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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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混乱の精霊を元に戻す作戦

 ちょっとトラブルはあったけど、無事に茶葉も必要な材料も確保した。

 なのでその日のうちに、私は明日には作れることを団長様に連絡してもらい、明日の午後に作戦を決行することになった。


 作戦はそれほど大がかりで大変なものではない。

 団長様達と一緒に、竜や飛びトカゲで森へ移動。

 ゴブリンの集落周辺で精霊を見つけ(これは団長様がやる)、精霊をなるべく集め(これも団長様がやる)、周辺に魔法でお茶を飛散させて精霊達を元に戻して終わりだ。


 私はずっと空の上にいて、状況を見守ることになるので安全。

 ただし団長様が色々と術を使う関係で、今回ばかりは飛びトカゲに同乗することになる。


 飛びトカゲには慣れないと危ないということで、私はこの日、荒くれ者に絡まれた後で、フレイさんによって飛行訓練をさせられた。

 ……正直、飛行機に乗った記憶とかジェットコースターの記憶とかなかったらヤバかった。上昇する時も、飛んでいる間もこわい。


 当然落ちるとまずいので、フレイさんにしっかりと抱えられての飛行。

 でも恥ずかしいとか思う余裕はなかった。手を離されたら物理的に死ぬ。命綱は大事だとばかりに、しっかりとフレイさんの腕にしがみついた。


「可愛いなぁユラさんは」


 なんて言って笑うけれど、私の顔は今世で最大にひきつっているはず。百年の恋でも一瞬で覚める形相にそんなお世辞を言うフレイさんの方がおかしいのだ。


 しかし飛びトカゲを操縦するのは私ではない。

 飛行の感覚に慣れたら、すぐに終了。

 この日は早く休むように言われて、へろへろの状態の私は早々に就寝。

 おかげで翌日、普通に起床することができた。


「よし、作ろう」


 昨日のうちに、一階には小さな樽を運んでもらっていた。私が抱えられるぎりぎりの大きさだ。

 そして城の厨房から借りた大きな鍋が三つ。

 これで湯を沸かして、そこに茶葉や果物を投入してお茶を作成、樽に移すという行程を重ねる。


 お茶は冷めても半日ぐらいは平気なのでゆっくり作れるけれど、問題は鍋が重いことだ。

 五回ほど樽に移して、開いたお鍋にお水を汲んでいるとさすがに腕が痛くなってきた。

 それでもあと少しと思ったところで、様子を見に来たオルヴェ先生が手伝ってくれる。


「重けりゃ手伝いを頼んだって良かったんだぞ、ユラ」


「お忙しいかと思ってしまって……」


「それでも一度は声をかけてみろ。ダメだと言われると人間落ち込むから避けたいのはわかるが、駄目元でもやった方がお前が楽になる確率が上がるんだからな」


「はい、先生」


 その通りだと思うし、前世ではそうできていたと思う。

 なのに急に生来の引っ込み思案が顔を出してしまったみたいだ。無意識で先生に助けを求めるのを忘れてしまっていた。

 治ったと思ったけれど、やっぱり私はこの世界で育ったユラなのだ。


 そうして樽の中にお茶を詰め、先生の手を借りてきっちり栓をする。

 お昼ご飯を食べた後は、フレイさんが迎えに来てくれた。


「さぁ、行こうか」


「はい」


 フレイさんの部下に樽を運んでもらい、外へ。

 しっかりと寒さ対策をした私は、既に準備されていた飛びトカゲに乗せてもらう。今回乗るのは、フレイさんの飛びトカゲだ。


 樽はフレイさんの部下の飛びトカゲにくくりつけられた。

 樽の中身を飛散させるのは、その部下がするらしい。


「水を操るのが上手いのと、風を操る魔法が使える人間をそろえた上で、一度予行演習もしているから大丈夫だよ」


 フレイさんがそう説明してくれた。

 そうして団長様がいつものように竜に乗り、全員で空へ。

 まだお昼なのに、昨日より風が冷たい。

 首をすくめるようにして耐えたけれど、それも一瞬のことだ。馬でも時間がかかる森の警戒線にすぐ到着してしまう。


 眼下には、木と藁を積み上げたような家がいくつか見える。たぶんあれがゴブリンの集落だ。

 周辺にうぞうぞと、大きな牛っぽい魔物がいるのもわかる。


 団長様が手を上げて、始めるという合図を送って来る。地上に精霊がいるのを確かめたのだろう。

 ここからどうやって精霊を集めるのかな。

 じっと見ていると、団長様は剣を引き抜いた。その剣が薄青く光る。

 光はふわっと私をも越えて周辺に広がり、そのまま雪のように地上へ落ちて行った。


 あれで本当に精霊が集まるのだろうか。

 私は画面を呼び出して、精霊がいないか適当に眼下に見える風景を手で触れる仕草をしてみた。

 たいてい魔物にしか当たらないけれど。魔物の周辺ををしつこく押していたら、運よく精霊が捕まった。


《混乱の精霊は、王の命令にひきつけられている》


 王の命令? どういうことだろう。でもひきつけられているってことは、精霊は集まっているってことだよね?

 首をかしげているうちに、団長様が紅茶を撒く指示をしたようだ。


 フレイさんの部下が樽を開けて中のお茶を空中に浮かべる。

 それをもう一人の部下が風の魔法でしぶきのようにして広げた。

 透明なタンクに入った水を、見えないスプリンクラーで拡散しているような感じだ。


「すごい」


 お茶の雨を浴びたら、すぐに精霊達も元に戻るだろう。

 実際、私の画面に表示されていた精霊も、導きの樹の精霊という表示になったのだけど。


「ユラさん、移動する!」


「え!?」


 騎士達は急に動き出した。

 飛びトカゲに指示して、その場を離れようとする。

 それもそのはず。気づけば集落の上に、大きな竜巻が発生しはじめていた。

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