二:生活基盤を整える
お父さんに達は村長さんに挨拶へ行くと、この村に住む許可を取り付けていた。
お父さんは狩りも上手いし、簡単な大工仕事もできるのでそういった仕事を。
お母さんは縫い物が上手いから、お針子の仕事。
お姉ちゃんは薬草に詳しいから、薬師とヒーラーとして。
みんなそれぞれ仕事を頼まれたそうだ。
僕は狩人をしてるよ。
家はお父さんと建増ししようかと話した。一間ではさすがに、家族で暮らすには狭いからね。木材は村の大工さんから買う事になる。乾燥させないと使えないからね。さすがに買わないと、用意がないよ。
「この家はいくらで借りているの?」
「月に銀貨二枚だよ」
「は?! この一間のあばら家が、月銀貨二枚?!」
「え、もしかして人頭税は? 教えるの!」
「金貨一枚だったかな?」
「あり得ない!!」
「ボーッとして見られるからな。しかもボンボンに見える容姿だ。足元見られたな」
「私のかわいい弟に何するのさ!!」
こんな話しを夕べしたけど、ケンカしてなきゃ良いなあ。ちょっと高いのは分かってるけど、この金額をずっと払っても生活には困らい蓄えがあるからさ。ケンカになるくらいなら、ちょっと多くお金を払って済むならまあいいやって。思ったんだよね。
◇
「ただいまぁ〜」
「帰ったぞ」
「ただいまなのさ」
「お帰りなさい。ごはん出来てるよ」
普通、食事は朝と夜の二回なんだけど、お父さんの方針でうちでは三回食べる。体を使う仕事なんだから、しっかり食べないとここぞという時に踏ん張れないからって。稼ぎがないなら二回でも仕方ないが、三回食べられる稼ぎがあるんだ、ちゃんと食べるぞって。
「偉いのさ。ちゃんと野菜や山菜もたくさん使ってるのさ」
お姉ちゃんもこだわりがある。肉だけより、野菜や山菜たっぷりの薄味の食事にこだわるんだ。薄味で、野菜も多く使うご飯を良しとしているよ。
「みんなの好みも覚えているし、三食食べるのも続けているよ。
それより、村長さんとケンカしなかった?」
「大丈夫だ。すんなり相談に応じてくれたよ!」
「ほほほ。本当にすんなりだったわよ」
「色々変更してもらったのさ」
うん。みんなが大丈夫って言うなら、大丈夫だね。じゃあ、温かいうちに食事にしよう。
「はあ〜、美味しいのさ。うちの弟より良いお嫁さんになれる女のコは、なかなかいないのさ」
「本当よね〜」
「まあ、普通に家事がこなせれば良いだろう」
「僕のお嫁さんよりも、お父さんとお母さんはまだ結婚しないの?」
「ぶふっ、げほごほっ」
「ごっくん! こほ、こほっ」
「ああ〜。そろそろ前の相手は、もう良いと思うのさ」
とても仲の良い二人なのだが、忙しくしていて前の家族とは離散したそうなんだ。それがあって、お父さんとお母さんは結婚はしていない。とても仲が良いのに、すごく不思議だ。
お姉ちゃんは冒険者をしていて、久しぶりに家に帰ると家族は引っ越ししてしまっていたそうだ。日照りで税が払えず、もっと住みやすいところを探して引っ越しして行った人が多い年だったそうだ。
「まあ俺たちは、な」
「ね? もしその気になったら?」
僕は二人が結婚して、本当の夫婦の子供になれたら嬉しいんだけどな。こればかりは、お父さん達の決める事だもんね。
「話しは変わるさ。家は別の土地に新しく建てるのさ。ここじゃ土地が狭いのさ」
「俺とお前も大工仕事をして、少しでも早く作り上げるつもりだ。良いな?」
「うん、分かった。冬までには建てたいって事だね?」
「うん。ここじゃ雨漏りもしそうだからな。天幕のほうがマシかもしれん建物で、冬は乗り切れん」
「街からレンガも買い付けるから、しっかりした家になるわよ」
そんな話しをしながら食事をしていた時だった。
「ディーノ! いたか! あ、お客さんか?
