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婚約破棄から始める物語を、始めましょう!  作者: 無乃海
とある婚約破棄の物語
4/22

第4話 ヒロイン失格

 第4話は、ヒロイン側の事情です。第三者視点で進みます。


ヒロインの心の声の部分は、本人視点です。

 乙女ゲームでのヒロインである、アレンシア・モートン子爵令嬢。異世界と言えるこの現実世界のアレンシアには、前世の記憶として、乙女ゲームの知識が頭の中に入っていた。それ故に、この世界を乙女ゲームの世界だと、ずっと信じて生きて来たのだ。記憶が戻ったその日から。


アレンシアが記憶を取り戻したのは、まだ幼い時である。庶民として生きていた頃に、人攫いに遭遇し連れ去られそうになった時、怪我をしたことで突然、前世を思い出したのだ。ケガ自体は大したことはなかったが、恐怖から誰か助けてと、心の中で願った際に、フッと思い出した。自分は日本という国で育った日本人で、乙女ゲームに嵌っていたのだと。そして、この世界が()()()()()()()()()()なのだと。

自分の中では1番の難関で、1番好きだった乙女ゲームだと。ゲームの世界と同じ国の名前であり、自分がゲームに登場するヒロインと同じ名前である、と。


そうだった。確か、ヒロインの経歴には、この後にヒロインの母親は、自分の父親に援助を求める、というのがあったのだわ。そして、ヒロインと母親は、母親の実家に戻ることになるのよね。そうよ。ヒロインの母親は元子爵令嬢であり、嫌な貴族と結婚させられそうになって、従者と駆け落ちしたという設定だったわ。

そして、その数年後には、その2人の間には子供が生まれていたのよ。

それが……私こと…アレンシアなのね。


しかし、少しおかしなことに気が付いた。その従者は、ゲームでは…亡くなったことになっていたのに。今の世界には、その従者…私の父親は、生きている。

父が死んでいないということは、母が子爵家に援助を求めることは、ないかもしれないわ。貧しいながらも、私達3人は庶民らしい生活であれば、ごくごく普通の暮らしをしていた。特に貧乏過ぎて、食べる物に困っている訳でもないし、着る物にも困ってなどいないのだから。だけど、私は……困る!…折角、大好きだった乙女ゲームの世界に転生したというのに、このままでは、攻略対象者達に()()()()()()()()()()かも…。それは、嫌!…絶対に…嫌だ!


シナリオとはちょっと違うけど、私が密告すれば…いいんだわ!…そうして私は、子爵家に密告の手紙を送った。すると、その子爵家の遣いだと名乗る者達が遣って来て、私達家族はモートン子爵家に呼び戻されたのだ。シメシメ…。ここまではシナリオ通りよね。母の父親であるモートン子爵は、母の姿を見た途端に渋い顔をしていたものの、私達3人が家に戻るのを許してくれた。多分、貧しい服装を見て、娘が苦労しているのが嫌だったのだろう。


乙女ゲームでは、ゲームが始まる前の出来事は、よく分からない。ゲームが始まるのは、ヒロインが引き取られてからだったし、詳しくはゲームには出て来ないし、そういう解説もない。ゲームサイトの裏情報でも、見た覚えはない。現実になると、流石にそういう裏の出来事も、体験することになる訳で。


母が、嫌いな貴族と結婚させられそうになったのは、どうやら上位の貴族から見染められたことが切っ掛けであった。母は可愛らしい容姿をしており、結婚していても下町でモテていたしね。ただ…問題のその上位貴族は、既婚者だったのだ。

つまり、愛人にと望まれた訳である。この国では妻を2人以上持てるのは、王族…それも王位を継ぐ者だけである。要は…側妃が持てるのは、王様と第一王子だけなのである。貴族は…正妻1人だけである。母が身分が低いことで、断れないと思ったのだろう。貴族の母を側室にとは、図々しい貴族である。


当時、母は従者に助けを求め、従者である父は…お嬢様を逃がそうとしたらしい。

母の父であるアレンシアの祖父は、知っていて見逃したようだった。そういう方法しか、助けられなかったらしくて。一時的に逃げた筈の2人は、結局愛情に変わってしまい、家に戻ることを止めた。家に帰れば、また…お嬢様と従者になってしまうから。祖父も探していたらしいけど、世間的に大ぴらには探せなかった、と。

流石にあの貴族は、他にも被害を受けていた者が大勢いたそうで、王家から罰を与えられたようだった。今は廃爵となっており、他国に追放となったいる。


…ふうん。そんな深刻な裏情報があったんだ~。(まさ)に…シンデレラ・ストーリーだよね?…ああ。攻略するのが、楽しみだわ!待っててね?…()()()()()

