私の店でバイトテロが発生した
「なんであんなことをした!」
閉店後の店内に響き渡る声で私は罵声をあげた
ここはカフェレストラン、店長兼料理人の私は新しくバイトを雇ったのだけど
こいつ、初日からやりやがった!
「良かれと思ったんです」
叱られてションボリしているのは、バイト初日の男子高校生ヒロシ
「どう見ても女子高生二人組のお客様に『親子ですか?仲がよろしいですね』と言うのが良かれなはずないでしょう!」
「でもあの貫禄はただ者じゃなかったですよ?」
「ただ者です!ただの女子高生です!お客さんから『私ってそんなに老け顔ですか?』って泣きそうな顔で言われる身にもなって下さい!」
「怒られなくて良かったですね」
「怒られた方がナンボもマシでしたよ!」
ションボリしてるけど、この子なにも反省してないわ!
「年配の男性客にも、なんでカツラを脱げと言ったんですか!」
「え?室内で帽子を被るのはマナー違反かな?と思って」
「あなたがマナーを語らないで!お客さんから『一目で分かるのか(察し)……そうか(絶望)』て言われてみなさい、いたたまれないなんてもんじゃなかったですよ!」
「すいません、まさか気付かれてないと思ってるとはウカツでした」
「謝るポイントはそこじゃありません!」
ゼーハーゼーハー
なぜピンポンで他人の傷口を抉るのですか!みんな泣きそうな顔してたんですよ!
「他にもおしぼり渡す時に『化粧が落ちたら酷いことになるから、お顔は拭かないで下さい』とか、注文の度に原価を教えたり、美人の客に『これ俺からのサービスです』と言ってスマフォのアドレス渡すんじゃないわよ!」
「良かれと思ったんです」
「良くないから言ってるのよ!あなたの辞書にはデリカシーって言葉は無いんですか?」
「失敬な、そのくらい知ってますよ……意味は知りませんけど」
「帰ったら絶対に覚えなさい!私の平穏と世界平和の為に!」
「はっはっはっ、大袈裟ですね」
「……今日の分のバイト代は払うけど、もう来なくていいからね」
「え?もしかして正社員にしてくれるんですか!」
「どれだけポジティブなのよ、クビよクビ!ついでに出禁よ!二度とこの店に来ないで!」
「はぁー、分かりました……でも最後に一言だけ言わせて下さい」
「何?」
「俺の方が料理上手いから、料理人として雇ってくれません?」
「お願いだから今すぐ出てって!(大泣き)」
良かれと思ったんです