座学
雑談中心な感じです。
「スイロン先生、魔物と魔の者って何が違うんですか。」
「いい質問ですね。魔物とは魔界に巣食うとされる動植物の総称です。これに対して魔の者とは、魔界にいると考えられている知的生命体、すなわち人間のような存在を指します。どちらも体内に保有している魔素の量が多く、魔導を行使することに優れているという特性があります。」
「なんで魔界の場所も知らないのに、そんなことが分かるんですか。」
「そうですね。未だ魔界の所在は定かではありませんが、過去に邂逅した魔物や魔の者を討伐、捕縛する過程でこれらの知見が得られました。
魔物は野生動物の延長と見なせるのでその生態を熟知していれば必ずしも害になるわけではありません。一方で今まで人類が出会ってきた魔の者はいずれも人に対して敵対的な思考や行動が見られる傾向にあります。
彼らの行動の動機や背後関係は定かではありませんが、領土拡張を目論んでいると言うのが、人類側の主な認識です。
魔の者には戦闘技能に秀でた者や、魔物の使役を得意とする者が確認されております。人間の領域に侵攻してくる魔の者と彼らに使役される魔物はまとめて魔の軍勢などと呼称されています。」
「魔の軍勢は、人類の軍隊と比べて強いんですか?」
「以前お話ししました通り、エルドリア王国以外の国々では、体内魔素を供給源とした魔導が一般的です。魔の軍勢は総じて体内魔素の保有量が人よりも多い傾向にあるため。魔導戦闘においては魔の軍勢に軍配があがるでしょう。
しかしながら、エルドリア王国に比肩する国力を持つと言われるエーゼル帝国では、魔導を用いない戦闘方法が多く提案されており、実用化された兵器もいくつか存在します。エーゼルの同盟国や事実上の属国については、これらの兵器を用いた戦闘によって魔の軍勢と渡り合う事が出来ているようです。
当然我がエルドリア王国の精鋭部隊は、魔導戦において魔の軍勢に遅れをとったことなど一度たりともありませんが。」
「すいません。今の話を聞いた感じだと、最初に聞いたような人類存亡の危機って感じはしないんですけどどうなんですか?」
「前線の維持ができていないので、このままいけばトーラス王国の領土はほぼ全て占領されるでしょう。
現在魔の軍勢と人理会議の国々の前線は多国籍軍によって防衛されています。国ごとに任地を割り当てて防衛する形ですね。国主が集う最初の定例決議では、どの国も出来るだけ広い任地を欲しがっだので、国の数でトーラスの国土を均等に割った任地を採用しました。
しかし国によって兵の練度や魔導戦力に差があったため、一部の国が戦線の崩壊を起こしました。以降は定例決議の度に任地の分配方法が修正されていますが未だに戦線を長期間維持することが困難なようです。
私としましてはエルドリア王国に全て任せて、他国は必要な物資を我々に貢ぐ形にすべきだと思うのですが、これについては初期の頃より各国からの同意が得られないようで実現していません。代替案として、エルドリア軍の一部を人理会議の直轄部隊として使役させよという国もありますが正気の沙汰ではございません。」
「弱い国の受け持ったところが綻びになってる感じなんですね。もしかして他の国は滅んでもエルドリアは魔の軍勢と対抗できるくらいに力があるんですか?」
「そうですね。少なくとも私はそのように考えています。」
「、、、あの〜俺、最初王さまに聞いた感じだと、今にもこの国が滅ぶような雰囲気だったと思うんですけど。」
「陛下は常に様々な可能性に対して思考を巡らせておられます。今は他国も表立ってエルドリア王国に敵対をしているわけではありませんが、今後もこのままである保証はございません。そういった可能性も憂慮された上でのお言葉なのだと私は考えております。」
「もしかしてエルドリア王国って、あんまり他国からよく思われてないんですか?」
「エルドリアの歴史は、見方によっては侵略国家とみなせる部分が多くありますからね。実際に武力行使で併合した領土もありますから、他国から警戒されるのも頷けるというものです。
現在はむしろ、エーゼル帝国の方が領土の拡大に躍起になっている感がありますが、エルドリアに対抗できる国としてなぜか信頼を得ているようです。」
「俺としては早く人理会議の国々に仲良くしてもらいたいですね。そうすれば魔の軍勢もなんとかなるみたいだし、帰る方法を探す方に注力できそうなので。」
「そうですね。もし事態が好転すればそういった流れになるやもしれません。いずれにせよ、エルドリア王国は魔の軍勢への対処と大河様の帰還方法を模索する姿勢は変わりませんので、大河様も今のようにご自身の鍛錬に励まれるのがよろしいでしょう。」
遅くなって申し訳ありません。やはり年度始めは何かとやる事が多いですね。
頑張ります。