上陸編 01話目覚めて...
「おい!早く縛れ!」
「慎重に縛れよ!」
声が聞こえる…。
僕は確か、高波に飲まれて、海に沈んで、不思議な光に触れて、そのまま、死んだはず……。
僕は未だ目を閉じたまま考えていた。
僕の名前は松田研二。高校二年生の男の子。
よし、覚えている。
まだ、生まれて現在までの記憶があるという事は、死んでいない事がわかる。
だが、逆に考えれば、生まれ変わって別の生き物になっている可能性だってある。
もし、そうだったら、心から人間であってほしいと思っていた。
仮に動物に生まれ変わっていたら、食べて寝るだけの生活が主であると勝手に考えていると死ぬまでこの生活でいるのは、嫌だ。
僕はそう思いながら、ゆっくりと目を開けた。
「うん……何か……眩しいなぁ……」
一瞬、目に光が入るのが分かり、また、目を閉じ再びゆっくりと目を開けた。
真っ先に見えたのは、青い空だった。雲が1つもない無い真っ青な空だった。
とても綺麗でいつまでも、見続けたいくらいだ。
(あぁ―、なんて気持ちが良いんだ。)
そう思いながら、体を動かそうとしたら……
「あれ……なんか……体が重いな……」
体を動かすと紐に縛られた感覚を感じ、思い通りに体を動かせない事が分かった。
無理に体を動かすと紐に締め付けられ、所々、軽く痛みを感じた。
(何でこんな事になったの? というか何で縛られているの?)
訳が分からなくなり、とにかく、無理にでも体を動かそうとしたら。
チクッ!
「痛っ!」
思わず声を出してしまい、痛みを感じた。例えるなら、床に落ちてある画鋲を足で踏んづけた時にできた痛みだ。痛みは左手の甲である事に気づいた。
(何だ今の痛み?!)
気になって首を左手に向けたら……
「貴様、動くな!」
急に声が聞こえ、振り返って見ると僕のお腹の上に一人の人間が立っていた。
「わぁっ!何だこれ!」
「大きい声を出すな!耳が痛くなる!」
そう言って槍のようなもので僕に向けながらその人間は言った。
その人間の見た目は、ちょん髷で祭りでよく観る羽織とふんどしを着ていた。年齢は見た目で20代から30代ぐらいの男性である。
「あの……あなたは誰ですか?
というか、ここどこですか?」
「何を訳の分からない事を言っている!
ここは、大和の三国の1つ『梅』だぞ」
「梅……?ここ日本じゃないの?」
「日本?…… 何だそれは?」
(本当に知らないのか?……じゃ、ここはどこなんだ?
もしかして、水の中で光輝いていたのと関係しているのか?)
そう考えながら、頭の中で何度も整理していたが結局、答えが出ないまま、僕は黙っていた。
「まぁいい、貴様の処罰は『殿』に決めてもらう。それまで大人しく待っておれ!」
そう言って、時代劇風の男性は地面へと降りた。
(殿……?誰だ?)
とりあえず、彼が言っていた『殿』に会うまで少しゆっくりしていおうと思った。
でも、まさかその『殿』と言うのがあの人物あの人物とは僕自身も驚きでいっぱいだった。