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〜 古き魔術の森 〜 エピローグ 前編

こんばんは

雛仲 まひるです。


古き魔術の森 プロローグ 前編です。


ではどうぞ><

 ☆エピローグ


 ◆チッチとシオン 前編


 ログの村に向かう途中、エグジスタンス=シェルシェ号は盗賊団が襲い掛かられた。

 旅にはつき物とは言え、不運にも程があるなぁ……。

 チッチは心の中で呟いた。


 ――あいつ等が……。


「ふぅ。まったく、しつけぇ野郎どもでしたですぅ。それにしてもアウラちゃんの理論魔法、すげぇですねぇ。ラナ・ラウルの理論魔法とはどこか違うような魔力を感じるですぅ」

 砦からの追っ手をあしらい小高い丘の上で、ほとほと疲れた様子のアイナがアウラの魔術に感じた違和感に感想を述べた。

「魔力? ……ですか?」

「アイナの国、ラナ・ラウルで最も知られて使われている魔法は理論魔法ですぅ。“火・風・水・地”の“理”を理解し“人”が言霊に改して自分の“精神力”(魔力)と魔力を摺り込んだ“杖”などの魔道具を触媒として“魔術書”を用いて精霊世界に干渉し精霊の力を引き出し行使する。これを“理論魔法”と言うのですぅが“四大系統”魔法と呼ばんでるですぅ。長けた者は“魔術書”を用いる事なく行使できるですぅ。勿論、魔法陣も用いるですぅがアウラちゃんの用いていた魔法陣は形などはラナ・ラウルのものとは似ていても別の物に見えたですぅ。それにアウラちゃんは魔法陣を用いず魔法を行使してたですぅ」

「アイナちゃんの住んでいるラナ・ラウル王国は魔法って呼んでいるのかな? その魔法先進国の一国だと聞いています。私のいるイリオン王国では魔法とは呼ばず、魔術としか呼びません。アイナちゃんの言う魔力の源も未だに謎が多く、研究を始めたばかりの魔術後進国なんですよ。魔力についての仮説を以前、チッチが言ってましたが」

「右眼包帯の野郎、魔法……魔術が使えるですぅか! アイナとの旅の途中では一度も使った事も使えると聞いた事もねぇですぅ」

「チッチは魔術を使えないそうですよ。本人が言ってましたから」

「それにしては仮説を起てられる程、魔術について詳しい事が解せんですぅ」

 眉間を寄せアイナはアウラの顔を疑わしげに覗き込んだ。

「チッチはお母様(ドラゴン)から魔術の事を聞いて詳しくなったと言ってたけど……そもそもドラゴンにとって魔術など必要なのかしら? 自身の能力だけでもブレスなど強大な力を持つ種族なのに」

「ラナ・ラウルでは、竜族は精霊魔法を扱える数少ない賢い種族だと言う事が確認されてるですぅ。その力を欲した人間が理論魔法を完成させたですぅ。それで右眼包帯が言う仮説とはなんですぅ?」

「チッチが言うには『俺には使えない。知っていてもそれを扱える(すべ)を持ってないから。何かが起きる動き出す。何らかの力が働いているって事、それは道理だ。例えば、切り出した大きな石を運び出そうとする様で例えれば、人や馬が力の源、石とそれを繋ぐ縄は言わば仲立ち、そして石は陣、魔術の源までは分からないが、限られた人だけが持つ何か特別な意志か或いは、自然界が生む膨大な力を仲立ち出来る者、もしくは両方を出来るものが魔術師。魔法陣は、力を呼び出すための指標じゃないかと思うんだ』だと言っましたけど、私もそう思います。魔術の解明は、まだまだ解せない事ばかりですよ」

「そりゃ――、お国が違えば魔法も魔術も、その力の引き出しも考え方も違うですぅから、アイナの扱う精霊魔法は精霊と契約して自然界に偏在している精霊の力を少しだけ借りて魔法を行使するですぅ。ラナ。ラウルの理論魔法は、主に精霊石と言う精霊の死骸が石化して精霊の力の残る物を主に媒介にして己の精神力を練り、使うですぅ。他の媒介を使う事もありますぅが」

