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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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精霊(大)召喚?

 焼いておいてよかった! と思いながらクッキーを10個、台の上に並べる。

 精霊がダメ出しをしてきて、8個を円になるように並べて2個を中央に置く。


 おお……なんだか魔法っぽい。

 すると精霊が指笛を吹き、かまどや開いていた窓の隙間からゴブリン姿の精霊ばかりがわっと集まって来た。その数7人

 8人全員でクッキーを楽しく食べた精霊は、完食後にみんな一斉にバンザイの体勢をとった。


「おいでおいで」


「来る来る」


「魔女が呼んでる」



「みんなの魔女が」


「たすけてあげなきゃ」


「こたえなきゃ」


「ぼくらの希望」


「ぼくらの王様!」


 唱えるように精霊が言ったとたん、中央の空気が揺らめく。揺らめきが輝きを放った一瞬の後、二つのクッキーの前にあの大きな精霊がいた。

 普通の精霊が大きくなっただけなんだけど、十分に特別に見える。

 精霊がさっき『ぼくらの王様』って言っていたけれど、それは彼のことなんだろうか。


 ぼんやりと考える私に、大きな精霊はにこっとゴブリン顔で微笑んだ。その笑顔にとても温かみを感じた。


「呼んでくれてありがとうユラ。また会えてうれしい」


 手を伸ばしながら言うので、私もなんとなく手を握り合おうとする。けど相手の手がちっちゃいので、私の両手の人差し指を彼が握る形になったのだけど。

 握手を済ませた後、私は気になっていることを尋ねた。


「あの、あなたのことはどう呼べばいいの?」


「特別な名前はないけれど、僕のことは『ソラ』と呼んでくれれば」


「ソラ?」


 って、あのお空のことだろうか。でも大きな精霊はうなずくので、たぶんそれでいいのだろうと思う。すると、ソラはお空の精霊なのかもしれない。


「あの、教えてほしいのソラ。今ダンジョンに行っている私の仲間が大変なことになっているらしくて。せめて死霊を復活させないようにできるかどうか、知りたいの」


 復活しなくなれば、多少は強くても団長様達だけで対処ができるはず。重傷者もそうそう出ないだろう。


「私の中にある大量の魔力を使って、どうにかできるかな?」


 もしできるのなら、どんな手を使ってでもダンジョンへ行って、団長様やフレイさんを助けたい。

 私の問いに、ソラは考えるように数秒目を閉じた後、うなずいた。


「これならできると思う。君のお茶の力があれば」


「え、お茶!?」


「うん。お茶という形で整えられた、君の魔力がね」


 ソラがにこっと微笑んで、問題のお茶について教えてくれる。


「いつも通りにお茶を淹れて。カップに注ぐ前に君の魔力を込めるんだ。持っているポットに手から熱が移るように」


 なるほどと思い、9人の精霊が見守る中で私は普通の紅茶を淹れる。

 茶葉をポットに入れて、お湯を注ぐ。それからじかにさわると火傷をするので、ミトンをしてからポットを包み込むように手を当てた。


 三分の蒸らし時間の間、じっと言われた通りにする。

 じわじわと、自分の中から熱が移るように想像しながら。

 最初はよくわからなかったけれど、ようするに魔法みたいなものなんだろうなと、魔法を使った時のことを思い出したとたん、するっと流れができた気がした。


「それでいいよユラ。カップに注いでみて」


 ソラの言う通りにカップに少しだけ移すと、ふわっと光る粉が混ざっているような湯気が立つ紅茶になった。


「きらきらしてる……」


「魔力が沢山こもっているからね」


 はて、どれくらい移動したのだろう。興味本位でステータス画面を確認してみたら、一万近くMPが減っていた。


「おおおおおお」


 その数字に驚き、それでも余裕のある自分のMPにさらに目を見張っていたけれど、すぐ我に返る。


「あ、注いでしまった分はもうダメよね」


 まさかカップのまま持って行けない。ポットに残っているのを水筒に入れることにした。


「あとはどうやって持って行くかだけど」


 イーヴァルさんに正攻法で頼んで、どうにかしてくれるだろうか。精霊のお告げと言えばいい? でもダメだった場合、閉じ込められたりしたらどうしよう。そこまでいかなくとも、監視の目がきつくなるかもしれない。


「あの、ソラ。もう一つお願い聞いてくれる?」


 水筒に詰め替えている間に、クッキーを食べていたソラが振り返る。


「なんだい?」


「瞬間移動とか、そういう魔法があったら教えてもらえるかしら? 隠れてダンジョンへ行きたいのだけど」


 あと9万もあるMPを使えば、いかようにもできるはずだ。そう思ったのだけど。


「君のお願いは、死霊の復活を止めることなんだろう? そこまで面倒は見るから大丈夫」


 そうしてソラが指を弾いた。

 するとぽわっと精霊が8人ほど増えた。うす緑色の鳥みたいな精霊だ。


《風の精霊:くえすとじゅちゅー》


《風の精霊:メインじゃないけど、ダンジョンでレベル上げする》


《風の精霊:ダンジョンて何か持っていく?》


《風の精霊:ふつーに倒せばいいし》


 しかも、あのプレイヤーっぽいことばかりしゃべる精霊達だった。


「さぁ仲間は揃った。あとはダンジョンへ送ってあげよう」


 ソラの言葉にうなずこうとして、私はハッと気づく。

 このままだと、団長様達と顔を合わせたらばっちり私だって気づかれて、即刻連れ戻される!


「ごめん、ちょっと着替えさせて!」


 私は急いで変装をするため、かまどの火を消し、閉店にした扉の前に急いで書いたメモを張りつける。


 ――体調不良のため、部屋で休みます。店主――


 これでイーヴァルさんが戻ってきても、店を閉めても大丈夫。

 水筒を持ち、精霊達と一緒に自分の部屋まで大移動をする。

 というか精霊は私しか見えていないわけで、通りすがりに騎士の従者がいても、私が急いで走っているとしか見えないはずだ。


 部屋に駆け込んだら、いつだったか町に行った時に身に着けていた、覆面やらマントやらを引っ張り出す。

 素早く顔を隠した怪しい恰好になった私は、ソラに指示されて外へ出た。

 外からじゃないと移動ができないそうだ。

 そうして庭に出た瞬間、こちらに向かってきていたイーヴァルさんの姿が見えた。


「そ、ソラ、急げる!?」


「大丈夫だよ」


 うなずくソラ。

 そんな精霊達と私を中心に、円を描くようにつむじ風が吹く。


「ユラ!? 体調不良と書いてあったのに、一体何をしているんです!?」


 近づいてきたイーヴァルさんは、壁のように立ち上がった風の向こうで、表情がはっきりと見えない。


「すみません! ちょっと団長様達が危機なので手伝ってきます!」


 そう言った瞬間、黒い風が渦巻いて壁を作り、イーヴァルさんの声が遠ざかった。


「はあああああぁぁぁ!?」


 疑問に思うのも仕方ないです。けど、許してくださいイーヴァルさん。

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