第一話 内乱
城下にひしめきあって立ち並ぶ、家々。日が登り、街にはパンを焼く匂いが漂いはじめた。人々が動き出す気配がして、家々の窓とドアが開かれる。道のあちらこちらで「おはよう」とあいさつする声が聞こえた。
そんな中、風でドアのプレートがカタカタと揺れ動く店があった。透明なガラス戸から、ホルンやトランペット、クラリネット、フルートなどの楽器がみえ、楽器店であることがわかる。ただ、ドアに掛けられたプレートには「close」と書かれ、貼り紙があった。紙には「臨時店休日」とかかれていた。
「ここまできて、ここで待機か〜」
国の端の方にあるただ何もないだだっ広い砂漠。昔ここにはラニューカ王国が栄えた場所らしく、もう少し先に進めば城の廃墟があると言われている。真っ赤に燃える色の大地、国内最大級の砂漠だ。もちろん砂漠なだけあって気温が物凄く高く、ここまで来るために使った馬も、側のオアシスの木陰に入ったまま、出てこなかった。
「にしたって、ハルヴィンさんはここでも寝るんすね〜」
のんびりと笑顔のヒロガが言った。
「本来の目的、忘れとうやろうね」
シロイラがボソッと呟いた。シロイラの言う本来の目的とは内乱の制圧だった。3ヶ月ぶりの内乱で小規模なので、普段城についている兵士だけで制圧出来ると思っていたのだが、今日は建国記念日の準備があると言われ、出陣出来ないと言われたのだった。
「それで僕たちが行かないかんごとなったとね」
「ほんと、王族はいいご身分よね」
シルのその言葉にヒロガがビクッと肩を強ばらせた。同時に顔が青くなるのをいつの間にか起きていたハルヴィンは見ていた。だか、他の3人はヒロガの異変には気づいていないようだった。
「みて、あれ」
シロイラが地平線を指差した。シロイラは双眼鏡を持っていたが他の人は持っておらず、最初はユラユラとうごめく陽炎しか見えなかった。
「何も見えないよ、蜃気楼か何かじゃない?ていうかよく見えるね」
「いいえ、あれは…」
ここでシロイラは一呼吸おいて再び口を開いた。
「内乱軍です」