「例えば?」

 興味津々にアウラが尋ねた。

「例えば、魔法陣を描く時に動物の生命や血、珍しい果実や草花等、多岐に渡るですぅ。蛙やイモリなんかや蝙蝠の羽はよく使われるですぅねぇ」

「か、蛙、イモリですか……」

 爬虫類が苦手なアウラは身を抱え、顔を青ざめさせた。


 チッチは船首のデッキで仰向きに寝転がっていた。

「右眼包帯! もう直ぐログの村に着く、ログに着いたら俺と一緒に行って貰いたい場所がある」

「アカデメイアの森と関連のある場所かぁ?」

 晴れ渡る青空を流れる雲を眺めながら、チッチは尋ねた。

「ああ、NOAで確かめたい事がある」

「分かった。俺も興味があるからなぁ。この世に存在する竜属とは、一線を引いた隔絶した能力を持つ母さんの事を知る事が出来る様な気がする。それに俺の事もなぁ」

 シオンの真剣な眼に視線を移しチッチは応じた。

「俺の勘が当たっていれば、知る事が出来ると思う」

 シオンの言葉を聞いたチッチは微笑みで応じた。


 ログの村付近に到着しエグジスタンス=シェルシェ号をシオンのブレスレットに収納し村へと向かった。

 小さいながらも久しい我が家がアイナの翡翠色の瞳に映った。

 アイナの歩みが次第に速くなる。

 一行を置き去り、やがて走り出した。

「お母様――!」

 家の外で洗濯物を天日に干している、母の姿を見付け声を上げた。

「アイナ」

 アイナは母、ナタアーリアの胸に飛び込んだ。

 その後をチッチを先頭にアウラ、ルーシィー、サルサ、シオンと続き一行がログの村に入って行った。


 白銀にブルーマールの映える髪の毛に碧眼の少年に気付いたナタアーリアが声を掛けた。

「あらあら、まあまあ、シオンさんお久しぶりね。あの事件以来かしら……あらあら右眼に包帯等巻いて、ガーディアンのお仕事でお怪我なさったのかしら?」

「残念だけど、俺はシオンじゃない。名前は――」

「お久しぶりです。ナタアーリアさん」

 チッチの言葉を遮り、シオンがナタアーリアに挨拶の言葉を述べた。

「あらあら? まあまあ……、アイナ? シオンさんが二人に見えるわ」

 ナタアーリアが二人の顔を見て驚いているたが、やがて笑顔を浮かべた。

「良かったわね。シオンさん、記憶を取り戻したのですね。そちらのお方はご兄弟かしら」

 嬉そうにシオンに尋ねた。

「いいえ、記憶は完全に戻ってはいませんよ」

「では、そのお方は? それに連れの方々を紹介してくださいな」

「桃色髪の娘さんは、イリオン王国で学生兼、羊飼いをしているアウラさん、そして褐色の肌の女性はルーシィーさんとその付き人のサルサさん、そんでこの右眼包帯はチッチと言う名の山羊飼いでアウラさんと同じ学園に通っている野郎でアイナと旅をしていた一行です。俺はランスを依頼の合い間に探している途中、彼等と合流しだのですよ」

 シオンが一行の紹介をした。

「それにしても似てますね。シオンさんとチッチさん、本当の双子に見えるわ」

 ナタアーリアが、再びチッチとシオンの顔を見比べた。

「立ち話もどうかと思いますので小さな家ですが、どうぞ中へお入り下さいませ。今夜は腕を振るって、歓迎と団欒の宴を致しましょう。見ての通り、小さな村で何もございませんが、ねぇ、アイナ」

 ナタアーリアの微笑み、アイナの頭を撫でた。

「はいですぅ。お母様」

「そうね、ダルベス達も招待いたしましょう。アイナ?」

「何ですぅ、お母様」

「隣にダルベス達の家が建っているわ。呼んで来て頂だいな」

「分かったですぅ」

 アイナがナタアーリアの腕の中から離れた。


 一瞬一行が眼にしたアイナの横顔は、何処か戸惑っている様にも見て取れた。

「ベリルにはラウル湖で魚とラウル巨大蟹にロブスターも捕って来て貰おうかしら、ちょっと遠いけど、川の流れ込む場所では沢山捕れるから、陽が落ちる間には戻れるでしょうベリルなら、スクナ・メラにはお料理の手伝いを頼もうかしら。彼女は騎士でも女性だから、将来の旦那様になるお方の為にも、お料理の一つでも覚えてもらわなくっちゃね」

