第2話 アルフィ
私の名前はアルフィ。巨乳で可憐な女の子。実際は変幻自在に見た目と体格を変えられる「ドッペルゲンガー」だから、性別なんて存在しないけど。でも、絶対に正体はバレちゃいけないの。誰かに話すなんて以ての外。誰にでも化けられる人なんて信用出来ないでしょ?「ドッペルゲンガー」は見つかるのが稀ながらも、モンスター扱いだし。だから、冒険者組合にも「人間」だって捏造してきた。
そんな私は今、一人の女の子の前で正体を明かしています。お父さんお母さん。私を責めないで異世界人を責めてください。「ドッペルゲンガー」の親は1人ですけどね。ゲンガージョークです。
追伸。一般人は「ドッペルゲンガー」を知らないみたい。嬉しいのと悲しいのが私の心に混在します。
何となくテンション高めなのは、このからだで人と喋る時にこうしとかないと、素が出てしまうからなの。
「その、『ドッペルゲンガー』っていう魔法?」
「うーん、そんなところ。一度だけ短い時間、好きな相手の姿に変われるの」
誤魔化すことにしました。
「す、好きな相手って...」
【青天の霹靂】リーダーのミアは真っ赤に染まった顔に手を添えて恥じる。あれ、私今女してるよね?
今、私はロックの宿のミアの部屋で、彼女に提案をしている。ミアは今朝に決闘に誘われたらしく、今日一日異世界人の練習を見学していたらしい。そのため、ミアの空いている夜の時間に、一人この部屋に来たの。
ミアが身悶えすると、振動が伝わってくる。2人ともベッドに腰掛けているので。ちょっと身の危険を感じたので、そばの椅子に移動しよう。
「あ...」
残念そうな声を出さないで欲しい。「ドッペルゲンガー」は子孫を残すのに性交は不必要。性欲がなくて助かった。ミアは、性欲があったらすぐに襲ってしまいそうな程に、可愛らしい少女だったから。そんな少女が【ゴールド】級冒険者とは、魔剣士という職業は恐ろしい。
いやいや一体、何を考えているのやら。これが深夜テンションなのかしら。
それはさておき、ミア達とは冒険者ギルドで知り合った。ギルドとは、毎朝更新される依頼を受注したり、都合が悪くて穴の空いたパーティメンバーを募集したり、倒した獣の素材を換金したりする場所。一人で依頼を受けようとした時、「パーティに混ぜて貰いたそうにうずうずしている」と勘違いされて、彼女に声をかけられた。それ以来、【青天の霹靂】とはよく一緒に冒険に出かけることになったのよ。
「それで異世界人との決闘に、代わりにアルフィが出てくれるの?」
「そうよ」
「...でも、それは私が勝たないと意味ないんじゃない?」
それもそうだけど...。
「あの人たちの戦いは見た?」
「うん。今日、稽古を見せてもらったの」
「勝機はどのくらい...?」
「正直...。うん。10%くらいだよ。異世界人って本当に強いね...」
【青天の霹靂】は【ゴールド】級冒険者とはいえ、個々の実力はそこまで高くない。メンバー4人が圧倒的なチームワークでここまでのし上がってきたパーティだ。メンバーに男性がいないのも、チームワークの高い秘訣なのかな。
対する異世界人は、元々の世界でも強い人が「転移」してきたのか、「転移」前の世界自体がこの世界の上位なのか、身体能力も魔力も高い。見た感じ、戦う技術は乏しいようだけど、圧倒的な力の差があれば、そんなことは微々たる問題なのね。
「私は、あいつらの真意を聞いたの。決闘でもなんでも、ミアを再起不能にすればいいって」
「...」
「私は、ミアにはそんなことになって欲しくないから、私がミアになって戦う」
「...アルフィは結構、頑固だもんね」
「...うん。私は、頑固だよ」
頑固でいい。そのくらいがいい。顔かたちは変われど、思いは変わらないでいい。そうでなくては私が私で無くなる。
「アルフィは強いから、勝てるよね?」
「私は強いから、絶対に勝つわ」
「エリ達にも伝えないとね。私じゃなくてアルフィが出るって」
「お願い」
「でもさ」
「...なに?」
「あたしの代わりに戦ったせいで、傷ついたりしないでよ?」
「...わかったわ。絶対に勝ってくるね」
そう言ってあげると、ミアは可愛らしく微笑んだ。




