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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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喫茶店について夢が広がります

「あの、それは城の中で喫茶店を経営していいってこと……ですよね?」


 ゲーム同様、この世界には喫茶店がある。

 前世で調べたことがあるけれど、中世時代のヨーロッパなんかには喫茶店なんてものはなかったらしい。


 そこから考えると、この世界は自然に発展したとしたら進歩的という感じがする。

 たぶんそれもこれも、魔法があって討伐者という魔物を倒して歩く職業に就く人が少なからずいるせいだろうけれど。


 とにもかくにも喫茶店だ。

 私の質問に、イーヴァルさんがうなずいた。


「あなたの状態が状態なので、最初は騎士団の人間だけにしたいと思います。一月ぐらいの間それで問題がなければ、次第に来る人数を増やして行けば良いと思っています」


 それと、と一度咳払いをして続ける。


「万が一のことを考えて、オルヴェ先生の側から離したくはないのですが、あの診療所がある棟には、かまどを備えた上で一定数以上の人間を出入りさせられる場所がありません。作らなければならないにしても、少々問題があるのでやりにくい」


 それは私も思っていたことなので、小さくうなずく。

 一階は洗濯場なのですよ。

 それ自体は、患者の面倒を先生が診る時に利点がいくつもあるのでいいと思う。


 シーツや包帯なんかが汚れたらすぐ洗い場に持っていけるし、昼間に手を借りたいものがあった時に、ヘルガさん達が協力してくれる。

 また外部の人が怪我をして治療のために収容した時も、それが女性だった場合はすぐに洗濯場のおばさん達に手伝いを頼めるのでとてもいいのだ。


 しかし喫茶店を開くには、あの小さな台所では手狭だし、隣は洗濯場なのでそこを狭めるわけにもいかない。

 騎士団に所属する何十人という人達が、お洗濯の回転数が下がって泣くだろう。

 というわけで別な場所に、というのは納得できる。


「場所の候補はどこですか?」


「ここの棟です。お茶と軽い調理ぐらいなら、かまどや給水の魔法道具を設置をするだけで十分に対応できる部屋があるので。隣の部屋を開ければ、出入りする人間を十数人は座らせられます」


「ここ……」


 ちょっとびっくりしてしまった。


 団長様の執務室や私室があるこの棟は、他にも会議室があったりする。

 主に寝泊まりしているのは騎士団の幹部(副団長さんは居心地が良くなってしまったという理由で、移動した先のまま動かないらしい)だ。

 敷居が高い場所だと思っていたけれど、確かに私の管理のためにも都合がいい。


 同時にふわわんと私は想像する。

 会議室にお茶を五杯とかオーダーを受けたりするんだろうな。団長様のところにお客さんが来た時にも、お茶を三つ運んでくださいとかイーヴァルさんが頼みに来るかもしれない。ちょっと大きなビル内の他社に出前に行くみたいな感じになるかも?

 あ、なんかそういうのいいなぁ。


「ユラ?」


「ユラさん?」


 お盆に乗せて行くと数が運べないから、ワゴンがほしいなとか。いろいろ空想しすぎて、少々ぼんやりしていたらしい。

 団長様とフレイさんに呼びかけられて、ハッと我に返った。


「あ、すみません。素敵なお話で、ちょっと妄想してました」


 素直にそう言えば、その場にいた全員がほっとしたように息を吐く。


「問題がないのならいい。騎士団の者達にも、君に迷惑をかけないように通達を改めてしておく。物珍しがって、邪魔をするかもしれないからな。細かな物品についてはイーヴァルと相談してもらいたい。後は基本的に、フレイに手が空いた時に様子を確認させる。以上で問題はないか?」


「はいありがとうございます!」


 そう言って頭を下げた後、私はフレイさん、イーヴァルさんと一緒に部屋を出た。


「まずは予定している場所を案内します」


 イーヴァルさんはこういう仕事が合っているのだろう。ものすごくてきぱきと案内してくれる。

 それは一階の入り口から少し離れた部屋だった。

 隣り合わせた2部屋が、中でも扉で繋がっている。左側は控室として使っていた場所で、右は客を案内する居室の一つとして使っていたらしい。


「この控室だった方に、かまどなどを設置します。配置場所の希望はありますか?」


「あ、そうしたらここに二つお願いします。先日のものみたいに、大量にお湯が必要になった時のために一個では心もとないので。隣に流し台や作業台とかあるととても嬉しいですね」


 私は窓際へ駆け寄って、大きさはこれぐらいだろうというのをジェスチャーでイーヴァルさんに伝える。

 するとイーヴァルさんは、持っていた紙にさらさらと簡単な図を書いていく。しかもわかりやすい。


「あ、これでお願いします。すごく上手でわかりやすいです」


 そう言ったら、イーヴァルさんがちょっと戸惑った表情をした後で、ついっと視線をそらす。


「褒めても備品代はそんなに上げませんからね」


 たぶん憎まれ口なんだけど、そんなにってことは少し上げてもらえるってことかな?

 そう考えながら、私は必要なカップなんかの食器の数。ポットの数、椅子や机の数や配置について話していく。

 その全てについて、イーヴァルさんは結局「多すぎます」とか「予算が」とは言わなかった。

 この人はやっぱりツンデレかもしれない……。

 むしろおおよそ今思いつくことを言った後、イーヴァルさんは尋ねて来た。


「団長の指示ですので、後で足りないものがあったその都度要望を出してください」



「はいありがとうございます。思いついたらお知らせします」


 それを少し離れて見ていたフレイさんが、くっくっくと小さく笑いながら肩をふるわせていた。

 そんなフレイさんを嫌そうに見ながら、イーヴァルさんが言った。


「フレイ、あなたはユラの買い物の見守りもするように。先日怪し気な服装で出かけて騎士達を困惑させたあげく、からまれてきたそうなので」


「わかってるよイーヴァル。目を離すのが怖いのは、もうこの間で思い知ったから」


 二人の会話を聞いて、ちょっと肩身が狭い私だ。

 なにせフレイさんを驚かせたばかりなのだから。

 それでも、部屋に戻って喫茶店計画について書き出していると、そんなことはすぐ頭からすっ飛んでしまった。


 あ、そうだ。ティーコゼーなんかも縫って作ろうかな。

 テーブルクロスはさすがに作っていると時間がかかりすぎるので買うとして。ああ、テーブルに花も飾りたい。敷地内に花咲いてるところあったよね?


 あと茶葉を買いにいくついでに、一つ欲しいものが頭の中に浮かんでいた。

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