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それでも勇者は帰りたい  作者: かつお節EX
第1章 転移と魔導
3/19

帰れない召喚

ダイゴンの説明は概ね終わり。

王の間は暫しの静寂に包まれた。


「勇者よ。」

最初に言葉を発したのは国王だった。


「こちらの都合で呼び立てたことは申し訳なく思う。しかしながら、我はこの国の王として民草を危険に晒すわけにはいかない。何より1人の人間として、これ以上魔の者に侵攻を許すわけにはいかないのだ。

どうか、力を貸してはくれまいか。」


「私は、元の世界に帰ることができるのでしょうか?」

大河は敢えて質問には答えず、彼にとって大事な質問を投げかけた。


「それは、、、」

「それはおそらくできない。王家に伝わる秘術は数あれど、召喚した勇者を帰す術は見つかっていない。」

ダイゴンが言葉を選んでいると、代わりに国王が質問に答えた。


「じゃあ、もし私が力をお貸ししないと言ったらどうなるのですか?」


「どうもならぬ。ただ魔の者の侵攻は続き、勇者召喚に国力を割いた我が国が損をするのみだ。」


「それはこの世界の人間の視点しか答えていません。私はどのような扱いを受けるのですか?」


「この国があるうちは、衣食住を保証しよう。後何年持つか分からんがな。」


「それではほとんど選択の余地などないんじゃないですか?」


「そうかも知れん。しかしこれが現状なのだ。」


ふっ、と大河は息を吐く。頼みを断っても家に帰れる訳ではない。しばらくのんびり王宮生活ができたとしても、この国が攻め滅ぼされるまでもってあと数年程度。これで何を決めろと言うのか。するとそんな大河の様子をみて国王がまた口を開いた。


「本来、人の世と魔界は往来が叶わぬはずである。しかし奴らがこれを成した結果が今の状況である。ややもすると、高位の魔の者を捕縛できれば、異世界との往来も叶うやもしれん。」


「、、、いいでしょう、それを試すことを許可してもらえるのならば、僕の力を貸しましょう。」

(魔界の場所も知らないくせによく言うよ。しかし国王やダイゴンさんの話がどこまで本当かは知らないが、ここで断ってもろくなことにはなるまい。)


「そう言って貰えるとありがたい。わが国としても勇者の帰還方法を模索するよう努力する。」


大筋で合意形成ができたので、大河は今まで放置していた疑問点を解消することにした。


「ところで、先ほど勇者は一騎当千とダイゴンさんが言っていましたが、私は元の世界ではただの人間だったはずです。何かの間違いで召喚されたのでしょうか。」


本当はこれを言うべきか迷っていた。能無しと見なされたら何かひどい扱いを受ける可能性もある。しかし、早速戦場にGo!とか言われて誤解されたまま戦死するのも困るので切り出してみた。


「それについては心配ありません。『勇者召喚の儀』によってやってきた人間は、世界を渡る過程で大きな力を手にします。したがって前の世界における力は問いません。」久しぶりにダイゴンが喋った。


「ああ、そうなんですね。ということは、別に私じゃなくても良かったんですね。」(別に自分の隠された才能とかを期待してたわけじゃないけど、誰でも良かったってそれどうなのよ。)


「勇者がどのように選別されるのかは定かではありません。しかし、勇者の力は人がらによって異なるそうでして、召喚者の願いに応えるような力が授かるように選ばれるという説もあります。」


(よくわからんが、人柄を褒められているのか?取ってつけたような話だな。)

大河が黙っていると国王が口を開いた。


「聞きたいことが他にもあるとおもう。しかし、我もダイゴンも他国との調整やら国内の統制やらでやらねばならない事が多い。したがってこれ以降の勇者殿の対応は3級魔導士のスイロンに一任する。」


すると、今まで横に控えていたうちの1人が歩み出てきて、王に一礼した後大河の方を向いた。

「3級魔導師のスイロンと申します。今後は戦闘指導などを務めさせて頂きます。よろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。」大河とスイロンは互いに一礼する。

「ではスイロン、頼んだぞ」

「はっ」


国王とスイロンやり取りが終わると、スイロンは大河を連れて王の間を後にした。


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