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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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秘密をあなたに教えます

 団長様の言葉に、思わず顔が赤くなりそうだった。

 その顔で、そんな危険な言葉を口にしちゃだめです! と思ったけど、言えない……。

 というかさっきから、団長様がなんか変だ。主に言葉の選択が。


 私が心の中で右往左往している間も、団長様は平然とした表情で何かの呪文を唱える。

 その様子からすると、本気で精霊相手にも似たようなこと言ってるんじゃないかこの人!? という疑惑が心をよぎる。


 団長様は私の肩から離した左手を上向けると、そこに白い光の輪が現れた。

 結構大きい。半径だけで20㎝以上ありそう。

 団長様はそれを、緊張から『きをつけ』の体勢になった私の頭から通す。それから首にひやっとした感触があった。目を閉じてしまう。


「どうだユラ」


 言われて魔法がかかったのだとわかり、思わず自分の首に触れてみる。

 何もないので、体の中に溶け込むような魔法なんだろうか。


「あの、何か命令してみてください」


 じゃないとわからないのでそう言ったんだけど、団長様がまたも視線をそらす。

 小さく「これはちょっと危険だな」とか言っていたみたいだけど、え、あの、まさか団長様。私なんかの台詞で何か想像したんです?


 そう思うと、私の方まで恥ずかしさで顔が赤くなりそうだった。

 まごまごしていると団長様が命令内容を思いついたらしく、私に言った。


「では従えユラ。自分の作った紅茶なんかより、泥茶の方が美味しくて最高だと言ってみろ」


「!!」


 泥茶とは、薬草をすりつぶして粉にしてお湯に溶かしたものだ。民間療法でよく使う薬だけど、ものすっごく味には配慮されていない代物だ。青臭い、泥みたいな舌触り、苦いと三拍子そろった、大人でも逃げ出す代物。

 団長様、それはあまりにひどすぎる!

 そうは思っても、私の口が勝手に動いた。


「じ、自分の作った紅茶なんかより、泥茶の方が美味しくて最高……です」


 あ、涙が浮かびそう。

 だって泥茶を最高って言うなんて、ありえないもの! 紅茶とは天と地の差があるというのに、自分の作った紅茶が、マズイものだと言うみたいで心がしんどい。

 これが従属の魔法の力かと、私は心底恐れを感じた。


「効いているようだな。これでいいだろう」


 無理に言わせたのを気の毒に思ったのか、団長様がよくやったと私の頭を軽く叩く。


「ここまでしたんだ。君が私や騎士団に危害を与えるような考えを持っていないと、信じる。だから話してくれ」


 私はうなずいた。


「はい……。その、まず今回は、ダンジョンへ行った団長様達のことが気になって。クッキーで精霊にお願いできるのはわかっていたので、そういうことも教えてもらえるかなと、軽い気持ちで試してみたんです」


 普通に話す分には、魔法による命令は発動しないみたいだ。なので、私は前世の記憶とかゲームとかのことは外して話した。


「そうしたら精霊に、重傷者が出たこととかを聞いて。何か手伝えないかと思った時に、精霊に教えられたんです。私の魔力なら、ダンジョンで魔物を復活させている魔法を破れるからって」


「君の魔力?」


 私は説明するより見せた方がいいだろうと、測定石を取り出して開いて見せた。

 花のように広がった測定石は、魔力の部分だけが異常な光の長さを示す……。

 というか、この魔力の長さ、十万ないと思うんだ。私、表示限界に挑んでしまったらしい。

 さりげなく三重線になってたけど、たぶんこれ、足りてない。けど正確な数字は求められてないと思うので、よしとする。


「これはいつからだ?」


「森の警戒ラインへ、導きの樹の精霊を元に戻しに行って……渦に飲まれた後からです」


 私は喉がからからに乾いた気がして、唾を飲みこむ。


「精霊によると、あれは魔力の渦だったそうです。私はそれを取り込んだらしくて。その後です、魔力が異常に上昇したのは」


 嘘じゃないのですらすらと言える。


「他の数値も、君のレベルからするとおかしなものがある。」


 測定石を見ていた団長様は、他の数値にも顔をしかめた。

 討伐者として駆け出しの状態の私では、たしかに数字がおかしいのだろう。三重線は異常だけど、他のも異常だと気付かれた。


「何か理由を精霊から教えられているだろう?」


 団長様は確信をもって、私を問い詰めた。


「魔力が高いだけで、君が泣くほど追い詰められるとは思わない。意外に楽天的な質のようだからな」


 はいごもっともです……。お見通しすぎですよ団長様。

 私は一度深呼吸してから、ぎゅっと目を閉じて白状した。


「精霊には『魔女』と呼ばれるようになりました」


 スキルに魔女があるだなんて言いません。石じゃそこまでわからないもの。

 どんな反応をするだろう。

 びくびくして私は待っていたけれど、団長様は何も言わない。見れば、思考の中に沈んでいるようにじっと目を閉じていた。


 何を考えているんだろう。

 嫌わないと言った団長様は、魔女だと聞いても顔をしかめたりはしなかったけれど。でも、私をどうにか閉じ込める算段でもしているんだろうか。

 やがて団長様は目を開く。


「教会の司祭は何も言っていなかったところからすると、精霊融合実験の直後にはそうではなかったはずだ。では、魔力が増大した結果か」


 団長様は、どの時点で魔女と精霊に認識されたのかを考えていたようだ。最初から魔女だったなら、登録する時に司祭さんが異常に気づかないのはおかしいらしい。


「実験が成功したということになるんだろうな、お前は」


「たぶん……」


 うつむき、自然と手を握りしめてしまう。


「なんにせよ、魔女の疑惑がある人物を、どうやって保護すべきか……」


「保護……ですか?」


 まだそう思ってくれている? じっと見つめると、団長様に苦笑いされた。


「追い出さない、飼うと言っただろう。君は精霊ではなく人だ。保護するためでしか飼うなんて真似をする気はない」


 魔女だとわかってもそう言ってくれたことに、私は泣きそうなほど安心したのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここでユラの話は終わりでこれからは従属の契約で 秘密を話し、頼みを受け解除されたとしても それが当たり前になった洗脳されたユラの 話になるのですね 気持ち悪いですね
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