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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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からかわれるのは苦手です

 私は男性とはあまり話さないようにして、生きて来た。

 きっかけは、前世を思い出して少しふてぶてしくなった今の私が思い出しても、渋い顔になるようなことだ。


 前世を思い出すまでは、幼少期から私はものすごく引っ込み思案だった。

 理由は自分でもわからない。

 両親が無くなった頃にはそうだったけど、それ以前の記憶が薄い。

 なので自分でも、両親の死の前後で何かあって人を怖がるようになったんだろうかと思っている。


 そんな子供だから、当然遊ぶ友達も少ない。

 おっとりとした子であっても、暗くて目を合わせると怯える私を持て余してしまう。子供にそれ以上の配慮をしてくれというのも酷だろうから、それは仕方ない。

 独りぼっちになりがちな私だったけれど、赤子の頃から知ってる子は、まだ私と遊んでくれていた。


 その中に男の子が二人いた。

 根暗な私にイライラした子達が、他の人も私を嫌がるように仕向けたかったらしい。私の知らないところで、私が男の子二人を好きらしいと根も葉もない噂を流して、その男の子達まで嫌われるようにしたのだ。


 二人は、私よりも先に噂を知った。

 一人は急に別な子と遊ぶようになって、私のことを避けるようになった。

 自分までハブられるのが怖かったんだろう。人口が少ない町の子供の数なんて知れていたし、そこで嫌われたらと思えば保身に走るのも今の私なら理解できる。


 ……転生した自分という視点を得たから、他人事みたいに考えられるせいだと思うけど。


 その頃の私は、嫌われたと思って悲しかった。

 さらに私のとのことで嫌味を言われた女の子の友達も、離れていってしまった。

 でも二軒隣の家の男の子だけは、離れなかった。

 私の両親と彼の両親がとても仲良しだったらしいので、そのせいかもしれない。


 けれどとうとう、私がひとりぼっちにならないことにイラついた子が、沢山の子供達の前で「お前はユラが好きなんだろ! 陰気なやつが好きだなんて変な奴!」と言った。

 一人が口火を切ると、他の完全に同調している子も口ぐちに言う。


「こんな暗い子といたらうつっちゃう」


「ユラはちょっとやさしくしたら、すぐ男に色目をつかうって聞いた」


 色目うんぬんは、きっと大人たちの言葉を聞きかじって覚えたものなんだろうと、今の私ならわかる。

 でもその時はものすごくショックだった。

 同時に思ったのは、その男の子に迷惑をかけてしまった、ということだった。


 自分がどうしても人になじめないから、それを助けてくれたせいで、こんなひどいことを言われる状態にさせてしまった。

 自分はひとりになるべきだと思い込んだ私は「ごめんなさい」と男の子に言って、その場から逃げたんだ。


 男の子は、後で私に会いにきてくれた。

 その時に説明された。読み書きを教えてくれていた教会の修道女がやってきて、みんなを叱ってくれて。全員にもうしないと約束させたとか、そういうことを。


 でも私に関わり続けたら、また何かを言われるかもしれない。もっとひどくいじめられる可能性だってあった。

 だから私は会わなかったし、お祖母ちゃんにもそう言ってくれるようにお願いした。

 それ以来、私のことを好きだと思ってくれる人はいるわけがない、むしろいてはいけないんだと思っていた。それぐらい私は、人に嫌われる存在なんだと。


 お祖母ちゃんは「お嫁になんて行かずに、ずっとお祖母ちゃんの側にいるからね」と言ったら「そうしてくれるかい? 嬉しいよ」と頭を撫でてくれて……。


 

 夕方、ヘルガさん達が帰った後の台所がある部屋で深呼吸しながら、私はそんなことを思い出していた。

 団長様との件と、フレイさんにからかわれたことで、昔の自分だったら……と思ってしまったからだ。


「泣いて逃げ出していただろうな」


 今の私は笑って流せるけど。ただでさえ対人恐怖症の気があったのに、トラウマまで重なっていたら無理だろう。

 かといって、今の自分も恋愛に上手く対応できる方ではない。


「前世でも、そんなモテる方じゃなかったし……」


 ごく普通だった前世の自分。

 高校生の時は片想い。大学生になってからは、からかわれた時にやんわりとお断りすることばかり上手くなって。それは社会人になっても変わらなかった。


 今回にしたって、どちらからも真剣に告白されたわけじゃないし。そうしなくちゃいけない理由があったり、からかったりするために発生したことで、深刻に考えちゃいけないと思う。

 立て続けにありえないことが起こったから、動揺しているだけで。


「そう、マトモに考えちゃだめ……」


 前世の経験からいっても、フレイさんのあの言葉は、副団長さんが様変わりした理由を知りたくてのことだと思う。相手が女の子だったからああ言った、程度の気持ちだと思う。

 団長様がフレイさんにも教えなかったのは、たぶんハーラル副団長さんに頼まれたからだと思うのだけど。

 一応私は、解決したら言ってもいいという約束をしているけれど、団長様が口に出さないことを私がバラすのは好ましくないだろう。


 そもそもフレイさんの言葉のせいで、頭がぐるんぐるんした状態での買い物になってしまって、結構気にせずに手に取りすぎた……。買い物の時、私を混乱させるのだめ、絶対。ちょっとお金を使いすぎましたよ!

 騎士団から給料が出る話になってなかったら、今後がちょっと不安になるところだった。

 ひどいやフレイさん……。


「とりあえず、必要なものはそろえられたから。よしとしよう」


 買い物から帰った後には、副団長さん自らがミリオルトの実を持ってきてくれた。

 好々爺といった柔らかい表情をするようになった副団長さんは、私に改めてお礼を言ってくれたのだった。


 ミリオルトの実は、本当にブドウみたいだった。山ブドウに近い感じ?

 カモミールは乾燥したものを購入できた。今後のことも考えて沢山。缶に入れて保存する。

 そして導きの樹の枝。

 置いているだけで、ほのかに漂う百合みたいな香りがすごい。


「百合の香りのお茶か……なかなか高級そうというか」


 一緒に柑橘系の香りがしたら、きっととても美味しそうになるんじゃないだろうか。

 そんな想像をしながら、私は新しい紅茶づくりを始めた。

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