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それでも勇者は帰りたい  作者: かつお節EX
第1章 転移と魔導
15/19

ところ変わってオートランド帝国

オートランドは初登場ですね

オートランド帝国のとある研究所


「できた。この魔法陣を用いれば魔界への転移が叶うはず。前回は失敗したがこれならば間違いはないはずだ!」


本が積み上がった石造りの小部屋の中で、頭髪の少ないメガネの老人が叫びながら立ち上がる。机上の紙には、文字とも記号ともつかない図形が規則的に配置された幾何学模様が描かれている。床には似たような図形が描かれた紙が散乱している。


「コロイド博士、もうほとんど予算が無いんですから試せる範囲の研究にしましょうよ。仮にその魔法陣がちゃんと起動しても魔界に自ら赴く物好きは居ませんよ。」


老人によびかけるのは面長で少し頰がこけた見た目の3~40代の男性である。


「ふん、お前も愚かな皇帝と同じようなことを言うのだな。どんなに国力が落ちようとも、魔導研究につける予算を縮小するなど愚の骨頂だと何故わからん。昔はエルドリアと双璧をなす魔術大国と名高かったオートランドの現状は余りに嘆かわしくて血反吐を吐きそうじゃ!」


「あんまり滅多なこと言っちゃまずいですよ。以前は博士の言も皆が納得してくれましたが、魔導を用いない研究者を蔑ろにしたせいで優秀な人材は殆どエーゼル帝国に取られちゃいましたし、そのせいで上も魔導一辺倒はまずいって風潮ですしね。」


「愚かな、所詮は魔導の修練を煙たがる者共のつまらぬ試みよ。もはや我々の生活と魔導は切っても切れないのだから素直に魔導を学ぶべきなのだ!」


「エーゼル帝国はそうでもないみたいですよ。魔の軍勢に対抗する兵器も魔法を用いないものがいくつか採用されてるらしいじゃないですか。やっぱり誰でもすぐに使えるのは結構メリット大きいと思いますよ。」


頰のこけた男性はお茶をすすりながら書き物をしている。老人との会話は作業のついでと言った感じだ。


「魔導を用いない兵器がどんなものかは知らんが、エルドリアとまともにやり合えばまず間違いなくエーゼルに勝ち目などあるまいよ。人類が歴史の中で積み上げた知識も経験も、圧倒的に魔導の方が上なのだからな!仮にそれらの技術が有用であったとしても、魔導を蔑ろにする理由にはならんではないか!」


「おっしゃることも一理ありますけど、オートランド臣民の心が魔導から離れた以上、上もあんまり強気には出られないんでしょう。というか、あんまり叫んでいると健康に良くないですよ。」


「愚民どもめ、これだから卑しいものどもの考えは理解ができん。何にしても、取り敢えず誰かがこの魔法陣の力を実証すれば、今まで防戦一方だった戦いにも、こちらから攻めるという選択肢が生まれるのだが。カルロ、お前試してみる気は無いか?」


「お断りですよ。魔の者が持ってた魔法陣を元にしたんですから、敵の本拠地に出ちゃうかもしれないじゃないですか。そんなにいうなら博士が試して下さいよ。」


「そういうわけにはいかん。わしはまだまだ魔導の発展に貢献せねばならん。あと50年は引退せんぞ。」


「博士は何歳まで生きるつもりなんですか。それにその発言だと、試した人が犠牲になるの前提になってますよ。帰ってこれなかったら確認できないんですから、魔法陣計画は失敗してるも同然ですね。」


「お前の減らず口は相変わらずだな。もう少し年長者を労るのが人間としての道理だと思わんのか。」


「お互い様ですよ。」


「ふん。」


喋るだけ喋って興奮が収まったのか、老人は椅子に腰を下ろして再び筆をとる。今作った魔法陣に関する報告書と、魔法陣を用いる実験の申請書を用意するようだ。


研究所内は先ほどと打って変わって静かになる。聞こえるのは2人の筆を走らせる音だけだ。



久々の連続投稿です

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