一:久しぶり
僕の村は、僕が子供の頃にドラゴンに滅ぼされた。
両親が僕だけでも助かるようにと、井戸に投げ込まれて九死に一生を得た。だが、僕は井戸から這い上がれず死ぬんだと諦めていた。
そんな時、先代英雄が村に着いて助け出された。
先代英雄である養父は、養父の知るすべてを僕に教え育ててくれた。
いつか両親の、村の仇を取りたくなったら仇を取れるように。冒険者として生きて行けるようにと。
そんな養父のおかげで、僕は村を滅ぼしたドラゴンを、パーティの仲間たちと見事討ち果たせた。
元来のんびり屋の僕はこれで十分。ドラゴンスレイヤーとなり、ひっきりなしに来る指名依頼なんていらない。
旅に出た後、養父も亡くなっている。なら、どこか故郷に似た村でのんびり暮らせればいいよ。
だって、そういう性分なんだから。
◇ ◇
◇ ◇ ◇
「あーーーっ!! いた!!」
「うわ、本当にいる!!」
「ディーノ!!」
のどかな辺境の、片田舎の村に似合わない絶叫が響き渡る。驚き振り返ると、そこには懐かしい面々が揃っていた。みんなが叫ぶのなんて珍しいな。
「やあ、みんな。久しぶり。元気そうだね」
僕、ディーノは元パーティメンバー達に、にこりと微笑んで挨拶をする。挨拶はどこへ行っても、誰にでもするものだ。そしてそれは笑顔であれば、なお良い。
「ディーノ! 探したのよ」
この女性はお母さんみたいな人で、魔法使いのサラ。
「まったくだ。俺たちも田舎でのんびり暮らすって言ってたろ?」
こっちの男性は、お父さんみたいな人で、魔法剣士のダグラス。
「何はともあれ、元気そうで良かったの」
この女性は姉さんみたいな人で、ヒーラーのツェリ。
僕達はパーティでありながら、家族のような関係を築いていた。ちゃんとお別れは済ませたんだけど、こんな田舎まで会いに来るなんて。忙しいだろうに、嬉しいな。
「やっと家族がそろったわね。これからはゆっくり、みんなで暮らしましょう」
サラが僕を抱きしめる。続いてツェリも僕をサラごと抱きしめる。
「かわいい弟を、もう一人っきりにはしないの」
「ああ、みんなで暮らそう。家族なんだからな」
ダグラスは大きな手で、僕の頭を優しくぽんぽん撫でてくれる。
そっか。ドラゴンを討伐し終わっても、僕達は家族だったんだ……
「うん。みんないなくて淋しかったよ。これからまた宜しくね」
こうして、大陸に一組か二組しかいないドラゴンスレイヤーのパーティメンバーが勢ぞろいした。田舎暮らしに不似合いな、一級品の武器防具をまとった村人の誕生だ。
空には微かな煙の臭い。僕達の未来を暗示させるものだったようだ。
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