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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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導きの樹の精霊に関する考察

「これが導きの樹の精霊か」


 ふわふわとした髪の可愛い女の子の精霊に変わった時、団長様もさすがに驚いたように精霊を凝視していた。

 びっくりするよね。たぶん団長様は「争え」っていうのも声で聞こえているはずだから。今は性格が豹変したとしか思えないことしかつぶやいていないし。


《導きの樹の精霊:ほええええー》


 争えだの言ったり、副団長様のハゲの不安をあおっていた精霊と同一のものだったとは思えないだろう。

 やがて精霊も自分が元に戻ったことは認識できてきたようだ。周囲を見回し、私と団長様をじーっと見上げて来る。


《導きの樹の精霊:わたしが見える人が……》


 はっと息を飲んで、精霊はカップから飛んで逃げようとした。


《導きの樹の精霊:ひゃっ!》


 でも団長様の魔法の檻はそのままだったから、出られずにぺちんとぶつかって落ちる。


《導きの樹の精霊:うそ……やだ。ころされる、ころされちゃう》


 そのまま精霊は泣き始めた。


「よっぽど導きの樹の精霊って、虐殺でもされたんでしょうか」


 前回もそうだけど、覚醒するとすぐに泣き出すというのは……そういうことがあったんじゃないだろうか。考えられるのは、精霊融合がらみのことだけど。


「精霊融合で、みんなに使われたのが導きの樹の精霊だとしたら。すごく沢山の精霊が死んでるってことになりますよね……」


 どれくらいの数の人が実験の犠牲になったのかはわからない。

 なんにせよ実験をほどこされた人を巻き込み、もしくは私みたいに存在が消えて魔力だけが残ったりしたんだろう。でも、精霊としては存在できなくなったのだから、それはやっぱり死んだということではないだろうか。

 すると団長様が、私の肩に触れた。


「数はそう多くはないはずだ。少なくとも、お前を助けたあの館で実験されただろう人数は予想がついている」


「もう犠牲者数の予想ができたんですか?」


 館の中にあったものを持ちだしたりして調査していたというのは、私も知っていた。

 あの館での実験だけなら……五人くらいだろうか。私の前に死亡を確認した人が二人いたそうだし。精霊融合も、他所から人を召喚で拉致するのも時間がかかるだろう。そう思っていたのだけど。


「ああ、10人くらいだ」


 あっさりと団長が言った人数が、予想の倍だった。


「多いです団長様……」


 聞いた私が涙目になってしまった。10人もあそこで死んでたんだ。前世の続きみたいな感覚で目覚めたあの場所を思い出して、身震いしてしまう。


「……すまない」


「いえ、私が聞いてしまったんですし」


 教えてほしいというニュアンスで言葉を口にしたのは自分なので、自業自得なのだけど。団長様との感覚の違いが良く分かった。

 それにしても私、よく10人も犠牲になった中で生き残れたな。本当に奇跡だ。一体何が命運を分けたのかもわからないけど。


「ということは精霊も10体以上は犠牲になったんですね。この数は多いんですか?」


 気を取り直して質問すると、団長様はうなずく。


「導きの樹そのものが、今は多くはないからな。木一本に対して一体の精霊だと考えれば、わずかに残っていた10本分の精霊が命を落とした計算になるだろう。そして精霊が息絶えた木は枯れる」


「え……」


 ということは、10本の木が枯れてしまったわけだ。

 私は、前回この精霊を覚醒させた時に、泣きながら木の枝だけでもと願った理由をようやく知った。

 精霊が死んでしまうから。もしくは木が少なくなって絶えてしまうかもしれないから、そういう形で苗を育てて、新たな精霊を産み出して欲しいということじゃないかな。


 団長様はそれもあの時に、想像がついていたんだろうか。

 思わずじっと団長様を見上げてしまう。突き刺さる私の視線に、団長様もすぐ気づいて見下ろしてきた。


「お前が言いたいことはわかる、ユラ」


 なんと。団長様は私の心の中をお見通しらしい。


「昨日お前の話を聞いた時に、ある程度の予想はついた。そして精霊融合に使われたことや、混乱の精霊の出没地点を考え合わせると、あの館から近い場所に導きの樹の自生地があるはずだ」


「近くにですか?」


「精霊は狂って変化したとしても、普通は分身である植物などの側からあまり離れない。数キロは移動するだろうが、おそらくゴブリンの集落と、お前を助けたあの館の中間点あたりにはあるはずだ」


 なるほど。だから話をした時に、団長様は「探しておく」と答えてくれたのだろう。探すべき場所のアテがあったからのようだ。

 でも精霊の変化も魔法的な作用みたいなんだけど……。


「あの……」


「何か気になったことでもあったか?」


 言い出しかけたところで、迷う。

 ステータス画面なんてことは説明しにくい。だって団長様だってそんなもの使っていないし、魔法が使えるというフレイさんだってそんなものを利用している仕草なんてしていなかった。


 でもそれが説明できないと、お茶の効果についてとか説明できないんじゃないだろうか。だって精霊は、みんな子供みたいな話し方をする。「状態変化を解除する」なんて固い言葉を使わないから、ちょっと変じゃない?

 いや、でもそれで押し切るか。

 返答を待つ団長様の視線に負けて、私は今の案で行くことにした。


「団長様。このお茶を作った時に精霊がですね。元に戻せるお茶なのは間違いないと言っていたんですけれど、効果が……状態変化を解除するものだと言っていたんです」


「状態変化を解除?」


 聞いた団長様は、案の定不審そうな表情をした。

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