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竜門の十哲~最強の10人は再び集う~  作者: 柊 楓
第1章 19歳-チル村編-
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第3話 魔獣の咆哮

およそ日が向こうの山脈に沈みきった頃だろうか。


遠くから獣の咆哮(ほうこう)が聞こえた。


北東方向。そこまで遠くないようだ。2日ぶりの接敵。


勝鬨(かちどき)ではなく威嚇。まだ生存者がいるのだろう。この時間に一般人が獣と相対(あいたい)しては、かなり危険だ。対象が人間でなければいいが、念の為と咆哮の方へスピードを上げる。この時間での接敵は避けたいが、仕方がない。


最近仕事が少なかったぶんの帳尻(ちょうじり)合わせだとでも思っておこう。




近づくにつれ感じる、魔獣特有の空気の乱れ。「魔力乱れ」というやつだ。ときたま発生する魔力溜(だま)りに浸かってしまった獣は、魔獣へと変化する例がある。周囲の大量の魔力を取り込みきれなかった獣は、余剰分を筋力や脳に注ぎ、急激な進化を遂げる。


もちろん獣の身体にはかなりの負荷がかかるため、骨格が以上に変形したり体の部位が一部破損(はそん)するなどの弊害(へいがい)もある。


そんな弊害のうち、冒険者にとって致命的なのがあったりする。


それが空中の「魔力乱れ」。


人は体内に溜めてある魔力を使って魔法を行使する。魔法は空中の魔力を通して対象に伝わる。


イメージは「音」のようなものだ。大勢が経験あるように、音が聞こえなくなるような瞬間、声は伝わらなくなる。


空中の魔力の流れが乱れた時、魔法は伝わらなくなる。


魔獣は溜まりすぎた魔力の影響で、絶えず魔力漏れを起こしている。「音」で例えるなら、スピーカーが歩いていると考えていい。そんな中では、人のだした声など誰にも聞こえない。魔法は空中で霧散(むさん)する。


魔獣は、魔術師の天敵なのだ。


通常戦で腕のたつ魔術師も、魔獣前では形無し。剣士たちの出番である。


しかし、急激な進化を遂げた魔獣は凄まじく硬く、身体能力も高い。剣士に対しても強いのだ。


それ故に、魔獣の討伐においては【ゴールド】以上の冒険者にのみ依頼される。


魔獣は冒険者にとって、身近な最大の敵なのだ。


この時間帯に凶暴な魔獣に遭遇するのは、冒険者にとっても致命的。ましてや一般人が遭遇した場合、救援に時間がかかっては悲惨なことになるだろう。


大きな森が見えてくる。東グルド草原の東端に位置する森だろう。ここら辺では最近獣による被害が報告されず、あまり冒険者も来ない。


森の近くに魔獣を視認する。


熊の魔獣。


体長およそ2.5m。大人でも見ただけでビビるほどのグロテスクな見た目。


その近くに、子供が隠れている。


木の影に隠れているのは10歳前後の3人。服が粗末でボロボロだ。この近くに村があるのだろうか。


死体が見えないので、まだ魔獣の被害は出ていないようだ。もちろん、大人しかろうと魔獣は倒さなければならないが。


私に気づいたようで、魔獣はこちらを振り向く。


その魔獣には角が生え、前腕が硬質化、肥大化している。目には真っ赤な暗い光がほとばしり、口元からは(よだれ)がだらり。元は熊なのだろうが、そんな面影は豊富な毛くらいだ。


魔獣の殺気が離れた瞬間、3人の子供達は即座に森の中へ逃げ出す。


手馴れた逃走は日常のモンスターとの接敵を垣間見させ、子供たちの過酷な生活を想像させる。


「グルアアアアアアアアア!!!」


魔獣が威嚇(いかく)する。魔獣魔獣言っても仕方が無いので、手の大きい熊を「グローブベアー」とでも名付けよう。この際名前のダサさは気にしないでほしい。

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