやり方より収穫が増えると国の推奨のやり方なのさ!」
姉さんは薬草をいかによく茂らせるかといった事も、余念なく調べている。その関係で、畑の事にも詳しくなっている。
「そんじゃ、ちゃちゃっとやっちゃうのさ!」
土を耕したり、細かく砕いた炭を混ぜ込むのは同じなんだ。最後に畝と言われる、土を盛り上げた部分を作るのと等間隔に植えるのが違うんだって。
今日するのは、土を焼く作業。その後、森から取ってきた腐葉土や炭被せて寝かすまでが今日の作業。
僕達はそれぞれ、畑の形をした十センテの深さの土の板を持ち上る。水魔法で土を濡らすと、火魔法で土をしっかり焼く。
一度、十分ほど焼くと、土を細かくして新たに土の板を作る。そしたら水魔法で濡らして、また焼く事を繰り返す。
「俺達もこのやり方にずいぶん慣れたよなあ」
「そうね。お世話になったところで、たくさんしたからねえ」
「そうなのさ。この方法が遠方まで早く広がったのは、あたし達のおがけと言われてるのさ!」
「そうだね。どこも収穫が少ないのは同じたったからさ。だからお世話になったお礼に、その時は新しかったこの方法をあっちこっちでしていたもんね」
都の者が新しい方法を持って遠方へ行くのは、中でも収量が増える方法はとても喜ばれた。小麦を作り始めて二年か三年すると、どの畑もたいてい収量が減るんだ。それはどこの領地でも同じだったからね。
それがこの方法を試すと収量が増えると、とても喜ばれたお礼だった。
楽しく話しをしながら、念には念を入れて六回この作業を繰り返して終了。石を弾きながら、土を細かくして畑に戻す。その上に腐葉土なんかを被せて今日は終了。土がまだ熱いから、被せた腐葉土から湯気が上がり始めた。
「やっぱり匂いが強いね。風魔法で匂いを常に散らして、と」
「この方法、匂いだけは欠点なのさ……」
「あはは、うん。ちょっと独特の匂いだもんね」
「匂いが落ち着くまでは辛抱だな」
「そう。落ち着くまでの辛抱。たくさん収穫するためだもの!」
◇◇◆
畑から出た石を持って、みんなで川へ移動する。川にある石と持って来た石を使って、川の中に囲いを作る。
Jの書き始めが河原に付くように、書き終わりが川上に来るようになった感じの低い石垣だけどさ。高さは水面からちょっと出るくらい。そこから何メルテか川上に、一本線の石垣も作る。
「よーし! 囲いは大丈夫だな? 魚を追い込むぞ!」
「はいよ!」
「ほいのだわさ!」
「それ!」
みんなで棒で水面を叩く。叩きながら、魚を囲いに追い込む感じで進んで行く。
「ちょっと少ないな。何回か繰り返して、ほどほどになったら止めよう」
一度で囲いに入った魚は、ちょっと少なかったよ。みんなで何回か繰り返す。
「けっこういい運動よね〜」
「足腰が鍛えられてる感が、半端ないんだわさ」
「おいおい、大丈夫か?」
「大丈夫? 女のコにはちょっと流れがキツイかもしれないね。気を付けてね」
「ありがとう」
「気を付けるだわさ」
こうして魚を取ると、また畑へ戻る。
◇◇◆
「風魔法使ってるから、冷えるのが早いね」
「だわね。ちょっと温度あげれるかなのだわさ?」
「やってみるよ」
畑より少し狭い範囲で、地下五十センテの辺りで火魔法を行き渡らせる。しばらくすると、表面の温度が戻ってきた。
「やっぱり何回か温度を戻さないとだめだわさね。明日からも頼むのだわさ」
「分かったよ、姉さん。任せて」
こうして畑仕事を終え、夜ご飯にする魚も確保して家へと戻る今日という日が終わった。
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