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婚約破棄から始める物語を、始めましょう!  作者: 無乃海
とある婚約破棄の物語
8/22

第8話 転生者同士の急接近

 第8話は、主人公とモブキャラの遣り取りとなります。


主人公との出会い編の続きです。

 「…フェリ。…隠さなくても、良いよ。実は…俺も転生者だから……ね。」


えっ?!……何ですって?!…カイルベルト様が……転生者?…えっ…?

どういうこと…なのです?…フェリシアンヌは、軽いパニック症状に陥っていたのである。今日まだ先程、会ったばかりの人である。行き成りこんなことを打ち明けられても、普通なら信じられる訳がないし、疑心暗鬼に陥るだけであろう。

しかし、よくよく考えれば、前世の日本の言葉は独特であり、()()()()()()()()()も多い。彼女も…その事実に気が付き、ハッとする。


そうなのである。彼女は独り言を喋っていたものの、一言だって『転生者』と言いう言葉は、言っていなかったのである。この世界には、転生という考えがないらしく、今まで他の人から聞いたことがない。それに…彼女は知っていた。

この世界に、死後の世界のことを語ることはない、と。魂だけが生まれ変わって、別の身体にとか、他の世界へとかへ、生まれ変わると思っているかどうかを、昔…前世を思い出した時に、家族や知り合いに例え話として、訊いてみたことがあり、全くそういう考えがないということを、自ら確かめていたのである。


この時も、フェリシアンヌは『転生者』という言葉は言っていないのだ。

念には念を入れて、悪用されたりしないよう、自衛していたのだから。

日本に来てからは、こういう転生ものの物語を、沢山読んで来た。それこそ、乙女ゲームの次に嵌っていた、と言ってもいいぐらいに。だから、対策方法はそういう物語から学んだ、と言ってもいいだろう。良かったですわ、読んで置いて…。

…とか、本気でフェリシアンヌなら思っていそうだ。


その後、カイルベルトは色々と、前世の話を語ってくれた。彼の前世は、やはり日本人であった。彼も幼い頃から、前世の記憶があったらしい。ここが乙女ゲームの世界だとは、全く気が付かなかったということでは、あったが。彼は前世では、主にギャルゲーをしていたようである。確かに前世も男性ならば、普通は乙女ゲームはしないだろう。ただ、この乙女ゲームだけは攻略したことがあるそうで、何となく覚えているという。


 「前世で、このゲームをしていた人が、この乙女ゲームが大好きで嵌っていたんだよ。よく…一緒に攻略して、と頼まれていたんだ。それで…どこかで聞いたことがあるなあ、とは思っていたんだけど。まさか…その乙女ゲームの世界に生まれ変わるとは、夢にも…思っていなかった。はっきりと気が付いたのは、この前の婚約破棄の時なんだよね…。…あれっ?…この光景を、どこかで見たことがあるかも、と…ね。正直…()()()()()()()()()()()()と、思っていたんだが…。」

 「そうなのですね?…でしたら本心では、ギャルゲーに生まれ変わりたかったとか、ですよね?」

 「そう、そう…。出来れば…自分が攻略していたギャルゲーに、転生したかったかなあ。別に、自分が主要キャラを攻略したいとかじゃないけど、1度くらいは…目の前で、キャラたちを眺めて見たかった、という気持ちもあるね…。」

 「…ふふふ。わたくしも、同じようなことを思いましたわ。悪役令嬢に生まれ変わったのでなければ、例えば…モブでしたら、もっとこの世界を楽しめたのに、とか思いましたもの。残念でなりませんわ…。」

 「あはははっ!…確かに!…君は…油断していたら、死罪になるかもしれないものね?…でも、ハイリッシュ殿は…本当に見る目がないなあ。あの例の彼女…確かモートン子爵令嬢だったっけ?…彼女の何処が良かったのだろうね?…どう見たって、彼女の行動は…おかしかったと言うのに、ね?」

 「…えっ?…行動が…おかしかったとは?…どういうことですの?」

 「うん。彼女はね、実は僕にも…声を掛けて来たんだ。声を掛けて来た時、彼女はこう言っていたんだよね。『モブキャラが…こんなイケメンな筈がない。』ってね。あの時は…意味が分からなかったんだけど、取り敢えず…()()()()()()だとは分かったから、俺からは近づかないようにしていたんだよ。本来ならば、転生者同士として仲良くしたかったんだけどなあ。彼女にバレたら…何だか、利用されそうな気がしたんだよ。だから…なるべく避けていたんだ。」


…うわあ。アレンシアったら、()()()()()()()()()()ですわね…。確かに…イケメンキャラが、隠しキャラの可能性は非常に高いのですが、あのゲームの隠しキャラは、理事長だけでしたのよ。フェリシアンヌは、自信を持ってそう言えた。

何故なら、何度も繰り返しゲームをしては、どのルートも何度もクリアをした挙句に、更には…あのゲームの作成者に、話を聞くことが出来たのだから。

そうなのである。彼女は、あの乙女ゲームのヘビーゲーマだったのだから…。


ですから、絶対に他の隠しキャラは…居ませんわよ!…残念でしたわね!






