第31話 幼なじみ
「...」
「...」
「っていう...あー、わけだな」
「...」
暖炉の中でぱちぱち弾ける火の音が響く、こじんまりしたリビング。赤レンガに囲まれた、およそ日本では見ないようなインテリアが点在する空間。木製の机を囲むように、4人の男女が座っている。
「...あー」
そして現在。とてもいたたまれないような空気が流れていた。
「どう、だった...?」
それはもちろん、このドアホヨウタのせい。自分の武勇伝を、自分の感情を交えて黒歴史にして語ったからだ。
そのせいで、あたしもあの時の感情を思い出すことになる羽目になった。あくまで自分の中で思い出すにとどめたが。
それよりも。
「...あー」
「...」
「どうだっちょ、アマネ?」
この男は噛みながらも、あたしの気持ちを確認してくる。噛んだことを笑い飛ばしたいくらいだが、どうやらあたしも緊張しているらしい。表情が動かない。
「...」
ジンもリリカもあたしを伺う中、あたしは声を出せない。本当にやってくれる。こんなの公開告白じゃないの。タイミングも雰囲気もあったもんじゃない。元の世界であれほど女を口説いていた男は、ほんとにどこに行ったのだろう。
両親が仲良くて。一緒の病院で同じ日に生まれて。保育園にいた頃はさながら夫婦みたいにずっと一緒にいて。それは小学校に入学しても同じで。でも、友達が沢山できるほどに距離は離れていって。
中学の頃からたくさんの彼女と付き合って。当時の彼女から、距離が近いから離れてくれなんて言われて距離を置いて。付き合ったと思ったらすぐ別れる性急な陽太に呆れ果てて。
いつの間にか濁った目をするようになった陽太を心配して。それでもなお、なんにも考えずに告るやつを説得して。陽太を独占できたような気になってるあたしにも呆れ果てて。
「...」
「...アマネ?」
「あたしは」
なんといえばいい?はぐらかすべきじゃないよね。あんまり痛いセリフを吐くのも気が引ける。ジンとリリカとの関係性が変わるのも怖い。
今までだって、ヨウタとの距離がどうしようもなく離れてしまうことを、ずっと恐れていた。
けれども。1度目の死すら共にした、生まれた時からの幼なじみとは。
「次死ぬ時も」
「...」
「次死ぬまでも。また知らない土地に放り出されても」
優しく覗き込むヨウタの目は、幼い頃とおんなじでキラキラしていた。
「ずっと、側にいて」
その目が暗く濁ることがあれば、あたしが火をともしてあげよう。
「あたしは、ヨウタが好きだから」
どうしようもない恐怖に体が震える時は、ヨウタに光を当ててもらおう。
「...ああ。ありがとう」
それが、あたしたちの恋だから。




