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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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新しい指令

ここから第二部スタートになります!

「…………」


 何度画面を見なおしても、ステータスに変化はない。

 HPはわりとそのまま。

 物理的な攻撃力とか速さに変化はほとんどないけど、魔法!

 特にMP、これ何!?


「これ何!?」


 脳内と自分の口とで二度言ってしまう。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……じゅうまん」


 MP10万。なんだこれ。

 でも原因はわかっている。紅茶師以外のスキル。こいつのせいだ。


「魔女……」


 目をこすっても、画面を出し直しても消えないその文字。


「うわあああああああ……」


 思わず顔を覆った。

 そんなわけがないと思った。ちょっと変ぐらいのステータスだったし、それは実験のせいって思える程度で。


「精霊とちょっと混ざっただけだと思ったのにぃぃぃ」


 これ、もう確定したみたいなものじゃない?

 ゲームのシグル騎士団のシナリオには、魔女が色濃く関わる。

 魔女を作り出そうとする集団を襲撃。たぶんこれが、私を助けたイベント。


 その後、唐突に騎士団領近くに竜が現れる。プレイヤーは竜を倒すために、ひっそりとダンジョンを通って竜が留まる山の上に行き、戦うことになる。

 この時騎士団長様が竜から魔女の存在について示唆される。

 そうして魔女の痕跡を探した時に、隣国の陰謀ではないかという話になる。隣国が小さな国を滅ぼし、その国の魔法使い達を利用して魔女を作り出させているのだと。

 こうすれば隣国がしたことにはならず。魔女にこの国を滅ぼさせれば、軍を出すことなく征圧できる。


 シグル騎士団とプレイヤーは、滅ぼされた国から逃げ出した人を探し出し、

 魔女を倒すために隣国に潜入し、ここで城というダンジョンに入っての戦闘になる。

 のだけど。


「……そっか。このままなら、竜って出ないでしょ」


 魔女が私だとしたら、竜は呼ばないし呼び方がわからないもの。

 隣国の手は離れてしまっているし、魔女じゃなくて紅茶を作って暮らせればいい。


「てことは、私ここで平和に暮らしていればいいんじゃない?」


 やったーと言いながら、心に引っかかっているのはあの時精霊に言われた言葉だ。


《まだ話せるのは僕だけだよ。でも君はもっと大きな力を手に入れれば、全ての精霊と話せるだろう。そしてどうか、僕達を救って……》


「…………」


 精霊は、何か問題を抱えているんだろう。

 救ってと言うのだから、何かはしなくてはならない。


「でもその方法が、魔女らしい力でってわけじゃなくてもいいんだよね?」


 前回も結局はお茶を作った上で、選択肢にイエスと答えただけだ。

 一応それで解決した。

 なら次もあくまでお茶でなんとかするのだ。


「とにかく紅茶師のレベル上げよう……」


 でもほんの少しだけ、魔女ってどんな魔法が使えるのかは試したい。というか、MPこれだけあるなら、普通の魔法も使えるよね? そこはこっそりひっそりやろう。


 決意を固めて画面を消す。

 今日からまたお仕事だ。

 オルヴェ先生と朝食を食べた後は、まず先生のお手伝いをして過ごそう。


 そう思っていたら、お昼近くになってフレイさんが呼びに来た。


「団長から……というか、少し取り決めたことがあるんで、話があるんだ。団長の執務室まで来てくれるかい?」


 そう言ったフレイさんは、先生の薬草を棚にしまった私の肩に手を置く。

 あれから、フレイさんはさりげなく私に接触することが増えた。

 理由はわかってるので、申し訳ない。でもああするしかなかったと言うか……。


 火事の現場から飼っていた鶏を抱えて遠ざかったら、突然暴れ出して手を逃れ、燃え盛る炎の中に飛び込んで行ったとしよう。

 焼き鳥になるのを想像して、絶望するに決まってる。

 ……結果、軽くトラウマになってしまったようで。


 不安にさせても仕方ない。後からかなり平謝りしたけれど。土下座も披露しました。

 そんなことでトラウマが完全に消えるわけもなく、フレイさんはちょくちょく私の存在を確認するようになった。

 その度にごめんなさいと思う。


 オルヴェ先生も微妙そうな顔で、フレイさんの手をちらりと見た。

 現場で目撃していなかった先生には、悪い判断ではないとは言われたんだよね。

 画面に表示された文字のことは話せないけど、フレイさんの飛びトカゲも怪我をして、全員落下して死亡する可能性もあったからと話した。

 誰かを生かすためなら、そういう判断もありだろうと認めてくれた。


 それを聞いて、たとえあの竜巻をどうにかできなくても、自分の行動も役に立ったのだと安心できたものだった。

 そのオルヴェ先生が言う。


「とりあえず行ってこいユラ。昨日もお前のことで会議をしていたんだ。午前中に必要なことを詰めた上でお前を呼んだんだろうから、聞いてこい」


「はい……?」


 何を決めたんだろう。まさか私の外出禁止令とか?

 わからないながらも、フレイさんについていく。

 以前よりも慣れてきて、執務室までの道は怖くない。


「おお元気になったんだな」とか、声をかけてくれる人もいる。

 ぺこぺこ頭を下げながら団長様の執務室に到着すると、中には数人の人がいた。


 机の前に座って、腕組みをしている団長様。

 そこから少し離れた壁際にハーラル副団長さん。

 団長様のすぐ横に立って控えるイーヴァルさんだ。


「ユラ、体調はどうだ?」


 入ってすぐ団長様にそう尋ねられた。

 この方にもずいぶん心配されて、昨日も一昨日もお見舞いに来てもらってしまった。

 何よりあの直後、抱きしめられた記憶がまだ鮮明で、私は恥ずかしさについうつむいてしまいそうになるのをこらえた。


「はい、問題ありません」


「では昨日、君に関して騎士団として決定したことを伝える」


 一体何だろう。

 緊張してつい、横に立つフレイさんを見上げると、心配するなというように微笑まれた。え、悪いことじゃないの?


「ユラ・セーヴェル。君に城の一画を貸し与えることにする」


「……??」


 一体どうしてと思う私に、イーヴァルさんが後を引き取るように言った。


「あんなことがあった後ですからね。今だにあの竜巻がなぜ発生したのかもわからず、あなたが飛び込んだあとで鎮静化した理由もわかりません」


 そこで、とイーヴァルさんは人差し指を振った。


「しばらくあなたの体調などを様子見するため、なるべく城の中にいてもらうのと、それでは討伐者として雇っているのに活動しないことになってしまうので、別な活動を行ってもらおうというのが、この決定の目的です」


「ということは?」


「あなたには、城の中で得意の茶を提供する仕事をお願いしたいと思います」


 言われて数秒、意味が理解できなかった。

 けれどハッと気づく。

 もしかして喫茶店をやれってことかな?

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