    ****************************






 「兎に角、彼女を徹底的に避けていた。俺のクラスの女子生徒が、彼女には嫌みを言っていたみたいだった。彼女は俺に助けを求めたりしていたけど、下手に助ければ…気があると、彼女だけでなく皆にも思われそうで、その役は…他の男子生徒に頼んでいたんだよ。」

 「…まあ。そこは…見て見ぬ振りをされても、誰も…責めたり致しませんのに。カイルバルト様は…律儀ですのね?」

 「いや、そんなことはないよ。ただ…見て見ぬ振りをして、彼女に本当に何か()()()()()()()()でも起こったら、俺は…後悔してもしきれない。一応、自分が後悔したくないと言う、自分の自己都合だよ。俺はそこまで…褒められる人間じゃないからね。」

 「そんなこと…ありませんわ。自分の都合からだとしても、中々出来ることではありませんのよ、そういうことは。カイルバルト様は…本当に、お優しいお(かた)なのですわ。」

 「…ありがとう。こんな俺を…褒めてくれて。出来れば、カイと呼んでくれないかな?…()()()…そう呼んでもらいたいんだ。」

 「……はい。……カイ…様」


フェリシアンヌは、カイルバルトの律儀な性格だなあ、と感心していた。

誰でも、自分が嫌な人間には親切にしないし、冷たく対応するものだ。それなのに彼は、()()()()()()()()()うちから、何か遭ってからでは遅いと考えて、実直に対応しているのだ。そういうところ、誰かさんに…似ているかも…。そう思っていると、フェリシアンヌは…ほっこりとした気分になってくる。


本当に…根っからの優しいお方なのですね。そう思って、カイルバルトが否定する言葉を、自分だけは肯定してあげられたらと、言葉にして伝えれば。

カイルバルトから再び、『カイ』と愛称で呼んで欲しいと言われた。自分には愛称で呼んで欲しいと、悲し気な懇願するような顔で言われれば、フェリシアンヌも…これ以上、断ることが出来なかったのである。……狡いですわ。あんなお顔をされて懇願されましたら、断り切れませんわ…。そして彼女は…根負けしたのである。


フェリシアンヌが根負けして、カイルバルトを愛称で呼べば、彼は物凄く嬉しそうに、花が開いたような笑顔で…彼女を魅了したのであった。…うわあ~。

美形の満面の笑顔って、破壊力が有り過ぎですわ……。わたくしもよく笑顔で相手を誤魔化したり、本当に楽しい時や嬉しい時には、満面の笑顔になりますけれど、カイ様は…何となく無邪気な感じがして、わたくしの邪な気持ちも吹っ飛んでしまいそうですわね…。何だか…()()()()()()()()()()()です……。


 「何でかなあ?…君にその愛称で呼ばれると、元気が湧いてくるようだよ。」

 「………。」


カイルバルトはにこにこしながら、フェリシアンヌに今の自分の気分を、正直に伝えて来るのだが…。逆に…フェリシアンヌは、複雑な心境であった。何故ならば、彼女は…前世からお転婆だった、からである。別に、木登りをしたり、男の子の遊びをしたり、という訳ではない。ただ…快活な、お淑やかとは真逆の女の子であったのだ。大人の女性になるにつれて、少しは落ち着いては来たのだが、それでも…言葉よりも行動が先、と言われるほどに活発な女性であったのだ。それは…今世でも変わらない。前世の記憶を取り戻す前から、変わらない。人は死んでも変わらない、という言葉が前世で使われていたが、正にその典型的なタイプである。


それだから、カイルベルトの言葉に、フェリシアンヌは…胃が痛くなる。

これが他の男性、例えばハイリッシュに言われたのならば、間違いなく嫌みだと彼女は思ったことだろう。「元気過ぎる君から、元気をもらった。」という風に。

しかし、カイルベルトに揶揄っている素振りは、全く見られなかった。多分、心から言っている言葉であろう。彼女を褒めているつもりなのかもしれない。

兎に角、悪い意味は含まれていなそうである。


フェリシアンヌはゆっくりと息を吐く。そして、とっておきの笑顔を作って。

まるで、彼女も…カイルバルトを魅了するかのような、満面の笑顔で。

そうして気持ちを入れ替えた。カイルベルトに…深い意味はない、とは思うからこそ、ここは穏便に…お話を流しましょう、と。


 「そう言っていただけますと、わたくしも…心から嬉しいですわ。」

 フェリシアンヌに、上級生であるカイルベルトが関わって来ました。

共に転生者ということで、急激に仲良くなる展開です。

短編ものなので、急展開は…仕方ないですね。

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