こんな時に悪いんだが、村の東の森でオークを見かけたらしいんだ! ちょいと探して倒して来てくれないか?!」
「……、普通、オークの討伐を狩人に頼まんぞ?」
「普通はギルドに依頼するわね」
「なってないのさ!」
「お父さん達。倒せるから受けてるんだ、良いんだよ。
アックさん、詳しい場所や分かっている事を教えてもらえますか?」
僕はにこりとアックさんに微笑む。僕が怒っておらず、いつも通り受けると答えると、アックさんはほっとしていたよ。
「あ、ああ。いつもすまねぇな。
オークを見かけたのは東の森の、二股岩から北へ十分ほど北の開けた場所だったそうだ。数は二体か三体らしい。一体は声はしたが、姿が見えなかったからあやふやだとさ」
なんだ。オークか。
「分かりました。準備できたらすぐに行って来ますね」
◇
「お父さん達はゆっくりしてても良かったんだよ?」
「どうせ歩き回って森の中も覚えるんだ。その一環だ」
「腹ごなしの運動よ。最近太りやすくなったからねえ」
「薬草の調査もできるのさ」
そうなんだ。じゃあオークを倒したら、帰り道は少し寄り道しながらみんなを案内しようかな。
みんなでこうして歩くのは久しぶりで、楽しくて嬉しいな。
嬉しくて、ちょっと油断していた。道を間違えて、オークの村のようなところへ出てしまった。
あっちゃあ。浮かれ過ぎたな。
「これくらいなら、俺かサラかディーノのうち誰か一人で行けるな。
誰が行く?」
「僕が行くよ。何だかやけに視線が集まってるから、勝手に僕のところに来そうだよ」
「相変わらずモテるな……」
これはモテてるの? たまにお父さん達は、よく分からない事を言うんだよね。
「アレにモテなくて良いけど、目が合うから行ってくるよ」
「ああ、ほどほどにな!」
「はい、お父さん」
僕はオーク達の村へ向けて走る。後ろではお父さん達が、何か薬草がないか探し始めたよ。ふふ。これも以前と変わらないね。
辺りの様子を目を走らせ、素早く確認する。オークが稀にコロニー、またはハーレムを形成する事が報告されているからだ。ハーレムなら、助けないとならない人がいるって事。
うん。ここはコロニーだね。数は……、二十匹前後か。
僕は腰に帯びた剣を抜き放つ。さて、人に害なす者には無慈悲な一撃を贈ろうか。
◇
「相変わらず早いな」
「そう? ここだと本気出す事がないから、ちょっと鈍ったよ?」
「普通にするなら、まだまだ鈍っても大丈夫よ!」
「え? そうなの?」
「このパーティだと最弱の私でも、他所なら最強のリーダーで通じるのさ」
「そっかー。じゃあもっとゆっくり過ごしても良いんだね」
この村では買い取り切れないだろうから、情報にあった三体だけを残す。他はお母さんが骨も残さず、一気に焼却処分だ。わざわざ売りに行くほど、良い儲けにはならないから賛成。
もうコロニーは殲滅して、驚異はないからね。問題ないよ。
「さーて、帰る道すがら薬草でも集めて帰るか」
「そうね。薬屋もポーション屋もないから、薬はすぐにでも必要になるかもしれないからね」
「やったのさ。この辺は植生が王都とは違うみたいだから、嬉しいのさ」
こうして僕達は以前と変わらぬ一仕事を終え、薬草を集めながら村へ戻った。
薬草もいくらか集まったし、大工仕事の収入もすぐに安定すると思う。お母さんの仕事も、腕の良さが広がるのはあっと言う間だろうから心配はないね。
僕はもっと鈍っても良いなら、お姉ちゃんの作る薬の薬草でも育る事をメインにしようかな。
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