 楽しげにナタアーリアが笑った。

「お言葉に甘えます。ナタアーリアさん」

 アウラがナタアーリアに、恭しく一礼し家の玄関を潜った。

「お邪魔します」

 ルーシィーがアウラの後に続く。

「お、お邪魔――」

 サルサがルーシィーの後に続こうとし言葉を遮られた。

「お前は、ベリルさんの手伝いをしてきなさい」

「お、お嬢、そんな……」

 ルーシィーの言葉にサルサが肩を落とした。

「じゃぁ、俺も」

 チッチが家の中に入ろうとした時、不意に肩を掴かまれた。

「お前は、俺と行い」

 シオンが小声で声を掛けた。

「めしはどうなる」

 碧眼を鋭くしチッチがシオンを睨んだ。

「はぁっ……、今は、まだ昼過ぎだ。少し前に昼食、喰ったろ……夕食までには、まだ時間がある」

 呆れ顔でシオンが睨み返した。

「そう睨むなよなぁ、分かってるさ。ラウル湖にアヒル形の帆船があると聞いた事がある。乗るのか?」

「お前なぁっっ!」

「冗談だ。行こうか。晩飯に間に合わなくなる」

 チッチに笑顔が戻った。

「……、そ、そうだな。はぁっ……お前って奴は」

 シオンは、夕食を一番に考え微笑むチッチを見て呆れた。


 チッチとシオンがラウル湖に向かおうと歩き出すとアイナが隣に家を建て住み出したダルベス達の家から飛び出した。

「チッチにシオン、二人で何処に行くですぅかぁ?」

 アイナの後ろには、老人と偉丈夫、一人の女性が立っていた。

「ラウル湖だ」

 チッチが短く答えた。

「アイナも行くですぅ」

「来てもいいけど、つまんねぇぞ。今から腹ごなしに剣術の稽古だ」

 すれ違い様、シオンがアイナの耳元で呟いた。

「記憶、取り戻して来る。全て」

「シオン……」

 アイナは二人の背中を身を送った。

「チッチ? 何者です。アイナ様。それにしても似ておりましたなぁ、シオン様に。で、どちらが御本命で」

 ダルベスがアイナをからかった。

 アイナは顔を赤らめた。

「おじじ! そ、それは……ですぅねぇ。二人とも好きですぅが……今はチッチ……」

 語尾が空気に溶けて消えて往く。

「あっはぁはぁ、恋多き年頃ですからなぁ、アイナ様も」

「本当にそっくりだった。着物の違いと右眼の包帯が無ければ見分けられない程に」

 ベリルが口をあんぐりして二人を見ていた。

「で、どうしてシオン君から乗り換えたのです? アイナ様」

 スクナ・メラが、顔を赤らめているアイナに尋ねた。

「の、乗り換えてなんぞおらんですぅ! チッチは……似てるですぅよ」

「見れば分かります。あの二人が似ている事くらい」

「違うですぅ、アイナとですぅ」

 アイナは赤らむ顔の眉を顰めた。

「アイナ様と?」

「過ごして来た過去の時間が……ですぅ」

「チッチと言う少年も、想像を絶する過去をお持ちなのですね、アイナ様同様に」

 アイナは、こくりと頷いた。

「迫害され、疎まれながらアイナ様と離れた場所で同じ様な想いをして生きて来たのですね、彼も。自分と共有出来る悲しみを知る者同士、彼はアイナ様の胸の内に鎮めた痛みを何を言わなくても理解してくれる存在なのですね」

 アイナは、もう一度頷いた。


 ラウル湖の辺でシオンは膝ま着き、当りに人影が無いか確かめ湖面に手の平を宛がった。

 湖面から女性の声が聞こえ出す。

「認識番号四零零五。ナイト・オブ・ウェポンズ。“ナイト・オブ・ディアブロ”、ミディエションニングパートナー。ミディーショナリーSIONを認識、NOAへの扉を開きます」

 ラウル湖の澄み渡った湖面に湖底へと繋がる空洞が口を開いた。


 To Be Continued

御拝読ありがとうございました。


次回いよいよ最終話となります。


ではでは、次回にお会いいたしましょう。

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