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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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初めての魔法

 帰って来て、さっそく私は魔法書を開いた。

 レベルが達してなければ、強い魔法は見えないからと言われたし、それがあるからフレイさんは特に問題ないと思ったみたいだけど。


「……全部読めるわこれ」


 通常の魔法使い20レベルまでの魔法がこれで覚えられるはずだけど、全部見える。

 魔女のレベルは10だったはずだけど、どういうことだろう。

 ステータス画面を開いてみたら、


《魔法:ヒールLV1を習得しました》


《魔法:火球LV1を習得しました》


《魔法:風LV1を習得しました》


《魔法:雷LV1を習得しました》


《魔法:防御盾LV1を習得しました》


 延々と魔法の名前が羅列されていた。


「え、本開いただけでこんなことになるの!?」


 読まなくてもいいとか、どういうこと……。呆然としていると、自動的な魔法習得は完了したようだ。しかし私は、何をどうしたらいいかわからない。呪文、覚えなくちゃいけないはずなのに。


「どうなってるの?」


 とにかく最初の魔法のページだけでも読んだ。


「えー、なになに。深き場所、生命の源、目覚めよ……でヒール?」


 確か人の怪我じゃなくても、初級のヒールは使えたはず。というわけで外へ出て、建物の側に生えていたタンポポの葉をちょっと切らせてもらう。

 切った葉を切り口に添えながらヒールを唱えてみた。


「おおお」


 ちゃんとくっついた。元通り。

 ステータスを見るとMPはほんのちょこっとだけ減っている。うん、3ぐらい。誤差もいいところだ。

 そこで私は、ステータス画面に変な見出しが増えていることに気づいた。


「魔法……」


 画面は開くと現状とか、精霊の言葉や行動とかを表示するお知らせ欄が出るんだけど、端に自分のステータスの見出しがあって、そこを押すとあのお化けみたいなMPを再確認できる。

 チャンネルGは、右上にぽつんとついているのでまたちょっと別みたいだけど。


 とにかく『魔法』という見出しが増えた。

 開くと覚えたらしい魔法の名前が羅列されていて、魔法名の横に押せといわんばかりの☆マークボタンがついていた。


「…………」


 私はもう一度、別な葉っぱをちぎった。右手で切り口を合わせた上で、左手でボタンをぽちっとな。

 それでキラキラとした儚い光のエフェクトが葉の上で散って、葉は元通りに戻っていた。

 減ったMPはやっぱり3。


「呪文、いらなかった……」


 これは暗記がいらないので楽かもしれない。

 もしかして魔女のスキルで魔法を使えるようになっているからだろうか。普通だったらありえないというか、普通の人はステータス画面なんてないし。


「あ、でもこれじゃマズイんだ」


 魔法を使う時に呪文を言わないと、私の魔法がおかしいことが一発でバレるのではないか。

 あの高レベルのはずの団長様も、治癒関係においてはレベルが高いはずのオルヴェ先生もみんな呪文を唱えていたし。


「やっぱり暗記かな……」


 普通は練習のために繰り返しながら覚えるんだろうな。そう想像していたら、私はふと魔法名に触れて別窓が開いた。

 そこには呪文が表示されていた。


「暗記も必要なかった……」


 これは楽だと喜ぶべきなのだろうか。むしろこの、ゲームをするよりも至れり尽くせりな状況に、私はうそ寒いものを感じた。

 魔法、本読めばたぶん制覇できるんだろうなとか。

 覚えなくても使えるようにしてあげるよ! みたいな対応をしてもらえるということは、私、ものすごくとんでもないことをしなくちゃいけなくなるんじゃないだろうか、とか。


 例えば自殺覚悟で、よくわからない竜巻に飛び込む以上のこととか……。


 身震いした上、なんだか手が震える。

 私は落ち着くためにお茶をいれることにした。

 こんな時にはハチミツを入れた紅茶だ。いつもより少し甘くして、温かい紅茶を少しずつ口に入れる。

 紅茶の効果のおかげで、すっと気持ちが落ち着いた。手の震えも止まる。


「とりあえず、魔法は何があるのか覚えてるから、本だけ買ってしまえば使うのは問題ないわけで」


 ゲームと同じ使い方でいいはずだ。


「問題は、一気に使えることを知られることかな」


 誰かに魔法の練習の仕方を教えてもらおう。こっそり……オルヴェ先生かフレイさんに、頼むか。そうしてフレイさんに魔法の練習風景を一度見てもらって、それで普通に習得したふりをしたら……ばれない?

 思いつかないのでこの方針で進めることにした。

 さっそく、夕食の時間にオルヴェ先生に尋ねてみる。


「あのオルヴェ先生、魔法についてお聞きしたいんですけれど」


「なんだ? それより残すならくれ」


 今日のメニューは、黒パンにお肉の薄切りと玉ねぎのスライスをはさんだものに、こってりとしたスープだ。このサンドイッチが思った以上にお腹に重たいので、すぐに満腹になってしまう。

 一人三個ついていたのだけど、とても食べきれなくて手をつけずにいたら、オルヴェ先生が正面からさらって行った。良かった、これで残さずに済む。


「ぜひお召し上がりください。それで魔法の習得って、本を読んだ後で練習した方がいいんですよね?」


「ん? そういえばフレイから魔法の書を買ったとは聞いてたが。何か使えるようになったのか。茶を作る方向に特化したスキルだと思っていたが、魔法も使えるとか、けっこう珍しいなお前のは」


 ぎくっ……。

 でもバレないように残ったパンを口に押しこんで、食べたふりでごまかす。


「そ、そうですね。あはは」


「まぁ無いわけじゃないが。そうだなぁ、使えるものがあるなら練習した方がいいだろ。魔力の力加減で魔法が発動したりしなかったりするからな」


「…………」


 操作はボタンひとつだし、そんなこと考えもしなかったとか言えない。呪文を唱えた時もそうだったから、やっぱりこれって例外なんだろう。


「フレイが心配するから、一応練習は誰かに一度見てもらうといいぞ」


「はい」


 フレイさんには本当に心労をかけてしまったからなぁ。

 私は今日のところは大人しくしておいて、明日フレイさんに一度魔法の練習の見守りをお願いすることにした。

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