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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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ちょこっと魔法の練習を

「まずは問題なさそうな魔法からいこうか」


 午後、さっそく魔法の様子を見てくれることになったフレイさんと一緒に、城内の広い中庭へ行く。

 外周を走らされているどこかの隊の騎士達が、お? という顔で私とフレイさんの方を振り返っていた。


「まずは火球からいこうか。初心者は目標がそれやすいから、これを目印にしようか」


 そう言って、持ってきていた槍を一本、地面に突き立てる。


「これ、壊れませんか?」


「大丈夫。壊れてもいいっていうか、もう壊れかけてるやつだから」


 と言って、槍の石突の方が折れてガタガタになっているのを指さした。

 それならばと私は火球LV1を使ってみる。


「これ、攻撃対象ってどうしたら?」


「当てるものを念じればいいよ」


 なるほどと思いつつ、画面に出した呪文をとなえる。

 伸ばした手の先に、お化け屋敷の火の球みたいなものが現れて、ひょいっと槍に向かって飛んで行った。

 火球が当たった槍は炎に包まれる。そして柄が炭になった。

 当たったら普通に大火傷して死んでしまいそうだ。こわい。

 フレイさんは「よくできた」と褒めてくれた。


「そのまま他の魔法も試してみよう」


 促されて、風LV1を使ったら炭化していた槍の柄がぽっきり折れた。

 雷LV1は地面に刺さった矢じりの周辺が黒くこげ、しばらくバチバチと放電が起こった。


 防御盾の魔法は、唱えた上でフレイさんが私が盾を出したはずの前面、腕を伸ばした距離の辺りを叩いてみて確認する。

 コンコンといい音がした。


「ああ、これで少し安心できるよ」


 四種類の魔法が使えるとわかって、フレイさんはほっとした表情で言った。

 ただひたすらごめんなさい……。


 でもこうして使ってみると、やっぱり興味が湧くのは『最大出力の魔法を使ったらどうなるのか』だ。

 実験するためにはお城を抜け出さなくちゃいけないし、転移移動の魔法なんてものが使えなければ、こっそり行って帰るのも不可能。


 というか転移には三通りの方法がある。

 魔法使いとして高位魔法を使えるようになるもの。リュシアン団長様が一度ストーリーで使っていたらしい、精霊による転移。そして敵がよく使う冥界術。

 確か、私を実験したあげく、殺そうとした魔法使い達が何か言っていたな。『冥界術なら』って言って逃げようとしてた。


 あれ、ゲームでも何度か敵が使うのを思い出したんだけど、一回使う度に死体が必要になるらしい。私はあの時、転移魔法のために死体にされそうになっていたわけだ。

 ……しみじみと、助けてもらえて良かった。


 高位魔法については、そのうちお金が溜まったらひっそりと魔法書を買って習得してしまおう。

 大きな魔法も、そのうち嫌でも使うことになりそうだし、今の所は大人しくするしかない。


「今日はありがとうございました。とにかく使えることがわかって良かったです」


 そう挨拶すると、フレイさんは気遣うように私を見て言った。


「何個も一気に魔法を使ったけど、MPの減りで具合が悪くなったりはしなかったかい? 一応測定石で量をチェックしておくといい。見方はわかるかな?」


 親切心から見方を教えてくれようとしたけど、対する私はぞっとした。

 ヤバイ。こんなの見られたらすぐに異常だってバレるでしょ!


「大丈夫ですよ! 紅茶を作るのにも毎回MP使ってますけれど、十杯や二十杯作っても全然へろへろになりませんから! 足りなくなってそうだったら、自分のお茶で治せますし」


 魔法の三つや四つ、たいしたことありませんと主張すると、フレイさんも「そういえばそうだったね」と納得してくれた。


 ああ良かった……。

 私はこれ以上詮索されると困るので、魔法の練習を終了にさせてもらった。


 そうして昼間じゃないと目に悪いので、部屋でちくちくと縫い物にいそしむことにした。

 ティーコゼー欲しいじゃないですか。

 共布のティーマットもどうせなら作りたい。

 なので布を切りまくって、端から縫っていく。


 この世界にキルト綿なんて無いので、綿詰めるのがちょっと大変だったけどなんとか一個。マットも一個。

 肩がこってきたところで、訪問客があった。

 部屋の扉をノックされて出ると、なんと珍しくもイーヴァルさんだった。


「手短に用件だけを伝えます」


 ごほんと咳払いして、イーヴァルさんは私の返事を聞かずに言った。


「喫茶店で菓子の提供をしたいとのことでしたが、団長の許可は頂きました」


「ありがとうございます」


 やった。お菓子作っていいって!

 何にしようかな。日持ちするもの……むしろその日私が食べたいものがいい。サンドイッチも作ったっていいよね?

 夢がふくらむ私に、イーヴァルさんはもう一つの用件を伝えた。


「一応、どの茶を出すのか種類を決めておくようにと、団長から伝言です」


「あ、わかりました。来て下さった方が選べるようにしてもいいんですよね?」


「おかしな効果のある茶でなければ、あなたが作れるものを出して大丈夫です」


「わかりました、メニューを作ってお渡ししますね!」


 どうだ、メニュー表用の綺麗な紙も欲しいなぁ。

 ほわほわと想像する私に、イーヴァルさんは茶器等の納品日を伝えてくれる。それが一週間後。

 かまどの設置は初めていて、あと三日もすれば出来るとのこと。


「そしたら10日後ぐらいにはお店が始められますねぇ」


 うっとりとしながら言う私に、イーヴァルさんは「料金設定の計画についても出して下さい」と付け加えてから言った。


「10日後なら、ちょうど魔力回復の茶を欲しがる者が増えるでしょうね」


「何か討伐のご予定が?」


「ええ、死霊が出没する場所を発見したので」

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