アレンシアは、完全に乙女ゲームの世界だと思っていたので、そんな風に感心しては、ゲーム開始を楽しみにしていたのであった。






    ****************************






 子爵家に戻ってからのアレンシアの父親は、子爵家の後押しもあり、商売を始めることになった。元々、商家の息子であった彼は、商売のイロハをよく知っていたからだ。モートン子爵家は特別裕福でもない代わりに、貧乏でもなかった。

しかし、それでも伯爵家以上の裕福さには、全く敵わない。アレンシアの父が商売を始めたことで、モートン子爵家も段々と裕福になって行く。その点からしても、()()()()()()()()()()()()()というのに、アレンシアはシナリオ通りだと疑ってもいなかった。前世のアレンシアは、元々自分に都合よく考える性格であり、少し自己中な性質を持っていたのだ。


そうしてアレンシアは、増々我が儘な少女に育っていく。ゲームの通りに子爵家らしい財産しかなかったら、もう少しは我慢することを覚え、ちょっとは謙虚になったのかもしれない。しかし、伯爵家よりも裕福な暮らしになって、欲しいものは何でも手に入り、周りから可愛いと言われていたら、我が儘になるに決まっている。

それでなくても、彼女は元々前世から、世界は自分中心に回っている、と思う部分があったのだから。


学園に入学するまでは、何もイベントがない。早く学園に入学したい。そう思っていた。その入学するまでの間に、貴族の礼儀など躾に関する教育も含めて、受けていたというのに、アレンシア本人は()()()()()()()を取っていた。真面に授業を受けていたら、貴族の常識が十分に身についたはずなのだが。乙女ゲームでは、ヒロインは優秀であったのに、現実のアレンシアは…下から数えた方が早いぐらい、劣等生になってしまっていた。明るく人を疑うことのない天真爛漫な性格は、裏表のある自己中で奸佞邪智(かんねいじゃち)な性格へと変化している。


アレンシアは今の立場を活かして、味方を付けて行った。飽く迄、本人的には…味方だが、反対の立場から見れば、言いなりにさせられた、というべきであろう。

アレンシアは、自分より立場の悪い令嬢を、自分の友達という配下のように扱い、また自分と同等までの立場の令息を、自分に堕として夢中にさせ、これらの人々を自分の思い通りに動かして行ったのだ。学園でのヒロインの味方となるようにと。


そして…到頭その時がやって来た。アレンシアが待ちに待った学園のイベントが。

しかし、最初のイベントと言える入学式から、ゲームとは違い様子がおかしかったのだが。アレンシアは、「あれ?…こんなイベントだったっけ?」と思ったぐらいで、特に気にする様子はなかった。本来は、成績優秀なヒロインが、入学生代表として挨拶に選ばれるのに、実際に選ばれたのは…悪役令嬢だったのである。

それでもアレンシアにとっては、その次にあるはずのイベントの方が、大事だったのだ。攻略対象者との初めての出会いのシーンの方が。


各攻略対象者との出会いシーン。上手く行ったイベントもあれば、何度も足を運んでも、攻略対象が全く現れないイベントもあり。それまでニンマリしていたアレンシアも、上手く進まないイベントが多くなって来て、焦り始めていた。

一体…どうなっているの?…そう言えば…あの悪役令嬢、フェリシアンヌが虐めて来ないなんて…何で!…ハイリッシュとは順調にイベント熟しているのに…。

他にも…伯爵令息ルートもおかしいわね?…私が幼馴染のはずなのに、あんな幼馴染…いたっけ?…然も、子爵令嬢になってから1度も幼馴染らしいこと、イベント前にもなかったよね?…まあ、いいか。彼が本命ではないし。


それよりも…侯爵令息ルートと教師ルートと理事長ルートなんだけど…。明らかにバクっているのよね~。侯爵令息の婚約者は、年上から年下に変わっているし、教師は私にだけ厳しいし、理事長には…まだ1度も会えていないし。殿下にも…当然会えていないし。このままだと、ずっと殿下に会えないじゃない!…私の1番のお気に入りのキャラなのに!…殿下の正妃になるのが…夢だったのに。


そう、彼女は殿下ルートを目論んでいた。前世の時からずっと、殿下ルートの攻略を目指して、課金してまでゲームをしていたというのに。だから、殿下ルートをやり遂げた時はそれはもう感激して、生まれ変わってこのゲームの殿下に会いたいとさえ、熱望していた時期もあったほどだ。その希望が叶った訳で、後は殿下ルートを成し遂げるまでである。ここは、()()()()()()()()()()()()であると、彼女は疑いもしなかったのだった。


こうなったら…私が自ら、虐めの証拠を作るしかないわね?

…こうして、アレンシアは無理矢理イベントを作り出すことに、したのであった。

 ヒロインのゲームには出て来ない事情も含めた、お話となっています。

ヒロインが色々と遣らかしております。


性格に問題ありですが、前世ではそこまで空気が読まない人ではない、という設定です。まあ、そうするにごく普通の人です。今回はゲーム世界だと信じている為、遣らかした感じですね。

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