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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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ごめんなさいと約束を

「遅らせるよりも、先に店を開いておく方がいいだろう。予定通りに済めば、翌日は足りないだろう魔力の回復や気力の回復をしたがるはずだ」


 団長様の言うことはもっともだとわかる。

 先にお店を開いて、利用してもらってどういうものかわかってもらう。

 それからダンジョン攻略に行ってもらったら、間違いなく何割かの人は、早めの回復をしたくなってお茶を飲みに来てくれるだろう。


「その日はイーヴァルを残して君の様子を見させる。だが、オルヴェも現地に同行させることになった」


 なんと、本当に大規模移動ですね!? あのダンジョンってそこまでするような代物じゃなかったはずだけど……。

 ちらっと頭をよぎったのは、ハーラル副団長さんに関わる小さなクエストの結果が、大きなことになった顛末だ。

 また……なんかあるんだろうか。


「そのダンジョン、かなり厳しい戦いになりそうなんですか? オルヴェ先生までついて行くんですよね?」


「先行した部隊が、思ったより重傷を負った。おそらく最深部まで行く途中で、場合によっては命の危機に陥る可能性がある者も出ると判断した。だからオルヴェと、なるべく魔法に長けている者を優先して連れて行く」


 やっぱり、ゲームより強すぎませんかね?

 死霊相手だから、魔法で固めた布陣なのもわかる。剣でもいけるけど、その場合は死霊に対して有効な技を持っていないと厳しい。でも、元の20LVぐらいでどうにか得られる技じゃ、たぶんダメだってこと……だよね?

 戦闘狂なフレイさんを連れて行くって……。魔物の数も多すぎなのかな?


「あの、それなら私にかまわずイーヴァルさんも連れて行っては……」


「だめだ」


 団長様に即答された。


「城に残って指揮をとるのはハーラル副団長に任せて行くが、私も不在だ。万が一の場合、オルヴェを迅速に呼び戻すなり対応が取れる者は置いて行かねばならない。そのためイーヴァルはお前から目を離さないように言ってある」


「…………」


 お店を休みにしても、監視は必要って……これはまさかと私は思う。

 団長様、やっぱり私のこと警戒してたりするのかな。実はさっき魔力を確認するって言った時、おかしいことに気づいていたリして。


 そう考えると寂しい気持ちになる。

 私が隠し事をしているからだというのはわかってる。誰かが巻き込まれて死んでいたかもしれないような、竜巻。なのに私が落下したとたんに消えたのだ。

 関連を疑うし、でも私はわからないと言うし……団長様はそれを、私が理由を知っているけれど隠してると思っているようだし。


 でも言えない……。

 自然とうつむいてしまうと、団長様が立ち上がった。

 言うだけ言ったから立ち去ることにしたのだろうか。団長様が移動を始めたので、とりあえずおやすみの挨拶だけはしようと顔を上げると。


 テーブルを回り込んですぐ側に立っていた。

 そうして私の頭にぽすっと手を置く。

 大きな手の感触に、私は思った。

 団長様は不安にさせないようにしてる。私を警戒しているわけじゃない、心配してくれているんだって。

 さらに団長様が言う。


「……君が、あの一件から何か悩んでいる様子だというのは知っている。オルヴェもそう言っていた」


「先生も……」


 沢山の患者さんをみている先生だ。私がごまかしていることもわかってしまったんだと思う。


「それでも君が何かたくらんでいるわけじゃなく、不安そうなのもわかっている。そのために人を置いて行くだけだ。何かするかと思って疑うようなら、君と一対一で私も会おうとは思わない」


 団長様の言う通りだ。危険人物だと思っていたら、団長様は一人で会おうなんてしないだろう。

 嫌われているわけじゃない。そう思うと、心細さが緩んだせいなのか、まだ信じてくれているんだと思えたせいなのか、急に目が熱くなった。


 ぽろりと涙が転がり落ちた時には、自分ってこんなに涙もろかっただろうかと思ってしまった。

 でも泣いたら困らせてしまう。そう思って手で拭っていたら、ふわっと抱きこまれた。


「!?」


 たぶん、顔が当たっているのは団長様のお腹あたり。背が高いから多少かがんでくれてるみたいだけど、座っている私を抱えようとすると、そうなってしまうんだろう。

 おばあちゃんと違って柔らかくないし、着ているものも厚地なのでふんわりともしてない。けど、頭をくるまれるような形だからか、布団にくるまったような安心感がある。


 いや、きっと異性にこんなことされたらもっと慌てるべきなんだと思う。

 なのに妙に落ち着く気がした。

 あったかいし。

 さっき疑われてるかもと思って、血の気が引いたせいだろうか。


 よくわからないけれど、ずっとこのままでいてほしいような気がする。きっと甘えたいからだ。

 ……何も聞かないで。でも見離さないでって。

 ものすごく身勝手だと思う。甘えてしまうのも、結局は保護者だと言ってくれるから、お祖母ちゃんの代わりと思ってしまっているんじゃないだろうか。


「そのうちに、君が話したいと思えるように願っている」


 しかも団長様は待つと言ってくれて、私は申し訳なくてたまらない。


「ごめんなさい……」


 ここまでお見通しなら、もう謝ることしかできない。

 謝罪を口にすると、涙がぼろぼろあふれてくる。

 隠し事してますと白状した私の頭を、団長様はわかっているというように撫でてくれた。


 優しくて、苦しくて嬉しい。

 でもずっとこのままでいちゃいけない。

 だから、自分から団長様から離れた。引き離すようになって申し訳ないけれど。


「あの、服濡らしてしまうので!」


 涙声でそう理由をでっちあげてから、ぐいっと自分の目元を袖で拭った。


「……あと、いつかちゃんと話します」


 このまま私が変化していけば、そのうち隠せなくなるのは感じていた。そうなったら話さずにはいられなくなるだろう。

 すると団長様が小声で笑って言ってくれた。


「いいだろう。問題が無い限りは待ってやる」

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