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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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※ユラ係の心の内

※フレイの視点です

※フレイの視点です


 今日は城下町の周辺を巡回する番だった。

 今朝がた、ユラが精霊を元に戻すお茶を作ったと聞いたフレイは、これが終わったらユラのところに押しかけて、問題のお茶を見せてもらおうと思っていた。


 けれどその前に、ユラを拾うことになる。

 それは町中でのちょっとした騒ぎだった。


 誰かがぶつかっただの、そういうことはよくある。

 城下の町はいつだってシグル騎士団によって守られているせいなのか、暮らしている人々はそれほど血の気が多い気質ではなく、穏やかにことを収めようとする者が多い。


 たぶん、ユラにとってはそれがあだになったのだろう。

 争いごとが苦手だから、できるだけ巻き込まれたくない。

 自分が動かなくても、自警団に参加している人物が来るまで静観する。

 荒くれ者に目を付けられて、後で店を壊されたりしないように、弱い者に泥をかぶってもらうことを選択する。

 ただでさえそんな選択をしがちなのに、ユラはその時不審な格好をしていたのだ。


 最初はただの騒ぎだと思って、それならその場を収めればいいかと思って向かったフレイは、見覚えのある亜麻色の髪と背格好を見て驚いた。

 ユラ、どうしてそんなおかしなかっこうをしてるんだ!?


 叫びたくなるほど、目立っていた。

 顔半分も隠しているなんて、ものすごく後ろ暗い人みたいで怪しい。だからなおさら、周囲は状況を見ているだけになったんだろうということはわかる。


 ユラが全く泣く様子もないところも、問題だったのかもしれない。

 顔の動きがわからずに目元しか見えないので、じっと冷静に相対している荒くれ者を観察しているように見えてしまっているのだ。


 これは良くないと思いながら、フレイは急いで割って入った。

 案の定、ユラは表情がわかりにくいだけで十分怯えていて、足が震えてしまっている。

 抱えて馬に乗せてやったら、目に見えてほっとしていた。


 いやしかし、なんでそんな不審者さながらのかっこうをしているんだ?

 尋ねてみると、オルヴェ先生がユラを心配した結果、怪しい恰好をしていれば人が近づかないだろうからと、わざわざ顔を隠したりしたらしい。

 オルヴェ先生もこのまま行かせることにしたとか……。

 逆効果すぎると思ったが、それ以上は言わなかった。


 ユラは相当怯えてしまったようで、城へ戻る道すがらも度々放心しているようだったからだ。

 城の、オルヴェ先生の診察室がある棟の前に到着すると、緊張にこわばっていたユラの背中から力が抜けるのがわかる。


「もう歩けそうかい?」


 尋ねると、ユラはうなずいた。


「もう足が震えてないので、大丈夫だと思います」


 答えたユラだったが、自分で降りようとするのを押し留めてフレイが先に下馬し、彼女を抱えて下ろすことにする。

 ぼんやりしていたユラは、その時になってようやく我に返ったように焦った表情になった。


 そんな顔をされると、もう少しかまいたくなる。

 おそらくは、似たような表情をしたことがあったからかもしれない。

 嫌な記憶が繋がって、思い出したくない過去が蘇ってしまった時に、亡霊に会ったような顔をするものだ。


「まだショックが遠のいてないんじゃないかい?」


「あ、いえ平気です。それよりお手数をおかけしまして……」


 頭を下げるユラだったが、建物から出て来た人物を見た時、水をかけられたみたいにぴゃっと飛び上がりそうになり、もうそちらから目が離せなくなる。


「フレイか。ユラを送って来たのか?」


 その人物はリュシアン団長だった。

 フレイはちょっと面白いなと思う。

 前からユラは、リュシアン団長になついている節があった。彼女も大人だから、そうはっきりとした態度を見せるのは年上のオルヴェ先生やヘルガ達だけだった。


 団長に対してはちょっと過剰に敬うような態度をしていたけれど、それも団長の顔にひれふすような気持ちでそうなる人はいた。

 でも今は違った。


「はい。ユラが町でからまれていたので、拾って帰って来ました」


 リュシアン団長は、ユラが絡まれたという話に少し驚いて、彼女に心配そうな目をむける。


「怪我は? ユラ」


 尋ねられたユラは、団長の顔をちらっと見てはうつむき、どうしていいのかわからない様子で答える。


「はい、フレイさんに助けていただきました。本当に申し訳なく……」


 発言内容はいつも通りだけれど、明らかに異性として意識している。

 フレイとしては少し面白くはない。新しいペットが他人に懐いたような感じだ。と同時に、何があったのかものすごく興味が湧いた。


「やっぱり一人で行動させるのは良くないかもしれませんね」


 そう言いながら、フレイは自分がさらにユラ係として彼女の側にいる方法を模索することにしたのだった。

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