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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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ダンジョンを脱出します

 魔女については精霊からも話を聞いた上で、今後のことを考えていきたいと団長様に言われた。


「そろそろここから撤収しなくてはならないからな」


 話をしていたら、そこそこ時間が経っていた。いつまでもここにはいられないだろう。


「またダンジョンを通るんですか?」


「そうだな。ここまでは馬で移動しているので、飛びトカゲを呼びに行かせるにも誰かを城に派遣しなければならない。時間はかからないだろう。下で待機している者にも一層目からの攻略をさせればすぐだ」


 なるほど挟み撃ちですか。

 というわけで、私は狼煙の魔法の道具を使った団長様と一緒にダンジョンの中に戻った。

 団長様はすぐにフレイさんを捕まえて指示する。


「下の連中にも、ダンジョン内へ入らせる合図を送った。このままダンジョン内を通って戻ることにする。こちらも三層目は既に殲滅しているから、二層目を攻略するだけで戻れるだろう」


「わかりました。あの人物はどうされますか?」


 フレイさんが振り返って示したのは、あの冥界の精霊にまとわりつかれていた女性だ。


「連れていくしかあるまい。交代で担がせることになって、一人は手が空かなくなるのが面倒だが……」


 そう言いながら近づいた団長様は、仰向けにされている女性の顔を見て足を止め、顔をしかめた。


「北のアルマディール公爵領に連絡を飛ばさねばならないな……。この娘は公女だ」


 公女様!?

 どういうことだろう。全く意味がわからない。

 口をぽかーんと開けて驚く私と違い、フレイさん達騎士はやや面倒そうな表情をしただけだった。こういった事態に慣れているのかな。

 そのため私は、彼女がどうして公爵令嬢だとわかったのかとか、尋ねそびれる。


「とりあえず私以外の者に背負わせます。私はあまりそういうことには向きませんので」


「そうだな」


 戦闘となると浮いた気持ちになるらしいフレイさんが、自分の特質をよくわかった返事をして、団長様もうなずく。


「カル、そのお嬢さんを担いでくれ。10分後にオルフェ、その10分後にクインだ」


 指示を受けた騎士さんが、意識のない彼女を担ぐ。万が一のために持っていたらしい毛布でくるんで荷物担ぎだ。

 それでも起きないのだから、完全に昏倒しているのだろう。


 そうして私達は、ダンジョンを出るために移動を始めた。

 フレイさんと前衛の人達を前に、次に私と団長様、最後に公女様を担いだ騎士さんと、念のための後衛に一人がつく形で進む。


 帰りはかなりスムーズだった。

 フレイさんが敵を発見するなり遠距離攻撃。ができる剣スキル発動。

 相手の動きを遅らせたところを一斉に魔法を叩き込み、それが止んだ頃には突撃したフレイさんが至近に迫っていて、刈り取るように魔物を倒していってしまう。

 死霊系の魔物と戦っているのに、フレイさんが死神に見えてきた。


 団長様以下には出番が一切ない。でもこれも、魔物が復活しなくなったからこそなんだろう。

 二層目をそうして進んだ後、そのまま一層目から上がって来た組と合流。

 一層目は魔物があらかた倒されていたので、歩く時間のみでダンジョンを出ることができた。


 その後は重傷者用に準備していた馬車に、公女様を載せる。

 その上で、意識を失っている公女様が、転がって頭をぶつけたりしないように、一人がつくことになる。

 私は最初、係のフレイさんの馬に乗せられるのかと思った。なにせ係なので。


「さてユラさん、いろいろ釈明を聞きたいな」


 フレイさんに手招きされ、そう言われた私は震えあがる。目が相変わらず笑っていない。なんだろう。今回は鶏が勝手に小屋から逃げ出して、飼い主のいる畑のそばで走り回っていたような感覚なんだろうか。

 さてなんというべきか。そういえば団長様には、詳しい話は伏せろと言われていたけど……と思ったところで当の団長様に呼ばれた。


「ユラ、君はこっちに来い。話が済んでいない」


 団長様に呼ばれて私はそちらに足を向ける。

 やった。とりあえずフレイさんの怖い目からは逃れられた。私は心の中で「わんわーん」と思いながら団長様の側に行く。

 着いたとたんに団長様に持ち上げられて、馬に乗せられた。団長様もさっさと私の後ろに座って馬を歩かせ始める。


 フレイさんは先頭へ移動。

 馬車の前に陣取った団長様は、しばらくしてからささやくような声で言った。


「馬車の音でかき消される場所にいるから言うが、魔法のことも、君が話したことも全て、他の誰にも言うな。どれを言っても、説明の過程でお前の異常さを説明しなくてはならなくなる」


 私はうなずいたけれど、団長様は小さくため息をつく。


「それでも、身近な者にはいずれ知られる可能性はある」


「え、なんでですか?」


「君は今回のようなことがあれば、飛び出してしまうだろう」


 大けがをした人がいたと聞いたら、いてもたってもいられなくなる。


「今回のように、ダンジョンの最奥にいたとしよう。しかもダンジョンボスを倒すところを目撃されたらどうだ? その力は一体どこから来たのか、不審に思われるだろう」


 そして言いにくそうに続けた。


「また、通常は精霊をそこまで使役できる者は少ない。特に精霊が代わりに戦闘をすることなどまずない。それを確実に目撃されたら、言い繕えないだろう。そして君はいつか必ずやらかす」


「う……」


 ごもっともです団長様。うっかりとか絶対やる。自分でもわかる。


「なるべく長く隠す方法を探すしかない。とりあえず精霊と話すのはさておき、クッキーのことは大っぴらにしない方がいいだろう」


 確かに。そうするとフレイさんにばれないように作って、こっそり作って置いておくことになりそうだ。

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