表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/259

死霊のダンジョンはクリア!

「ソラ。これってもしかして」


「そうだね。復活する魔術が解かれたみたいだ」


 そうして微笑んだソラは、待機していた八体の風の精霊に言った。


「さあ、あの精霊達を冥界に送りかえしてしまおう」


 精霊達が再び可愛い剣を手に、突入していく。

 今度は私が冥界の精霊に、動かないでと命じているので、反撃も少ないようだ。


「彼女はどうしよう」


 金の髪の女性は、この時もずっとぼんやり立ったままだった。もしかすると冥界の精霊の影響で、意識がないまま立っているのかもしれないけど。


「…………」


 そこでふと、すでに死亡済みだけどゾンビ状態になっていたらどうしようと思った。

 けど今のままでは確認しようがない。

 まずは戦闘に巻き込まれてしまうのを避けさせようと思った私は、自分と彼女に防御魔法を使う。なけなしのLV1の魔法だけど、無いよりはいいだろう。


 この防御魔法、ボタンを押すと選択肢が現れる。彼女は私の方で名前を把握していないからか、《謎の女性》と表示されていた。


 精霊達も、一応彼女を避ける様に冥界の精霊を誘導してくれた。

 今度は私も参戦した。

 この後は、端でうごめいている魔物との戦闘が始まる。その前に戦いに慣れておきたいというのもあったし。

 ボタンをぽちぽちと押して、雷と炎と風の魔法を連打した。


 魔法での戦闘って楽だなと思っているうちに、冥界の精霊がとうとう消滅した。

 煙になってどろんと消えてしまう。そして復活してくる様子もない。


 私は女性に駆け寄った。しばらくしたら、通路側にいる魔物達が襲ってくるだろう。その前に彼女を連れて、ソラに移動してもらうつもりだった。

 金の髪の彼女は、冥界の精霊がいなくなったとたんに膝をついてしまった。


「大丈夫ですか!?」


 声をかけたけれど、ぼんやりとしたまま目を閉じて、完全に脱力してしまう。

 え、気絶?

 こうなっては仕方がない。抱えて移動するには腕力が足りないので、まずは寝かせておいて魔物に対処しよう。

 そう思ったのだけど。


 戦い始めようとしていた精霊達が、そろそろと私を囲むように集まって来る。

 何かとんでもない魔物が出たのかと思いきや、むしろ魔物の方は、何匹かは後方へ向かって移動しようとしている。

 それがなぜなのか、数秒かかって気づいた。


「あ、やば」


 つぶやいた時、白い光が弾けると同時に何体もの魔物が吹き飛んだ。

 私達の側にいる魔物にぶつかり、それでヘイトを引いてしまったのか、ほとんどの魔物がそちらへ向いてしまう。

 掛け声も聞こえた。

 その声のいくつかに、ものすごーく聞き覚えがある。


「来ちゃった。どうしよう」


 魔物は奥の方から削られていっている。復活する気配はみじんもないので、間もなくたどり着いてしまうだろう。

 というかなぜこんなに早いんだろう。なんて思ったけど、理由は一つだ。

 プレイヤー役の精霊達が連れて行ってしまったから。一階層分ぐらい、魔物と遭遇せずにここまで来たのなら早いだろう。


 団長様達のことはこれで、もうできることはないし心配はないと思う。

 それより自分が見つかることの方が問題だ。

 今すぐソラに連れ帰ってもらうか。でも気を失った彼女をそのままにしていて、魔物が彼女を襲ったらどうしよう。

 まごまごしていたら、ソラが私の肩をつついた。


「ユラ、それじゃあね」


「え?」


 それじゃあって、私のこと置いて行くの?


「僕、リュシアンに見つかるわけにはいかないから」


 ええええええ!?

 叫びたいけど、叫んだらますます魔物の壁の向こうにいるはずの騎士さん達に声を聞かれてしまう。


「どういうこと? 団長様と何か因縁でもあるの? それより待って、私と彼女も連れて行ってほしいの!」


 緊急避難としてソラに頼んだけど、首を横に振られてしまった。


「彼女を連れて行くのなら、クッキーを追加で十個かな」


 十個あったらいいの!? と驚くと同時に、今クッキーが一つもないことに気づいて頭をかかえた。

 あと私のお願いでも、彼女を移動させるのは精霊的に別勘定、ということになるのね。


「それに君、もう見つかってるよ」


 そう言ってソラは姿を消した。


「うそ!」


 置いて行かれてしまった。確かにもうこの状態なら、私でも昏倒している彼女を守れるだろうけれど。

 なにより見つかってるってどういうこと……。

 私はおそるおそる、魔物の壁の方を見た。


 死霊の魔物達を斬り裂く光が、空中を薙いだ。

 一気に五体が姿を消す。

 ふいにできた空間に、そんな恐ろしいことをした人の姿があった。


 銀の髪を揺らがせて、紫の瞳でじっとこちらを見ている……団長様だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